ニュース

ホンダF1田辺TD、フェルスタッペン選手のホームGPで2連勝達成にも「次戦イタリアGPはFP1での確認が重要に」

2021年9月5日(現地時間) 開催

オレンジ一色になっているスタンドをガッツポーズでウイニングランを行なうマックス・フェルスタッペン選手

 9月5日に決勝レースが行なわれたF1世界選手権 第13戦 オランダGPは、地元のヒーローでもあるレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手の劇的なポール・トゥ・ウインで幕を閉じた。

レッドブル・ホンダのエース、地元オランダのフェルスタッペンがF1オランダGPで優勝 ポイントリーダーに復帰

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1348760.html

 レッドブル・ホンダおよびフェルスタッペン選手にとっては夏休み明けとなる前戦のベルギーGPから連勝で、フェルスタッペン選手にとっては今季7勝目、レッドブル・ホンダとしては今季8勝目となる優勝。これまでの13戦でメルセデスとの勝敗は8勝5敗と大きく勝ち越すことになった。

 そうしたオランダGP終了後に、ホンダF1 テクニカル・ディレクター 田辺豊治氏によるオンライン会見が行なわれた。田辺氏によれば、レース中に発生したアルファタウリの角田裕毅選手の車両で発生したパワーユニットのトラブルは「現在調査中」とのことで、現時点では原因などは分かっていないということだ。

マックス・フェルスタッペン選手のホームGPという特別なレースで、2連勝を達成

スタートの様子。フェルスタッペン選手はスタートを決めて2台のメルセデスを従えて1コーナーに入っていく

──それでは初めに田辺氏から本日のレースの振り返りを。

田辺氏:オランダGPの決勝では、母国レースでマックス・フェルスタッペン選手がポール・トゥ・フィニッシュという形で優勝を果たした。スタートをきちんと決め、ルイス・ハミルトン選手にピタリとつけられていたが、チームの戦略がきっちりと機能して勝てたことを嬉しく思っている。ザンドフォールトのサーキットには、マックス選手のファンが沢山詰めかけて、スタンドで応援していた。スモークも沢山焚かれていて、前が見えないのではないかというぐらいだった。感じられたことは、フェルスタッペン選手を応援するだけでなく、今日戦ったすべてのスタッフにエールを送るという暖かい雰囲気の中でのレースにおいてフェルスタッペン選手が優勝で終えることができた。

 アルファタウリのピエール・ガスリー選手は、予選4位から4位フィニッシュを果たした。レースペースがとてもよく、安定して走ることができていた。確かに前の3台には追いつけなかったが、中段勢の中では強さを見せることができた。これまでガスリー選手は予選でよい順位を獲得しても決勝のペースでということがあったが、今回は決勝もよいペースを維持することができて、よい結果を得ることができた。

 セルジオ・ペレス選手は、Q1敗退ということもあり、PUやバッテリーなどを交換してペナルティをとってピットレーンスタートになった。ハードタイヤでスタートしてロングスティントを戦う作戦だったが、ロックアップしてしまい不用意なピットストップをすることになってしまった。しかし、いいペースで追い上げて最終的に8位でゴールした。タラレバで言えば、予選ポジションがきちんと取れていればもっと上位でゴールできたはずだが、今日きちんと走れてポイントを取れたのはよかったと思う。

 ホンダとしては残念なことに、角田裕毅選手はパワーユニットのトラブルでリタイアに終わってしまい、申し訳なく思っている。しっかりと原因を解析して次のモンツアでのイタリアGPに備えたいと思っている。

 夏休み後の後半戦が始まって、スパでフェルスタッペン選手が優勝し、2戦目のオランダGPでもフェルスタッペン選手が優勝してくれた。今後も最善を尽くして、残りのレースに臨んでいきたい。

──レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は今回は勝てたが、次のイタリアとロシアは厳しいのではないか、その先にわれわれに有利なサーキットがあると言っていた。ホンダとしては次のモンツァはどう考えているか?

田辺氏:レッドブルがそう言うのならそうなのだろう。われわれとしては、事前のシミュレーションを行ない、パワーユニットとしては最善を尽くすという形で進めており、それは次戦も変わらない。

──ペレス選手のパワーユニット交換。エナジーストアが違うスペックだということで、ピットレーンスタートになったが、予選までにつかっていたのと何が違っていたのか?

セルジオ・ペレス選手はピットレーンスタートから8位まで挽回

田辺氏:エナジーストアは新スペックを入れている。レギュレーション上、信頼性の懸念があるときに、FIAと他のパワーユニットマニファクチャラーの承諾を得たアップデートをする場合、シーズン中に一度だけ新スペックを導入できるということになっている。今回は信頼性の懸念がある場合のアップデートではなく、そのシーズン中に一度だけ導入できる新スペックに該当するエナジーストアを導入したため、ピットレーンスタートになった。

角田選手の車両に発生したパワーユニットのトラブルの原因は「これから調査する」

角田裕毅選手はパワーユニットのトラブルでリタイア

──角田選手のパワーユニットに関してはどのようなトラブルが発生していたのか?

田辺氏:それはこれから調べるので、現時点では分からない。

──次戦のモンツアでのイタリアGPはどんなレースになりそうか?

田辺氏:予想するのは難しいレースになるが、超高速サーキットで長いストレートが4本あり、シケインもある。そうした特徴的なサーキットに、どれだけうまく車体を含めたトータルのパッケージをセットアップすることができるのかが大事になる。レッドブル側はあまり得意だとは思っていないという話もあったが、アルファタウリのガスリー選手は昨年のモンツアで優勝していることもあり、そこは楽しみだというコメントも出している。

 イタリアGPでは、土曜日にレース形式のスプリント予選になる。金曜日はFP1を走ってすぐに予選になるため、FP1の中でどれだけシミュレーションの再現や、逆にうまくいっていないところなどを見ながら短い時間でセットアップできるかが肝になる。パワーユニット側でもきちんと準備をしていきレースに臨んでいきたい。

特徴的なバンクの3コーナーを抜けるフェルスタッペン選手

 今回のオランダGPの優勝で、ホンダパワーユニットとしてはシーズン8勝目。ドライバー選手権で2位のハミルトン選手に3点差という僅差ながら、フェルスタッペン選手がランキングトップの座を挽回した。その反面、2位と3位にはメルセデスの両ドライバーが入ったのに対して、レッドブルのもう1台(ペレス選手)は8位だったので、コンストラクターズ選手では前戦までの7点差から12点差とメルセデスにポイントリードを広げられてしまっている。その意味では2台そろってきっちり上位に入っていくことが、これからのレースでは求められるだろう。

 来週イタリアGPが行なわれるモンツァ、そしてその2週間後に行なわれるロシアGPのソチのいずれもメルセデスが得意とするサーキットであり、レッドブル・ホンダ陣営としてはその苦手とされるサーキットで、ダメージを最小限にするか、苦手なサーキットでメルセデスを上まわる成績を残すことができれば、悲願のチャンピオンに向けて大きく前進することになるだけに、次の2レースは要注目のレースになる。

 今週末に行なわれるイタリアGPでは、田辺氏の話にもあったとおり、イギリスGPで初めて試みられたスプリント予選という方式が再び採用される。金曜日はFP1の後、すぐに予選が行なわれることもあり、FP1に持ち込むイニシャル・セットアップの出来が重要になってくるレースとなる。長いストレートが4本あるモンツァ・サーキットは抜きやすいサーキットに見えるが、実際のところは抜きにくいサーキットだ。昨年のレースではトップのハミルトン選手がペナルティで交代した後、アルファタウリのピエール・ガスリー選手がトップに立ち、マクラーレン(当時)のカルロス・サインツ選手が2位で追い上げるというレースになったが、結局サインツ選手はガスリー選手を抜くことができずに、ガスリー選手が初優勝という劇的な展開で幕を閉じている。それは、モンツアが抜きにくいサーキットであることの何よりの証拠だろう。

 その意味では、スプリント予選での順位が重要になってくると考えられるだけに、FP1、予選、そしてスプリント予選まで1つもミスができない状況が続くことになる。今週末も引き続き緊張感のあるグランプリになっていきそうだ。

オランダ国旗を掲げるマックス・フェルスタッペン選手