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日産、新型EV「アリア」発表会レポート。「走り出しの加速性能はフェアレディZにも匹敵」と内田社長

開発陣がデザイン、パワートレーン、コネクテッド技術などについて解説

2020年7月15日 開催

日産自動車株式会社 代表執行役社長兼最高経営責任者の内田誠氏(右)と代表執行役最高執行責任者兼チーフパフォーマンスオフィサーのアシュワニ・グプタ氏(左)

 日産自動車は7月15日、初のEV(電気自動車)クロスオーバー新型「アリア」を、みなとみらい地区(神奈川県横浜市)に期間限定で建てた「ニッサン パビリオン」から世界に向けて発表した。

 冒頭で代表執行役社長兼最高経営責任者である内田誠氏は、新型アリアを発表できる喜びが満ち溢れ「思わず笑顔になってしまう」とにこやかにあいさつ。

代表執行役社長兼最高経営責任者の内田誠氏

 新型アリアはクロスオーバーの快適さと、電気自動車の持つ運転の楽しさを合わせ持った日産の自信作。クロスオーバーのジャンルは激戦区ではあるが、あえてここにEVを投入することで、電気自動車をもっともっと盛り上げていきたいと内田氏は語る。

 続けてアリアの魅力については、たくさんある中から日産の得意分野である「走り=想像を超えワクワクするドライビング体験」について言及。実際に自分も運転したところ、その走り出しの加速性能は「フェアレディZにも匹敵する」と明言。同時に静かで安定性もあり、とても驚いたという。

 また、アリアはただの新型車の1つではなく、日産の新たな扉を開くモデルであることも紹介。10年前に世界で初めて量産EVの「リーフ」を発売し、今ではどこのメーカーよりも多くのEVに関するデータが蓄積できた。同時にユーザーの声も多く集められたことで、今回アリアに採用している“まったく新しいEV専用プラットフォーム”を生み出したという。そしてこの新型プラットフォームにより、無限の可能性が生み出され、今後は年間100万台以上の電動車を販売していくと明言。

発表会が行なわれた日産パビリオンは8月1日より一般公開
新しいブランドロゴも発表された

 そしてそんな新たな決意を象徴する「新たな日産ブランドロゴ」を発表。以前よりもしなやかになりつつも、丸い太陽とそれを貫く水平ラインは変わらない。これは創業からの“至誠天日を貫く”という想いが込められ、豊かな歴史とイノベーションの伝統とともに、未来へと舵を切る日産の姿を表現しているという。

 これからも日産は、クルマに乗っているときも、乗っていないときも、いつも社会とつながっている暮らしのパートナーを目指す。人に寄り添う企業でありたいと語気を強めて結んだ。

真に美しく、特別な魅力を持った「アリア」

代表執行役最高執行責任者兼チーフパフォーマンスオフィサーのアシュワニ・グプタ氏

 続いて新型アリアと共に代表執行役最高執行責任者兼チーフパフォーマンスオフィサーのアシュワニ・グプタ氏が登場。アリアは真に美しく、特別な魅力を持ったクルマであること発表。その特別な1台を作るためにエンジニアとデザイナーは知恵と技術のすべてを注ぎ込んだ、まさに情熱の結晶であるという。

 また、最先端のスタイリング、爽快な走り、ラウンジのような室内空間、盛沢山の先進技術が盛り込まれた、まさに“日産インテリジェンスモビリティ”の挑戦となるモデルであると紹介。そしてこのEVとクロスオーバーを融合したモデルは、長年に渡る経験とユーザーの声を大切にしてきた日産の新しい提案でもあるという。

 そしてアリアにはたくさんの“もっと”があり、まずは新しいプラットフォームによる「もっとわくわくする走り」では、新型モーター採用による加速力のよさを解説。0-100km/h加速はわずか5.1秒と、同社のスポーツカー「フェアレディZ」に匹敵すると述べるとともに、2種類のバッテリーと2WDと4WDのラインアップがあることも紹介。

「もっと、もっと、もっと」が詰め込まれたアリア

 続いてはプロパイロット2.0による「もっと安心で快適」についても解説。スムーズな運転を行なうハンズオフ機能やヒューマンマシンインターフェイスは、ドライバーの意思を尊重するまったく新しいドライビングを提供するとのこと。航続距離は最大で610㎞。130kW出力の急速充電器で30分で最大375Km分の充電が可能であることのほか、新型プラットフォームによりワンランク上の室内空間が生み出されていることも解説した。

 最後のもっとは「今まで以上のつながる楽しさ」。最新のコネクティビティであるハイブリッド音声認識機能により、今まで以上に世界とつながり、楽しさを生み出してくれる。そして家族や友人をより身近に感じられること紹介し、最後に「アリアはまもなく街を走り出します」と締めくくった。

開発スタッフによる魅力の解説

 セカンドチャプターでは、開発陣による魅力の解説が行なわれた。

 まずデザインダイレクターの田井悟氏は、通常であればモーターショーなどに展示されるコンセプトカーが生産車になる場合、いろいろと変更される点があるが、アリアに関してはあまり変更していないと、2019年の東京モーターショーでお披露目されたコンセプトモデルとかなり近い理由を解説。

エグゼクティブプロデューサー デザインダイレクター 田井悟氏

 また、新しい日産の新しいEVということで「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」というキーワードを掲げ、昔から日本に根付いている〝エコ”〝サスティナビリティ”さらに〝シンプル”で〝ダイナミック”で〝モダン”さがあるクルマ作りを目指してきたという。

 続いてデザインマネージャーの山崎一樹氏が登壇。キーポイントは「なめらかでスムーズなEVの走り」で、そこからインスピレーションを受けてデザインに落とし込み、サイドには1本の力強いライン、ピュアでナチュラルな面など、シンプルでスタイリッシュなデザインディティールについて語った。

 フロントのデザインテーマは「デザインとテクノロジーの融合」で、穴のないグリル部分には、日本伝統の組子のパターンをあしらい、自動運転システムとなる日産インテリジェンスモビリティがビルドイン。さらに発光する新しいロゴにより、次世代の新しい日産の顔を強くアピールしていることを解説。

デザインマネージャー 山崎一樹氏

 さらにリアまわりでは、風をイメージしたなめらかな美しいキャビンが最大の特長であることを強調。また、リアの左右につながったテールランプが、がっしりとしたスタンスを表しているという。

 内装についてはデザインマネージャーの田子日出貴氏が解説。フラットなフロアとたっぷりとした室内空間は、シンプルでくつろげる空間としてデザインした「モダンラウンジ」を具現化したものという。

 空間の広がりを強調するライン照明、S字になった大きな2つのディスプレイは、見やすさと操作性を両立した最適なデザインであることを紹介。ドアトリムと足下には日本の伝統工芸の組子にインスピレーションを受けた新たな照明を採用しており、見る角度によって非常に豊かな光のうつろいを生み出すという。木目パネルには空調スイッチが自然に調和され、さらにセンターコンソールはドライバーの位置に合わせて前後に動かせるといった点を紹介した。

デザインマネージャー 田子日出貴氏

新たに開発されたEV専用パワートレーンのポイント

4輪駆動には新開発の「e-4ORCE」が搭載される

 パワートレーンについては、デベロップメントチーフプロダクトスペシャリストの福田氏より、アリアにはたくさんのユーザーに楽しんでもらえるよう、バッテリータイプに60kW級と90kW級の2種類、駆動方式に2輪駆動と4輪駆動の2種類で、合計4種類のラインアップがあることが紹介された。

 続いてチーフビークルエンジニア中嶋光氏が、4輪駆動には「e-4ORCE」という新技術が搭載されていることを解説。このe-4ORCEは、フロントとリアに2つのモーターを搭載し、これまで培ってきたEVの技術と、スポーツカー「GT-R」で培ってきたノウハウを融合させ、どのような天候、どのような環境でも、より安定して楽しく運転できるという。

チーフ ビークル エンジニア 中嶋光氏

 さらに中嶋氏は、EV専用に開発された新型プラットフォームについても解説。コンパクトになった新しいモーターと新しいバッテリーにより、CセグメントのSUVボディでも、1つ上のクラスのキャビン(居住空間)を確保できたと紹介するとともに、バッテリーも薄型になったことで、フロアがフラットにできていることを解説。また、新型バッテリーはどんな気候でも安定した充電性能が得られるように水冷で温度調整を行なう機構を盛り込んでいることを報告した。

 また、福田氏はプロパイロット2.0のハンズフリー機能が、準天頂衛星システム(みちびき)を使うことによって、より正確でよりスムーズな動きに進化したことを紹介。ドライバーの負担を軽減して、同乗者と一緒に楽しみながらドライブを楽しめるようにしたと新たな狙いを説明している。

デベロップメント チーフ プロダクト スペシャリスト 福田真人氏

進化したコネクテッド技術

 最後にアリアのコネクテッド技術により、生活はどんな風に便利になるのか? アライアンスグローバルダイレクターコネクテッド&サービス佐々木徹夫氏が解説。

モーターとバッテリーがコンパクトになり室内空間を広くできた
見たい情報を見たい場所における大型ディスプレイ

 佐々木氏は、アリアとオーナーの新たなつながりは、自宅にいるときから始まり、好みや生活スタイルに合わせて、よりシームレスでより快適な生活になるという。例えばスマホで目的を設定した際に、充電スポットが自動的に経由地に設定されたり、アマゾンのアレクサを利用することができるので、家の中のスマートスピーカーからアリアのバッテリー残量と航続距離を確認できることを紹介。

 また、インテリジェントキーを持っていればアリアに近づくだけでキーが解除されたり、S字になった大きな統合ディスプレイは、スマホと同じようにスクロールしたり、スワイプしたり、直感的な操作で、見たい情報を見た場所に移すことが可能に。また、大型ヘッドアップディスプレイにより視界を逸らす必要も減り、クルマでの移動は音楽を聴いたり、おしゃべりしたり楽しく過ごす時間へと変化するという。もちろん、アレクサを使って音楽を再生したり、家の照明を点けたり、エアコンを稼働させることも可能になる。

 そしてスマホなどと同じように、最新の地図情報やソフトウェアは、無線によりアップデートされるようになり、ユーザーのライフスタイルに溶け込む1台になるという。

アライアンス グローバル ダイレクター コネクテッド&サービス 佐々木徹夫氏

 なお、日本での発売は2021年中頃を予定。価格は約500万円からとなる見込みで、欧州、北米、中国では、2021年末までの発売を予定しているという。

新型車「#日産アリア」発表記者会見(38分34秒)