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デンソーテン、ドライブレコーダーなどに搭載可能な軽量・高性能エッジAI技術を開発

2021年9月28日 発表

エッジAIを組み込んだ効率的なデータ収集のイメージ

演算量削減と高度な認識性能を両立。教師データ作成やAIモデル学習に関する時間も短縮

 デンソーテンは9月28日、ドライブレコーダーなどの組み込み機器(以下、エッジ端末)で撮影した物体(車両・歩行者など)を、エッジ端末のSoC(System-on-a-chip)上でリアルタイムに認識する軽量・高性能なエッジAI(人工知能)技術を開発したと発表した。

 このエッジAI技術は、処理能力0.5TOPS(Trillion Operation Per Second)程度のSoCで、高性能コンピューターに用いられるGPU向けAIに匹敵する性能を実現。同社製品への搭載に加えて、SoC上で動作するAI学習済みモデル(ソフトウェア)の外販にも取り組むとしている。

 今回開発されたエッジAI技術の適用先としては、車載機によるデータ収集を想定。コネクティッドカーの普及に伴うデータ活用の多様化・高度化によって、ドライブレコーダーが収集する画像データに対する需要が増え、それをクラウドセンターに送信するための通信コストや、クラウドセンターのストレージコストなど、データ収集コストの増加が見込まれている、その解決策として、クルマにエッジAIを搭載して撮影した画像に映り込んでいる物体を認識し、看板やクルマの台数などの認識結果を文字データとしてクラウドセンターに送信。次に、クラウドセンターで認識結果に基づいて、本当に必要な画像データの送信だけを車載機器へ要求することで、データ収集に関わるコストを大幅に削減し、効率のよいデータ収集を行なえるようになるとしている。

 画像認識AI技術は、ディープラーニング(深層学習)が主流で、ディープラーニングの画像認識ソフトウェア(以下、AIモデル)は、ニューラルネットワークと呼ばれる人間の脳の神経を模倣した構成を多層的に重ね合わせており、演算量は多くなるが、従来の認識技術よりも高精度に認識可能となる。この技術では、認識したい物体を含む画像(教師データ)を大量(数万~数十万枚)に用意してAIモデルに何度も学習させ、その結果をSoCに載せられるサイズに軽量化して実装している。

 AIモデルの構築・更新・変更には「小規模なSoCでの処理を可能とする、少ない演算量・メモリ量と、それらによってもたらされる、ほかのプロセスとも共存可能な軽量化」「大量の教師データを作成するための工数削減と、AIモデル生成における工数削減」という課題があり、これを解決する策として、「超軽量エッジAI技術」「モデル生成効率化技術」を採用。

AIモデル開発のプロセスと課題

 具体的には、超軽量エッジAI技術ではさまざまな大学や研究機関、企業などで開発されている高性能の画像認識AIから、車載機向けのベースとなるAIを選定。性能確保のために残すべき部分を特定し、そうでない部分を簡単な演算に置き換えることでAIモデルの演算量・メモリ量を削減。また、高性能パソコン向けのGPUなどで実行される代表的なAIである、Darknet53+Yolov3と比較して、60分の1以下の演算量と32分の1以下のメモリ量で同等の認識性能を実現している。

 モデル生成効率化技術では、今回開発したエッジAI技術と組み合わせることで教師データの作成にかかる手作業を一部自動化。経験豊富な人の手作業による教師データ作成と比較して時間を20%削減。さらに、同社のAI技術者が保有するノウハウをソフトウェア化することで性能のよいモデルを作るための設定値(学習用パラメータ)を特定する工程を自動化。AI技術者がいなくてもAI技術者が作成したモデルと同等性能のモデルを短期間かつ自動で生成することが可能となっている。

 これらの技術開発で作成したAIモデルはデンソーテン製品に適用され、収集画像の個人情報保護(例:映り込んでいる人の顔をマスク)、車両や歩行者による通行量の把握、防犯カメラでの侵入検知、店舗内カメラによる来店客の移動軌跡の検出など、車載以外にも通行量把握や防犯、監視向けといった用途も提案していく。