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ホンダ、2021年度第2四半期決算は売上収益6兆9882億円、営業利益4421億円で増収増益 ロックダウンの影響で通期4輪販売見通しを420万台に下方修正

2021年11月5日 開催

決算説明会に出席した本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役副社長 倉石誠司氏(左)と同社 取締役 執行役専務 竹内弘平氏(右)

 本田技研工業は11月5日、2021年度第2四半期(2021年4月1日~9月30日)の決算説明会をYouTube LIVEでオンライン配信した。

 第2四半期の連結売上収益は6兆9882億円(前年同期比1兆2130億円増)、営業利益は4421億円(同2729億円増)、税引前利益は5603億円(同2881億円増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3892億円(同2291億円増)となった。また、グループ販売台数は、4輪車が191万5000台(同6.4%減)、2輪車が817万3000台(同29.3%増)、ライフクリエーション事業が323万台(同31.7%増)という結果になっている。

 説明会の冒頭では、本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 倉石誠司氏が決算説明に先立ってあいさつを実施。「最初に、ホンダをご愛顧くださる世界中のお客さま、そして私たちの取り組みを支えてくださるすべてのステークホルダーの皆さまに深く感謝を申し上げます。現在、車両の生産遅れにより、ホンダの製品を心待ちにしてくださっているお客さまにご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」と頭を下げた。

説明会は、車両生産が遅れていることについて倉石氏が謝罪してスタート

 具体的には、半導体を含めた部品供給の不足、アジアを中心とした新型コロナウイルスの感染再拡大によるロックダウンなどの複合的な影響による生産の落ち込みは、8月に行なった第1四半期決算の発表時に公開した見通しを上まわるものになっており、第2四半期の3か月での4輪車販売台数は91万7000台となった。

 部品不足については同等品への切り替えなど、半導体も含めたデュアルソース化などにも取り組んでおり、年明け以降には挽回生産が進むと予測しているが、アジアにおけるロックダウンの長期化による直近の生産状況を踏まえ、2021年度通期の4輪車販売台数の見通しを、前回発表の485万台から420万台に下方修正した。

2020年からの販売台数の推移。通期のグループ販売台数を420万台に下方修正した

 市場別の4輪車販売では、日本の全体需要は6か月累計では前年同期をわずかに上まわっているものの、第2四半期の3か月では半導体の供給不足の影響を大きく受けて減少。ホンダでは新型「ヴェゼル」などが好調で、「N-BOX」が2021年度上半期の軽自動車販売で1位になっているが、全体では前年同期を下まわる結果となった。

 米国では政府による経済刺激策などの効果で需要が回復。しかし、日本と同様に車両供給が逼迫して第2四半期の3か月では前年同期から販売数が下がっている。ホンダではライトトラック系が好調で市場の伸び以上の販売を記録。中でも「パスポート」は月間販売台数が7か月連続で記録更新となっており、9月には過去最高の販売台数となっている。

 中国でも政府による経済刺激策が行なわれて需要は回復しているが、全体需要は低下。ホンダでは「XR-V」などが好調を得たものの、第2四半期の3か月の販売が前年同期を下まわる結果になっている。今後は電動化ラインアップの拡充を続けていく予定で、10月には「中国電動化戦略発表会」を開催し、中国におけるホンダ初のBEV(電気自動車)「e:N」シリーズを公開した。また、全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」を2022年から中国で適用を開始する。

2021年度第2四半期における事業別の販売台数
日本市場の4輪車販売状況
米国市場の4輪車販売状況
中国市場の4輪車販売状況

 2輪車販売は多くの国で需要が回復しているが、第2四半期は新型コロナウイルスの感染再拡大の影響でベトナム、タイの販売が前年同期を下まわった。通年でも一部の国で新型コロナウイルスの感染が再拡大する懸念は残るものの、需要は堅調に推移し、インドやインドネシアを中心に販売が伸長すると予測。通期の販売見通しを上方修正している。

 決算の総括としては、半導体を含む部品不足や原材料価格が高騰している影響を受けているが、コロナ禍で大きく影響の出た前年同期から販売が増加。さらにコストダウンの効果や為替レートなどの影響によって営業利益が大きく増加して、四半期利益も持分法による投資利益の増加で倍増以上の結果となっている。

 2021年度通期の業績見通しでも、新型コロナウイルスや半導体不足、原材料価格の高騰といった外部環境の厳しさは続いていくものの、販売費や一般管理費の抑制、コストダウンなどによる収益力の改善を続け、前年度と同等の6600億円の営業利益を計画している。

2輪車の販売状況
2021年度第2四半期の決算総括
2021年度通期の業績見通し
配当金は変更なし。配当は連結配当性向30%を目安として安定的、継続的に利益還元していく

3か月で見た決算は減収減益

決算内容と通期見通しの詳細を解説する竹内氏

 倉石氏の説明に続き、本田技研工業 取締役 執行役専務 竹内弘平氏が決算内容と通期見通しの詳細を解説。

 2021年度第2四半期3か月の販売は、4輪車は中国、米国などの減少で前年同期から26.8%減、2輪車はベトナム、タイなどの減少で同3.9%減、ライフクリエーション事業は米国などの増加で同11.1%増となった。また、売上収益は4輪事業の減少などにより同6.8%減、営業利益は構成差に伴う利益減などにより29.7%減、持分法による投資利益は中国における利益減などにより17.6%減、四半期利益は税引前利益の減少などにより30.8%減で、3か月で見た決算は減収減益となっている。

 営業利益の増減要因では、為替変動で367億円、販売費と一般管理費で168億円の増益要因となったが、販売台数の減少などによる1141億円の減益要因をカバーしきれず、前年同期から839億円の減益となっている、

 また、第2四半期6か月における営業利益の増減要因では、市場の回復による販売台数増などで1932億円、為替の変動で809億円、コストダウンの効果などで130億円などの増益要因により、前年同期から2729億円の増益となった。

2021年度第2四半期3か月の決算総括
第2四半期3か月における営業利益の増減要因
第2四半期6か月における営業利益の増減要因

 2021年度の見通しでは、販売見通しで4輪車販売は65万台減の420万台、2輪車販売は10万台増の1750万台、ライフクリエーション事業は20万台減の610万台にそれぞれ計画を修正。これを受けて通期決算全体の見通しも修正し、全体的に数字を下方修正している。しかし、設備投資や研究開発支出については前回見通しから変更なしとした。

販売台数の通期見通しを修正
通期業績見通しの数値も修正した
対前年比で見た営業利益の増減要因
前回発表した通期見通しに対する営業利益の増減要因
設備投資や研究開発支出は変更なし

質疑応答

質疑応答で回答する倉石氏

 後半に行なわれた質疑応答では、減産の影響が地域別に出ているかについて質問され、倉石氏は「新型コロナウイルスの感染拡大、港湾の混雑、半導体不足、アジアのロックダウンによる部品不足など、さまざまな影響がサプライチェーンに出ているのが現状です。特にアジアのロックダウンは当初の想定より影響が長引いており、見通しが厳しい状況ではありますが、引き続いて取り組みを進めております。在庫のアロケーションや各地域での生産検討を週単位で見直しながら整合を図っており、足下では課題となる半導体を特定し、日々供給量のモニタリングを行ないつつ、不足が出た場合はグローバル横断での生産調整を行なっております」。

「基本的には地域のバランスを見ながら半導体のアロケーションを行なっておりますが、半導体にもいろいろな種類がありまして、部品によって『あるもの』『ないもの』の差が出ております。一概には言えませんが、われわれは販売計画に則ってアロケーションをしているものの、車種の状況なども異なりますので、結果的に地域で差が出ている状況になっています。基本的には今後も週単位で販売状況などを見ながらアロケーションを続けていくことになります」と回答した。

 また、中国では半導体不足や原材料高騰に加え、電力需給が不安定になっているが、これがリスクになるかについての質問では、倉石氏が「今のところ、われわれの中国における合弁2社に対する電力不足による影響は、サプライヤーを含めて出ておりません。今後も状況を注視しながら対応していく考えですが、現在は広汽本田、東風本田共に地域の重要な生産拠点であり、彼らもそのあたりを重視して見ていただいているところもありますので、地方政府と情勢を見ながら今後の対応を図っていきたいと考えています」としている。

質疑応答で回答する竹内氏

 半導体不足などで車両生産が増やせない状況になっているが、これが販売奨励金の抑制につながって業績に影響を与えているかと問われ、竹内氏は「販売奨励金は、販売台数が多いこともあって北米で一番使っております。今は半導体や部品供給の不足などの影響で車両生産が少なくなっていて、ディーラーさんにある在庫がほとんど枯渇状態になっています。それもありまして、今までディーラーさんで出していたインセンティブが減額になっており、台数影響から販売奨励金の部分がプラスに転じております。例えば北米では、1台あたり20万円ほどの奨励金を金融のアシストも含めて使っていましたが、今期は半分よりちょっと上ぐらいの額に抑えられていて、その影響が今回の台数減を、すべては補いきれませんがプラス要因として収益に効いているという状況です」と回答した。

 4輪車事業の利益率は2.6%となっており、以前より上がってはいるものの他事業と比べて低い数字で、この部分に対する考えを質問され、竹内氏は「おっしゃるとおり、4輪事業はわれわれにとって会社全体の課題と捉えて、数年前から4輪事業の収益性改善に全社を挙げて取り組んでおります。その中で、4輪車の生産台数の適正化として、イギリス、トルコをはじめ世界各地で適正化に見合う固定費の圧縮を心がけています。これはコロナ禍においても順調に進んでおり、イギリスも生産が終わって、いろいろ進めているところです」。

「あとは組織改革で、研究開発の効率化としてこれまで研究所(本田技術研究所)にあった4輪の開発部隊を本田技研の方に動かし、組織の融合を図りながらよりよい効率で、お客さまに廉価でよいものをお届けできるような開発体制を取ってきました。この効果が着実に出てきていると感じております。ただ、開花するまでには数年かかりますので、数年後には4輪の収益が確固たるものになります」。

「ただ、電動化についてどう取り組むかは電動化施策の中でお話しできればと思います。私の感触では、4輪の既存事業における効率化、利益の向上は施策どおりに進められていると思っています」。

「また、先ほども出た、在庫が少なくなってインセンティブが減り、その分で利益が向上するという点はそのとおりです。ただ、今後に在庫が戻ってきたらインセンティブを復活させるかという点は、ここは競争関係で一概に否定できない部分ではありますが、せっかくその体質を作り上げたところをどうやって維持していくか、少ないインセンティブでお客さまに満足していただける商品をお届けできるようなことを、今後も検討しながら進めてまいります。在庫が増えたからといってインセンティブも元に戻ることはしないようにしたいと思います」との考えを示した。

ホンダ 2021年度 第2四半期 決算説明会(1時間23分5秒)