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日産、新型EV「アリア」の概要発表。発売は2021年中頃、価格は約500万円からの見込み

2WDと“e-4ORCE”仕様の4WDを設定し、バッテリーは65kWhと90kWhの2種類

2020年7月15日 世界初公開

新型「アリア」を世界初公開

 日産自動車は7月15日、SUVスタイルの新型EV(電気自動車)「アリア」を世界初公開した。アリアの日本での発売は2021年中頃を予定し、実質購入価格は約500万円からとなる見込みを示した。

 今回の発表では具体的なグレード体系、価格などについては明らかにされなかったが、2WDとともに新電動四輪駆動システム「e-4ORCE」仕様の4WDを設定し、バッテリーはそれぞれに65kWh仕様と90kWh仕様をラインアップすることがアナウンスされた。

 また、先進運転支援システムについては、「プロパイロット」仕様とともにその進化版である高速道路でのハンズオフも可能な「プロパイロット2.0」仕様を用意。日本、北米で設定されるプロパイロット2.0は「スカイライン」に搭載するものからさらに進化し、準天頂衛星システムなどからの高精度測位情報を受信し、自車位置をより高精度に把握することが可能になったという。

新型アリア主要諸元(日本仕様)
主要諸元(日本仕様)アリア(2WD)アリア(4WD)
バッテリー総電力量65kWh90kWh65kWh90kWh
最高出力160kW178kW250kW290kW
最大トルク300Nm300Nm560Nm600Nm
0-100km/h加速(社内測定値)7.5秒7.6秒5.4秒5.1秒
最高速160km/h160km/h200km/h200km/h
航続距離(WLTCモードを前提とした社内測定値)最大450km最大610km最大430km最大580km
全長4595mm
全幅1850mm
全高1655mm
重量(モデル、装備により異なる)1900-2200kg
ホイールベース2775mm
荷室寸法466L(2WD)/408L(4WD)
タイヤ寸法(フロント/リア)235/55R19、255/45R20(グレード別設定)
新型アリア

新開発のEV専用プラットフォームによりフラットで広々したフロアを実現

 新型アリアのボディサイズは4595×1850×1655mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2775mm。現行型の「エクストレイル」(20S HYBRID)と比べて95mm短く、30mm広く、75mm低いスリーサイズとなる。ホイールベースは新型アリアの方が70mm長い。

 外装デザインについて、モーター駆動のEVではエンジンルームの冷却が不要となるため、グリル部分はスモークがかったパネルでカバーされ、その中には日本の伝統的な組子パターンが立体的に表現されるデザインを採用。パネルは内部に配置されたプロパイロットなどの先進技術を支えるセンサー類を守る役目に代わっていくことから、日産では「シールド」と表現。シールドの中心には新しい日産を象徴する新たなブランドロゴがLEDによって光る仕様になっている。4つのLEDを配したヘッドライドは薄くデザインされたのが特徴で、日産のデザインシグネチャーであるVモーションは白い光で表現され、ウィンカー点灯時にはシーケンシャルウインカーとしても機能する。

 ボディサイドでは低く滑らかなルーフラインが印象的で、アルミホイールは19インチと20インチをグレード別に設定。フロントとリアを直線でつなぐウエストラインは建築物のような美しさを携え、どの角度から見ても美しさとエネルギーが宿っているかのような活力を表現したという。また、リアまわりでは水平基調に延びるリアコンビネーションランプを採用し、消灯時はすっきり、点灯時は赤い光がしっかりと見えるよう設計された。

 外装色は、仕向地によって9種類の2トーンと5種類のモノトーンをラインアップ。メインカラーとなる「暁(あかつき)」と呼ばれるカッパー(銅)とブラックの2トーンカラーは、夜が明け太陽が昇る瞬間をイメージし、新しい1日の始まりを表現したもの。このカッパーはアリアの流線形なデザインを際立たせるとともに、電気を流す銅を表現し、今後やってくる電気自動車時代の幕開けを感じさせるカラーに仕立てたとのこと。

新型アリアのボディサイズは4595×1850×1655mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2775mm。外装色はメインカラーの「暁(あかつき)」と呼ばれるカッパー(銅)とブラックの2トーンカラー

 室内においては、モノとモノの間にある空間や、連続するコトとコトの間の時間を意味する日本語の「間(ま)」をキーワードにデザイン。

 新開発のEV専用プラットフォームにより、フラットで広々したフロアを実現するとともに、従来では室内に配置されていた空調ユニットをモータールームに配置することで、Cセグメントのボディサイズでありながら、Dセグメントレベルの広い室内空間を確保。また、スリムなデザインのゼログラビティシートや、遮音材をふんだんに使用することで、従来にない高い静粛性を実現しているという。

 ダッシュボートには従来のような物理的なスイッチはなく、クルマの電源を入れるとアイコンが浮かび上がり、このスイッチは運転中でも操作感が分かるように振動するハプティクススイッチになっている。また、幅の広いセンターコンソールはドライバーのシートポジションに合わせて電動で前後に動かすことが可能で、その上には「アドバンスド アンビエント ライティング」が施された新デザインのシフトノブをレイアウト。センターコンソール内にはQi規格のワイヤレスチャージャーも搭載される。

日本語の「間(ま)」をキーワードにデザインしたインテリア
インテリアでは2つの12.3インチディスプレイをレイアウト。地図や音楽情報などを映すセンターのディスプレイはスワイプ操作が可能で、ナビゲーションのルートなどをメーターディスプレイに表示させるといったことができる
新型アリアはCセグメントのボディサイズでありながら、Dセグメントレベルの広い室内空間を確保したという
木目調のインストルメントパネルにはエアコンなどの操作スイッチが白く浮かび上がる
センターコンソールはドライバーのシートポジションに合わせて電動で前後に動かすことが可能で、その上には「アドバンスド アンビエント ライティング」が施された新デザインのシフトノブをレイアウト
センターコンソール内ではQi規格のワイヤレスチャージャーも搭載

一充電あたりの航続距離は最大610km

 パワートレーンは、2WDモデルとe-4ORCE仕様の4WDモデルを設定し、バッテリーはそれぞれ65kWh仕様と90kWh仕様を展開。

 新開発のEV専用プラットフォームは、運転の楽しみはもとより、乗る人すべてが快適なクルマを目指して開発。重量物であるバッテリーを車体中央にレイアウトし、低重心かつ前後重量配分が均等になるように設計された。また、バッテリーケース内にクロスメンバーを配し、フロアトンネルがないフラットなフロアも高い剛性を確保した。サスペンション部品も高剛性な部品を採用するなどし、操縦安定性能を向上させるだけでなく快適な乗り心地と高い静粛性を実現したという。

 また、「リーフ」同様にe-Pedalも搭載し、アクセルペダルの踏み加減を調整するだけで発進、加速はもとより、減速をコントロールすることが可能になっている。

 新開発されたモーターは高速巡行時の消費電力を低減し、一充電あたりの航続距離は最大610km(2WD 90kWhバッテリー搭載モデルのWLTCモード社内測定値)を実現。また、最大130kWの急速充電に対応するとともに、バッテリーの温度を一定に保つ水冷式の温度調節システムを搭載し、30分の急速充電で最大375km分を充電することが可能になった。

 なお、日産はアリアの発売に備えて新たな充電インフラの整備を目指しており、より短時間での充電を可能とする最大出力150kWのCHAdeMO急速充電器を2021年度内に国内の公共性の高い場所に設置できるよう、パートナーとの調整を進めているとのこと。

 一方、e-4ORCEについては前後に合計2基の電気モーターを搭載し、それぞれのトルクを個別にコントロールすることを可能にした。これにより、加速時のトラクション性能はもとより、減速時も前後のモーターそれぞれで回生量を調整し、ブレーキ時のクルマの沈み込みを減少させるなどといった車体の揺れを抑える制御を行なうという。

 コーナリング時は前後のトルク配分を適切に調整するとともに、4輪のブレーキを個別に制御することで、ドライバーのステアリング操作に忠実で、滑らかで心地よいハンドリングを楽しめるとのこと。

プロパイロット2.0は準天頂衛星システムなどからの高精度測位情報を受信可能

 新型アリアに搭載する先進の運転支援技術については、上記で述べたとおり先進運転支援システム「プロパイロット2.0」に加え、「プロパイロット リモート パーキング」などを採用した。

 日本や北米市場に設定されるプロパイロット2.0は、7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで白線、標識、周辺車両を検知し、さらにナビゲーションシステムと3D高精度地図データを使うことで制限速度をはじめとした道路状況を把握しながら、ドライバーが常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて、同一車線内でハンズオフ走行を可能とし、安全でスムーズなドライビングを実現。アリアでは、準天頂衛星システムなどからの高精度測位情報を受信し、自車位置をより高精度に把握することが可能になったという。

 運転支援の状態が直感的に把握できるよう、メーターディスプレイやヘッドアップディスプレイにはプロパイロット2.0の作動状況がリアルタイムに表示される。また、インテリアの「アドバンスド アンビエント ライティング」はプロパイロットの動作状況に連動し、通常は白色、ハンズオン時には緑色、ハンズオフの時には青色に色が変化。ステアリングコラム上に設置されたドライバーモニターカメラでドライバーが前方を注視しているかを確認し、ドライバーが前方を注視していないと判断した際は警告音で注意を促す。また、ハンズオフドライブ時にその状態が継続する場合は、ハザートと共に速やかに車両を停止させる。

インテリアの「アドバンスド アンビエント ライティング」はプロパイロットの動作状況に連動し、通常は白色、ハンズオン時には緑色、ハンズオフの時には青色に色が変化

 また、リーフと同じく「プロパイロット パーキング」を搭載するとともに、車外からの操作で駐車する機能「プロパイロット リモート パーキング」(日本市場に設定)を搭載。これにより、狭いスペースに駐車するようなシーンにおいても、ドライバーや同乗者の乗り降りを容易に行なうことが可能になっている。

リーフと同じく「プロパイロット パーキング」を搭載

「ハローニッサン」でドライバーの操作をサポート

 そのほか、新型アリアでは自宅でスマートフォンでドライブプランを立て、クルマの情報を確認しながらルートをクルマに転送したり、乗り込む前にリモートでエアコンをONにしたりできる先進のコネクテッド技術を採用した。

 また、パーソナル・アシスタンス技術を搭載したことで空調やナビゲーションを音声で操作でき、「ハローニッサン」と呼びかけることでドライバーの操作をサポートする。また、新型アリアにはAmazonが提供する音声サービス「Alexa」が搭載されており、音楽の再生や天気予報の確認、家族や友人との通話、スマートホームデバイスのコントロールなどを音声のみで操作可能。加えて帰宅途中にAlexaに話しかけて、自宅の照明やエアコンのスイッチを入れるなど、クルマの中から自宅の家電をコントロールすることも可能になっている。

 さらに新型アリアでは、日産初となるリモート・ソフトウェア・アップデートと呼ばれる、無線でクルマのソフトウェアをアップデートする機能を備えた。ソフトウェアを保存するメモリについては「デュアル・バンク・メモリ」を採用しており、停車中や走行中にソフトウェアをサブメモリにダウンロードし、その後メインメモリと切り替えることで、アップデートは短時間で完了するとのこと。