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ホンダ、全事業増収で売上高3兆5838億円、純利益2225億円を計上した2021年度第1四半期決算説明会
2021年8月4日 21:00
- 2021年8月4日 開催
本田技研工業は8月4日、2021年度の第1四半期(2021年4月1日~6月30日)の決算説明会をYouTube LIVEを使ってオンライン配信した。
第1四半期の連結売上収益は3兆5838億円(前年同期比1兆4600億円増)、営業利益は2432億円(同3569億円増)、税引前利益は3113億円(同3847億円増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は2225億円(同3033億円増)となった。また、グループ販売台数は、4輪車が99万8000台(同26.0%増)、2輪車が387万9000台(同109.1%増)、ライフクリエーション事業が170万8000台(同57.7%増)の結果となっている。
説明会では第1四半期の決算について、本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 倉石誠司氏が説明。
倉石氏は増収増益となった今期の結果について、半導体の供給不足や原材料価格高騰などの影響があったものの、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前年同期に対して販売台数が増加したことに加え、かねてから取り組んできた既存事業の盤石化の効果が発揮されたことを要因として紹介。また、親会社の所有者に帰属する四半期利益については、持分法による投資利益が増加したことなどから3033億円増益の2225億円になったと説明した。
具体的な内容の解説では、グループ販売台数は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年同期から需要が回復したことで、すべての事業で販売台数が前年同期を上まわる結果で、とくに2輪車は前年度から倍増以上となる109.1%増の387万9000台の販売となっている。
4輪車の販売について、日本市場では半導体不足の影響などを受けつつ、4月に発売した新型「ヴェゼル」の投入効果が販売を牽引して前年同期から4000台増の13万3000台を販売。また、国内市場では軽自動車の「Nシリーズ」が国内累計販売台数で300万台を達成したことも紹介している。今後については新型コロナウイルスの影響が不透明であると分析しつつ、新型ヴェゼルに加え、今秋発売予定の新型「シビック」の投入効果で販売台数の最大化を目指すとの意気込みを述べた。
米国市場は新型コロナウイルスのワクチン接種が拡大したこと、政府による経済刺激策が効果を発揮していることなどによって全体需要が大きく回復。ホンダではライトトラックモデルが販売を牽引して、3か月連続で単月の販売記録を更新しているとアピール。また、6月に発売した新型シビックも好評を持って受け入れられ、販売計画を上まわる勢いとなっているという。しかし、今後も半導体不足の影響が続き、ホンダでは半導体供給の不足による影響の最小化を目指して生産を挽回していく計画だとした。
中国は政府による経済刺激策によって需要が回復しているものの、半導体不足などの影響で販売台数が前年同期を下まわる状況。ホンダでも半導体不足の影響を受けつつ、コンパクトSUVの「XR-V」などが販売増。通期見通しでは需要が堅調に推移しつつ、半導体不足の影響が残っていくと分析。ホンダでは4月の上海モーターショーで発表した「BREEZE PHEV」の市場投入を含めた電動車ラインアップ拡充、新型車投入などの施策で販売台数を拡大していく。
2輪車の販売について、グローバルの全体需要は新型コロナウイルスの影響での落ち込みから回復。ホンダでも全市場で販売が前年同期を上まわったが、インドやマレーシアでは新型コロナウイルスの感染再拡大で生産の一時休止という影響を受けている。今後もアジアを中心に新型コロナウイルスが再拡大しており、先行きが不透明となっていることから、インドを中心に販売台数の通期見通しを修正している。
業績見通しは、アジアを中心とした新型コロナウイルスの再拡大や最新の半導体供給計画などを反映して、前回見通しから2輪車、4輪車の販売台数を下方修正。しかし、販売費や一般管理費などの抑制、コストダウンの効果などで販売減の影響をカバーして、営業利益は1200億円増の7800億円に上方修正。これを受け、当期利益も800億円増の6700億円に上方修正している。
このほか同日開催の取締役会で、資本効率の向上や機動的な資本施策の実施などを目的として、1800万株、または総額700億円を上限とした自己株式取得の決議を行なったことも紹介している。
倉石氏の説明に続き、本田技研工業 取締役 執行役専務 竹内弘平氏が決算内容の詳細について解説。
前年同期から3847億円増となった税引前利益の増減要因は、販売台数の増加による「売上変動、構成差等」で大きく増益。さらに「為替影響」「コストダウン効果等」などで増益となったことを主な要因として挙げた。
事業別の売上収益と営業利益では、2輪事業で販売増と構成差に伴う利益増などで806億円の増益、4輪事業でも販売増と構成差に伴う利益増などで706億円の増益、金融サービス事業では中古車価格の上昇などで922億円の増益となった。ライフクリエーション事業は3億円の減益となっており、このうち航空機、航空機エンジンの営業損失は83億円となっている。
通期の販売見通しでは、2輪車はアジア以外の販売増を想定しつつ、アジアにおける新型コロナウイルスの感染拡大の販売減で60万台下方修正、4輪車でも同じく新型コロナウイルスの影響による販売減、半導体の供給計画見直しなどによって15万台下方修正。一方、ライフクリエーション事業では北米や欧州などでの需要増を見込んで40万台上方修正とした。
税引前利益を1300億円上方修正した業績見通しの増減要因としては、販売台数減による「売上変動、構成差等」で減益とする一方、コストダウンのさらなる努力や経費抑制、為替の影響などで増益になると試算している。
質疑応答
記者との質疑応答では半導体不足への対応に対して多くの質問が飛んだが、第1四半期の生産・販売について倉石氏は「1Q(第1四半期)の生産実績では約17~18万台に影響が出ています。これがいつまで続くかですが、われわれは基本的に下期で挽回したいと思っています。今回の通期見通しで15万台の下方修正を行なったのは、2Q(第2四半期)の影響がもう少し早くなくなると思っていたところが、アジアにおける新型コロナウイルスの感染拡大などによって半導体サプライヤーさんでも生産ができなくなり、これが2Q続いてしまったのが原因です。ですので、基本的には下期で挽回できると今のところ考えております」と述べ、通期としては半導体不足による生産影響が出ないと説明した。
また、半導体と部品の不足について、倉石氏は「期初の決算発表時に、上期で10万台規模の影響が発生するものの、基本的には下期に生産キャパシティを見極めながら可能な限り精算を挽回して影響を抑えたいと発表しています。半導体の影響は基本予算には入れず、4輪の販売見通しは500万台としました。この影響をグローバルで最小化するべく努めて、1Q(第1四半期)実績ではわれわれのほぼ想定内になりましたが、そこからルネサスさんの普及が遅れたり、アジアでのロックダウンといった影響が出てきて、最新の事業環境を踏まえて15万台下方修正の485万台に変更しています。業界を取り巻く環境は、コロナの変異株、半導体不足、部品供給など複合的な要因が影響して状況は依然として不透明です。市場動向を注視しながら前年度を超える販売台数を目指していきたいと思っています」。
「部品は安定調達のため、海外を含めた複数の会社、複数の拠点から部品を調達して、適正な在庫を確保することにしております。長期的には部品の共有化、汎用化などを仕様変更や調達先の拡大などと合わせていろいろな対策を検討しております。短期的には、とくにロックダウンの影響は避けられないところで、現状ではアジアでロックダウンが起きて生産ができない拠点も出てきていますが、そうやってアジアで余った半導体を中国や日本に振り分けるなど、グローバルでの在庫管理、調達効率をさらに向上させていく取り組みを進めており、引き続き状況を注視しながらグローバルでの生産調整などで影響を最小限に抑えていきたいということで進めております」と回答した。
第1四半期は米国や中国での販売増に対して日本での販売が伸びていない理由についての質問では、倉石氏は「国内市場も経済活動は回復傾向にあり、需要も新型コロナウイルスの影響を受けた前年同期と比べて以前に近い水準まで回復していくと見ていますが、ホンダで見ると半導体の影響による生産減で、とくに登録車があまり増やせず、グローバルで半導体をアロケーション(割り当て、配分)しているのですが、日本ではこの4~5月の影響がとくに大きくて、一方で他社は4~5月に影響が少なかったことで、この1Qにホンダ車の販売が少ないように見えているかと思います。逆に言うと7月になって他社で半導体影響が出ていて、さらに新しく出したヴェゼルやNシリーズの受注は好調ですので、基本的には今後、下期に半導体の生産が戻れば他社並みで、前年を上まわる台数を目指していくということになります」と説明した。
このほか、2輪車の販売見通しの下方修正について、「2輪につきましてはほぼインドです。新型コロナウイルスの影響によるロックダウンなどが1Qにあって下方修正したのですが、7月になってインドにおける感染状況が目を見るように収まって、現状では1回減らしたものの、この部分はこれから販売拡大が見込めるのではないかと思っています」と、倉石氏は楽観的な見方を示した。
販売台数を下方修正しながらコスト改善によって営業利益などを上方修正できる理由については、竹内氏が「今のコスト構造では、外部から購入している部品が約8割、内部で作っている加工費が約2割ぐらいですが、そのすべての面で、例えば生産効率をどうやって高めていくか、効率的にして吐き出し量を増やしたり、逆に費用を削減しながら同じものを作れるか、工数を工夫してサイクルタイムを減らしていけるかといった、日々の“ちりつも”の努力だとお考えいただければと思います」と説明している。