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日産、新型アリア国内仕様を披露 「真のカーボンニュートラルの実現に貢献するクルマに育ってほしい」と星野副社長
2021年6月4日 20:09
- 2021年6月4日 実施
予約されたリミテッドモデルから生産開始
日産自動車は6月4日、グローバル本社日産ホールにて、新型「アリア」日本専用特別限定車お披露目および、新たなデジタルマーケティングに関する説明会を行なった。登壇したのは執行役副社長の星野朝子氏と、Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部の山口稔彦部長の2名。
会場では星野氏より世界に先駆けて、新型アリアの予約受付を日本で開始したことが告げられるのと同時に、日本専用特別限定車「アリア limited(リミテッド)」のアンベールが行なわれた。また、2020年7月にワールドプレミアを行ない、すでに全世界で20万人ほどがアリアの情報サイトに会員登録していることを明かし、人気の高さをアピールした。
今回日本で予約受付が始まったのは、66kWhバッテリーを搭載した2WDと4WD、91kWhバッテリーを搭載した2WDと4WDの4グレードで、特にe-4ORCEは「高出力の前後モーターと4輪のブレーキを個別に制御することで、ドライバーの意のままにコーナリングを楽しむことができる」と星野氏も力説。またコネクテッド技術の進化により、これまでにない運転する楽しさを提供する1台に仕上げられているという。
会場には、事前に予約注文したオーナーのみが手に入れられるリミテッド専用の限定2トーンカラー「バーガンディー/ミッドナイトブラック」「シェルブロンド/ミッドナイトブラック」を展示(ともに2WDモデル)。リミテッド専用はボディカラーだけにとどまらず、専用色の19インチアルミホイールカバーやスタイリッシュなキッキングプレート(ARIYAロゴ付LED)をはじめ、日本の伝統美である枯山水をモチーフとした専用色フロアカーペットも設定されている。なお、生産は事前に予約されたリミテッドが優先され、標準車の生産はリミテッドの後になるという。
アリアは日産のフラグシップモデルであり、さまざまな技術が搭載され、新たな技術にもチャンレジした1台。日産は2030年の早い時期に主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とすることを目指すと宣言していることもあり、星野氏は「アリアは生産技術も含めて、真のカーボンニュートラルの実現に貢献するクルマに育ってほしいと考えている」と語った。日本から販売する理由については、初めての技術がたくさん搭載されていることから「技術の日本」という点をアピールしたい点、さらに日本国内で先行販売することでフィードバックも早くできる点を挙げた。
また、日本以外の市場については、政権が代わってEVが急速に普及しているアメリカや、以前よりEVが浸透しているヨーロッパでも2か月後くらい後にサイトを開設して予約を受け付ける予定とし「そういった地域でもしっかりと魅力があり、競争力があると思う」と星野氏はコメント。さらに、日本での納車に関しては2021年冬を予定しているとのことで、それ以上の詳細な時期は明かされなかった。当初2020年の発表時は2021年中旬発売予定だったが、冬になったことについて星野氏は「新しい技術が満載されているクルマで、いろいろなことを丁寧に詰めていった結果」と述べた。
販売目標台数については、バッテリーの製造キャパシティなどもあるので現状では設定せず、「たくさん売れればありがたい」としつつも、「丁寧に販売しながら、初年度から数万台は見込んでいる」とした。購入ターゲット層に関しては「カーボンニュートラルを目指している以上、対象は全年齢層であり、「リーフ」も含めてEVをもっともっと世の中に広めていきたい」とし、さらにプロパイロット2.0を搭載しているアリアやリーフは、ナビと連動しながら目的地まで楽に連れていってくれる利便性を挙げ、「ペーパードライバーの方や免許を取ったばかりの若い人にもぜひ乗ってもらいたい」と星野氏は言う。
インフラの課題について星野氏は「自宅で充電できるユーザーが日本は圧倒的に少ない」と述べ。自身もリーフに乗り2週間に1回くらい充電していると例を挙げつつ「もっと充電が気軽で身近なものにしていく必要があるし、マンションやアパートに住んでいるユーザー向けにも、ヨーロッパのように路上に充電器がズラリと並ぶような環境を整えていく必要がある」と言及。「まだまだ足りていないとはいえ、日本でも充電できる場所は増えていて、最近は減少傾向にあるガソリンスタンドとほぼ同じまで増え、昔のように充電残量を気にしないと乗れないような状況ではなくなっている」などと現状を語った。
また、政府がEV用の充電スタンド数を2030年までに今の5倍にあたる15万基に引き上げると発表したことについて、「EV普及への後押しとして十分な数か」と問われると星野氏は、今の3万基で日本全国EVで走ることに何ら心配はないものの、すでに充電渋滞が起きていることを挙げ、現状では不足しているとの認識を示しつつ、「世の中のEVの台数があと10年で5倍にしか増えないかというと、そんなことはなく、もっと増えると思う。そうなると5倍の15万基では足りないのではないか」との考えを述べた。続けて「もっと家充電をやらなければならないし、勤務先などパブリックな充電設備をもっと増やす必要があると思う」とコメントした。
さらに「初期と比べるとEVの航続距離は3倍にも4倍にもなっていて、あまりクルマが通らない場所の急速充電器は今後使われなくなると思うので、長距離で使う高速道路に急速充電器をもっと増やす必要があるし、普通充電器はマンションやアパートに増やす必要がある。社会全体でどういった配置がベストか、最適な充電のフォーメーションを考えながら構築していく必要があると思う」と今後のインフラについてに意見をまとめた。
新たなデジタルマーケティング「クラブ アリア」を構築
今回の発表会では日産の新たな取り組みとなる「デジタルマーケティング」についても、担当の山口氏より説明が行なわれた。このデジタルマーケティングは、多様化するユーザーの購買行動に対して、オンラインでの購入はもちろん、購入前から購入後までも包括してサポートするものを示す。
日産はアリアの特徴である二面性をテーマとしたウェブマガジンや、アリアについて深く知ることができる会員限定イベント、オンライン試乗ができるバーチャルコンテンツなどが用意されている日産アリア会員特別ページ「CLUB ARIYA(クラブ アリア)」を開設。
このクラブ アリアでは、ここでしか読めない特別なコンテンツを多数用意するほか、今まで以上にリアルな体験ができるバーチャルシステムを導入。ボディカラーやオプションパーツの脱着だけにとどまらず、運転席、助手席、後部座席など、それぞれに座った際の景色の見え方や、AR技術を駆使して自宅の駐車場にアリアが停まっている状態を再現させることも可能にしている。さらに、自身でコーディネイトしたアリアでバーチャル空間をドライブできる「バーチャル テスト ドライブ」も用意されている。
さらに今後「アリア ウェビナー」と題し、トークセッションやQAコーナーを設けつつ、直接質問ができるトークイベントなども予定していると、山口氏は発展性についても言及した。
オンラインでの販売チャンネルを充実させていることに関して星野氏は「オンとオフをどのようにシームレスに作っていくか、オフだけでオンのような体験を提供できるかと大きなチャレンジに取り組んでいるが、今後オンだけでリアルと同じかそれ以上の体験を提供できるようにしていきたい」と語る。
また、デジタル購入をアリアから推進する背景としては、アリアで新しいことにチャンレジする一環として売り方も同様に挑戦していくことと、コロナ禍ということも重なった結果「たまたまアリアからのスタートになった」と解説。これでいろいろなことを学び、今後もその学びを生かしていろいろなクルマで試していきたいと語った。
山口氏によると、すでにクラブ アリアへのユーザー登録は可能で、コンテンツは配信されてるが、本格的な稼働はアリアの納車が始まる2021年冬ごろになると説明。
オンラインのクラブ アリアだけでなく、従来通り日産の販売店でも予約ができ、試乗も可能。直接対面を希望するユーザーについては、これまで通りの対応を丁寧にしていくという。