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日産、カーボンニュートラル実現に向け生産工場も電動化 2050年に向けたロードマップ公開

2021年10月8日 発表

日産自動車 生産・SCM担当副社長の坂本秀行氏

 日産自動車は10月8日、日産独自のクルマづくりコンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を導入した栃木工場の生産ラインを初公開。それにあわせて、2050年カーボンニュートラル実現に向けた生産工場の電動化ロードマップを公表した。

 同日開催された工場見学会では、同社生産・SCM担当副社長である坂本秀行氏がプレゼンテーションを実施。生産工場における2050年カーボンニュートラルを実現するロードマップについて説明した。

 現在の同社の生産工場では、外部から供給される電気に加えてガスや燃料を使用する装置が稼働してるいるが、カーボンニュートラルに向けて2050年までにガスや燃料の使用をやめる。

生産工場における電動化のロードマップ

 公開されたロードマップでは、2019年~2030年の期間にエネルギー削減を進めるとともに、一部設備やツールの電化、再エネ導入や代替エネルギー発電の一部適用を実施。これにより、2030年には生産工場におけるCO2排出を2019年比で41%削減するという。

 さらに、2030年~2050年には工場設備の全面電化をし、再エネと代替エネルギー発電の全面適用することで、2050年に代替エネルギー、再生可能エネルギーを使いながらカーボンニュートラルを目指すという。

2050年カーボンニュートラルに向けた生産工場におけるロードマップ

 生産現場の具体的な取組みとしては、鉄鋳造を電化させ、現状のキュポラから高周波炉を使用して電化。アルミ溶解レードル加熱についても、ガス直火加熱から、遠赤ヒーターを使用して電化。エアツールについても、電動ツールを使用してツールについても電化するという。

生産工場で電動化していく装置

 装置の電動化については課題もあるといい、坂本氏は「鉄の鋳造もそうですが、鉄を溶かして炭素鋼を作るような工程になりますが、どのように鉄を溶解させていくのかということに関しては、まだ十分に電化の技術が進化しておりませんので、こういう技術の開発が必要とされます。また、ツールに関しても、組み立てのツールにエアを使ってるものがあるので、これを全て電化していく。また、アルミの鋳造に関してもアルミの溶解を今はガスで行なっている部分がありますので、これを電化する。こういうような技術開発と装置開発を行なっていく必要がある」との考えを示した。

代替燃料や発電への取り組み

 また、生産工場で使用するエネルギーソースについて、坂本氏は「われわれも得意としております、長年研究してきた燃料電池のSOFCという、エタノールを使って発電するというものを工場内に取り入れて自分で発電して、クリーンエネルギーを使って工場を稼働させるということも考えております。すでにイギリスのサンダーランド工場では、風力発電や太陽光を大規模に使ってクリーンエネルギーで工場を運営しております。さらにマイクログリッド化によって、ここで完全にクリーンエネルギー化による生産工程を目指して活動を展開しております。世界中の色々な日産の工場で、カーボンニュートラル化への取り組みをすでに始めており、着実にその成果を得ております」との事例を話した。

 今回、栃木工場に導入された「ニッサン インテリジェント ファクトリー」とは、革新的な生産技術を取り入れた日産独自のクルマづくりコンセプトで、この「ニッサン インテリジェント ファクトリー」によって、車両組み立て時の生産効率を向上。同時に、工場で使用するエネルギーと材料の効率を向上させることで、カーボンニュートラルを実現していく計画となる。

 坂本氏は「2019年比で、1台のクルマを生産するのに必要なCO2量を、2030年に向けて40%減らすことを考えております。さらに、クリーンエネルギー発電を自分で行なって電気を供給していくことや、外部からの再生可能エネルギーの調達によって、すべて装置も電動化して、完全なカーボンニュートラル化を2050年までに行なうというロードマップを引いて、会社として取り組んでいる」と強調した。

公開されたプレゼンテーション資料