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日産/ニスモ、2021年のモータースポーツ体制を発表した「モータースポーツファンイベント」レポート
大森ファクトリーバーチャルツアーや夢の親子対談、クイズ対決など内容盛りだくさん
2021年2月15日 15:58
- 2021年2月13日 開催
日産自動車およびその子会社で日産のモータースポーツを運営しているニスモ(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は2月13日、「2021年モータースポーツファンイベント」を、YouTubeを利用したオンライン配信という形で開催し、その中で2021年度のモータースポーツ活動概要も発表した。
日産/ニスモは、すでにSUPER GT/GT500の参戦体制を発表していたが、今回はそれに加えてフォーミュラEおよびSUPER GT/GT300の参戦体制を明らかにした。GT300では2020年チャンピオンを獲得したKONDO RACINGの56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組、YH)などGT3オフィシャルパートナーチームから3台が参戦するほか、カスタマーチームより2台の計5台の「NISSAN GT-R NISMO GT3」が参戦する。
また、このファンイベントではホンダ陣営から日産陣営へとメーカーを跨ぐ大型移籍として注目を集めている、12号車 カルソニック IMPUL GT-Rを今季新たにドライブする松下信治選手などの日産/ニスモのGT500ドライバー8名が参加。今シーズンの意気込みを語ったり、NISMOの大森ファクトリーを紹介したりといった各種のイベントに参加した。
自身もラリーに参戦していたというグプタCEO、流暢な日本語でモータースポーツへの想いを語る
ファンイベントの冒頭には日産自動車COOのアシュワニ・グプタ氏が登壇し、今シーズンのモータースポーツに臨む日産のリーダーの1人としての想いを明らかにした。なお、今シーズンもニスモ アンバサダーを務める柿元邦彦氏によれば「最高執行責任者クラスでは初めて」ということなので、日産としてもかなり力の入った発表と言える。
本日2021年日産のモータースポーツ計画が発表されました。
— 柿元邦彦 (@kakkie1020)February 13, 2021
我輩は引き続き、マイケル・クルムと共にGT-Rの「Will to Win」を支えます。
冒頭にニスモ片桐社長と共に、日産のグプタCOOの挨拶がありましたが、我輩の記憶では、最高執行責任者クラスでは初めてだと思います💪💪pic.twitter.com/EcIe8TZaDN
グプタ氏はとても流暢な日本語で「例年はリアルイベントとして行なっているが、今シーズンはCOVID-19の拡大でこのような形になったが、内容を充実させてやっていきたい。モータースポーツはわれわれ日産とファンの皆さまが一緒になって楽しめるイベントで、古くから力を入れて取り組んでいる。近年日産は電気自動車に力を入れており、その延長線上としてフォーミュラEにも参戦している。今シーズンももちろん参戦は継続し、セバスチャン・ブエミ選手がドライブする23号車は日産アリア、オリバー・ローランド選手がドライブする22号車には日産リーフの名称を付けて臨む」と述べ、フォーミュラEに参戦する日産チームの車両には市販EVの名称を付けて、市販車との繋がりをより強調していくと説明した。
SUPER GTに関しては「前半戦に関しては厳しい戦いだったが、ファンの皆さまの支えで強くなった。GT500は引き続き4チーム体制で臨む。GT300では日産大学校が協力している56号車がチャンピオンを獲得した。56号車には日産メカニックチャレンジで選ばれたメカニックが活動しており、56号車の整備などを担当し、日々の仕事ではできない経験をしている。それがお客さまへのよりよいサービス提供につながっており、人材育成がシリーズタイトル獲得につながったことを嬉しく思っている」と述べ、GT500に関しては前半戦の苦しい状況から、2勝を挙げるなどの活躍につながったこと、GT300では日産の人材育成にもひと役買っている56号車がGT300のタイトルを獲得したことを祝った。
グプタ氏は「私個人としても、かつてはオフロードのラリーに参加していたり、直接レースに触れることで情熱を高めてきた。その情熱は今でも続いており、テストコースでさまざまな車両をドライブしている。日産としてはフォーミュラEやSUPER GTに参戦する以上は優勝を目指していく」と述べ、実は自身でもラリーに参戦していたほどのモータースポーツ好きであり、今後も情熱を持ってモータースポーツに取り組んで行くという決意表明を行なって、スピーチを終了させた。
フォーミュラEとSUPER GTを中心とし、他モータースポーツ活動、状況が許せばニスモ・フェスティバルも開催したいと意欲
その後、ニスモCEOである片桐氏が登壇し、日産/ニスモのモータースポーツ活動に関して説明した。片桐氏は「ファンの皆さまにお会いできないのは残念だが、こうして体制発表をできることを嬉しく思っている。今シーズンの日産/ニスモのモータースポーツ活動はフォーミュラEとSUPER GTを軸として、NISSAN GT-R NISMO GT3でカスタマーレーシングをサポートしていく」と説明した。
FIA フォーミュラE世界選手権
2020年同様の「日産e.damsフォーミュラEチーム」から、23号車がセバスチャン・ブエミ選手、22号車がオリバー・ローランド選手がドライブして参戦する。グプタCEOの紹介の通りで、23号車が日産アリア、22号車が日産リーフと、日産の最新市販EVの名称が付けられ、市販EVとの繋がりがよりアピールされる形となる。監督はグレゴリー・ドリオ氏とオリビエ・ドリオ氏となる。
2020年のフォーミュラEでは日産は優勝1回でチームランキングは2位となった。今シーズンは日産として参戦してから初めてとなるタイトル獲得に向けて、2月26日に予定されているサウジアラビア/ディルイーヤでの開幕戦に臨むことになる。
SUPER GT/GT500
カーナンバー | チーム | 監督 | 車両名 | ドライバー | タイヤメーカー |
---|---|---|---|---|---|
23 | NISMO | 鈴木 豊 | MOTUL AUTECH GT-R | 松田次生/ロニー・クインタレッリ | ミシュラン |
3 | NDDP RACING with B-MAX | 田中 利和 | CRAFTSPORTS MOTUL GT-R | 平手晃平/千代勝正 | ミシュラン |
12 | TEAM IMPUL | 星野 一義 | カルソニック IMPUL GT-R | 平峰一貴/松下信治 | ブリヂストン |
24 | KONDO RACING | 近藤 真彦 | リアライズコーポレーション ADVAN GT-R | 高星明誠/佐々木大樹 | ヨコハマ |
SUPER GT/GT500の参戦体制に関してはすでに発表されている通りで、上の表のようになっている。ミシュランタイヤを履く23号車と3号車に関しては2020年と同様の体制だが、ブリヂストンタイヤを履く12号車とヨコハマタイヤを履く24号車のラインアップに関しては変更が加えられている。2020年に12号車をドライブしていた佐々木大樹選手が、24号車に再加入(12号車に移る前は24号車をドライブしていた)し、高星明誠選手とコンビを組む。佐々木選手が抜けた12号車には、2020年に12号車へ加入した平峯一貴選手が残留し、そこに新しいチームメイトとして今季から日産陣営に加わった松下信治選手が加わることになる。
2020年の半ばまでF1直下のカテゴリーであるF2に参戦していた松下信治選手は、育成時代から一貫してホンダ陣営のドライバーとして活動してきたが、2020年からはホンダ育成から外れて活動していた。2020年後半には、日本に帰国してGT300のNSX-GT(55号車)に乗るなどしてきたが、今シーズンは心機一転日産へ移籍して新しいスタートを切ることになる。
そうした選手がこれまでもいなかった訳ではなく、例えば、現在の日産のエースドライバーの1人である松田次生選手も、2005年まではホンダ陣営のドライバーだったが、2006年に日産陣営に移籍して、その後14年、15年と2度のSUPER GT/GT500チャンピオンに輝いている。松下選手がそんな松田選手に続いて日産のエースとして活躍できるか、ファンとしてはそこが今シーズン以降の見どころにもなりそうだ。
また、2020年シーズンに続きミハエル・クルム氏がエグゼクティブアドバイザー、柿元邦彦氏がニスモアンバサダーとして活動することも明らかにされた。
ニスモの片桐CEOは「2021年は空力開発は停止されており、開発の範囲は狭くなっているが、信頼性を向上させ、エンジン改良に取り組んでいる。さらにはタイヤ毎に詳細なチューニングを行なっていくなどして、バラエティに富んだサーキットで開催される今シーズンを戦って行きたい」と述べ、開発が凍結されている部分が多いが、それでもできる範囲で開発を行なって性能を引き上げていきたいと説明した。
SUPER GT/GT300
カーナンバー | チーム | 監督 | 車両名 | ドライバー | タイヤメーカー |
---|---|---|---|---|---|
10 | GAINER | 藤井一三 | GAINER TANAX with IMPUL GT-R | 星野一樹/石川京侍 | ダンロップ |
11 | GAINER | 藤井一三 | GAINER TANAX GT-R | 平中克幸/安田裕信 | ダンロップ |
56 | KONDO RACING | 近藤真彦 | リアライズ 日産自動車大学校 GT-R | 藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ | ヨコハマ |
SUPER GT/GT300の参戦体制は、上表のオフィシャルパートナーチームの3台(GAINER2台とKONDO RACING1台)は変わらず、ドライバーも2020年と同じ体制になっている。また、NILZZ Racing、RUNUPからのNISSAN GT-R NISMO GT3が参戦すると発表した。
その他のカテゴリー
そうしたフォーミュラEとSUPER GT以外の活動としては、スーパー耐久に参戦するカスタマーチームのサポート、LMP3(ル・マンのサポートレースやデイトナ24時間に参戦できるプロトタイプ車両)へカスタマーエンジンを供給したり、ミハエル・クルム氏が校長となり日産の契約ドライバーが講師となるドライビングスクール「NISMO DRIVING ACADEMY」も計画されており、4月中にニスモのWebサイトで今シーズンの概要が明らかにされると説明した。
なお、COVID-19の感染拡大などにより2020年は中止されてしまったニスモ・フェスティバルに関しては「もちろん状況が許せばだが、2021年は開催したい」と述べ、COVID-19の感染状況次第だが、開催できる方向で努力していきたいと述べた。
エンジンの運転性と燃費、タイヤへの合わせ込み、コースに合わせた戦略という3つの強化点で王者奪回を目指す
引き続き日産系チーム総監督となる松村基宏氏と各チームのチーム監督、ドライバーがスピーチを行なった。日産系チーム総監督の松村氏は「コロナ禍で大変だった中で応援していただいたファンの皆さま、スポンサーの皆さまに感謝したい。今シーズンはエンジンの運転性と燃費の改善、タイヤへの合わせ込み、ドライバーのコンビネーションやコースに合わせた戦略という3つの強化ポイントを軸にして、レースは勝つためにやるという会社の方針に則り遮二無二勝ちにこだわり全車一丸となって戦って行きたい」と述べた。
その後、各チームの監督がコメントを述べた後、GT500ドライバーがそれぞれ意気込みを語った。
平峰一貴選手(12号車 カルソニック IMPUL GT-R)
「2020年シーズンは移籍したばかりで勉強することが沢山あったが、いい意味で暴れることができた時もあった。2021年から松下選手と組むので、12号車を勢いがあるいういいイメージが見せられるように頑張っていきたい」
松下信治選手(12号車 カルソニック IMPUL GT-R)
「これまでフォーミュラにしか乗ったことがなくて、初めてのGT500となる。インパルは激しいチームのイメージもあるので、開幕からガンガン戦って行きたい」
高星明誠選手(24号車 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R)
「大樹君(佐々木選手)とは小学校からカートを一緒にやってきた。尊敬して追いかけてきた存在なのでそんな彼と組めてワクワクしている」
佐々木大樹選手(24号車 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R)
「3年間いい関係でやらせてもらったインパルで走れてよかった。その後でまたKONDO RACINGに戻ってきて、近藤監督と高星選手と一緒に走ることができて嬉しい。高星選手とは小学生から一緒で、この2人で優勝できるようにしていきたい」
平手晃平選手(3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R)
「日産陣営に移籍してきて3年目、千代選手とは2年目を迎える。昨シーズンは成績につなげることができなかったが、今年は2年目でお互いの良いところが分かってきたので形にしていける」
千代勝正選手(3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R)
「今年3号車のドライバーとして参戦できることが嬉しい。チームとして毎戦進化を遂げており、今シーズンは十分な準備をしてきているので、勝ちにこだわっていきたい」
松田次生選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)
「(2人の組み合わせが8シーズン目になったと司会に言われて)8年という歳月が経ったんだと。14年、15年と2連覇した後、毎年チャンピオン争いに絡んでいるが取れないということが続いており、しっかりやっていきたい。これまでにSUPER GTで22勝しており、今年勝てばゼッケンと同じ23になるので、まずはそこを目指していきたい(笑)」
ロニー・クインタレッリ選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)
「次生選手とは同じ歳だし、NISMOで8年目となる。初期にはいきなり連覇するなど良いシーズンを送れたが、その後なかなか取れない状況が続いている。今シーズンこそ、NISMO、ミシュランと一丸となってチャンピオンを奪回したい」
ファンが喜ぶさまざまなイベントが開催された
そうした体制発表の後には、ファン向けの各種イベントを実施。行なわれたのはニスモの大森ファクトリーのバーチャルツアー、みんなが選ぶ日産ヘリテージコレクション、GT-R vs Zというトークショー。さらに、予選を勝ち抜いた日産ファンとGT500ドライバーが参加する「NISSAN/NISMOクイズ王選手権」、Vs NISMOというGT500ドライバーによるお題を元にした対決だ。
大森ファクトリーのバーチャルツアーではNISMOの大森ファクトリーの内部が公開された。一般の顧客が入れるエントランスや市販車のメンテナンスガレージだけでなく、普段は公開されていないレーシングチームのメンテナンスガレージなども公開されたほか、ニスモチームのメカニックによるタイヤ交換の様子や、タイヤ交換を1秒でも早くできるようにトレーニングしている様子なども公開された。
日産のレーシングカー人気ベスト5は?
座間にある「日産ヘリテージコレクション」は、日産の市販車やレーシングカーの中で、歴史的に価値のある車両を集めており、一般のファンもWebサイトから申し込むことで見学することができる(現在はCOVID-19の感染拡大などの影響で一時受付中止となっている)。
その日産ヘリテージコレクションに保存されている日産のレーシングカーの中からファンの投票によるベスト5が選ばれ、そのランキングが発表された。
5位:MOTUL AUTECH Z(2006年 SUPER GT、Z33型)、NISMO GT-R LM(1995年ル・マン24時間レース、BCNR33型)、スカイライン スーパーシルエット(1982年グループ5仕様、KDR30型)
と、5位は同点で3台が選ばれたため計7台が発表された。なお、2位のカルソニック スカイラインなどは、日産グローバル本社ギャラリーにおいて2月13日~3月12日まで展示される予定になっている。同時にNISSAN GT-R NISMOなどのニスモ車両の試乗ができる試乗会も2月21日までの予定で行なわれているので、興味がある方はWebサイトから概要をチェックしていただきたい。