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三菱ふそう、イケア・ジャパンの「eCanter」運用事例など紹介する「サステナブル・モビリティ・フォーラム」レポート

2021年11月15日 開催

横浜市のIKEA港北で使用されるeCanter

 三菱ふそうトラック・バスは11月15日、同社本社において報道関係者向けにBEV小型トラック「eCanter」の運用事例を紹介する「サステナブル・モビリティ・フォーラム」を開催した。

 2017年の日本市場での販売開始から4年が経過し、グローバルで約300台が稼働していることも発表され、今回は国内で運用を開始したイケア・ジャパンと、欧州などで運用するDBシェンカーの担当者から運用事例が発表された。

「サステナブル・モビリティ・フォーラム」を開催

CO2削減効果は2030年に対ディーゼル車で56%

「eCanter」は2017年に日本での販売を開始したのちに世界各地でも販売を開始し、これまで国内で70台、欧州では13カ国で190台以上が稼働している。ダイムラートラックでは2039年に欧州、北米、日本の主要3市場ですべての新型車をカーボンニュートラルにするという目標を掲げ、欧州では大型バスの「eシターロ」、大型トラックの「eアクトロス」という電気自動車を発売しており、CO2ニュートラルに向けた取り組みを進めている。

三菱ふそうトラック・バス株式会社 チーフ・トランスフォーメーション・オフィサーのアレクサンダー・ルージング氏

 三菱ふそう チーフ・トランスフォーメーション・オフィサーのアレクサンダー・ルージング氏はeCanter導入にあたっての環境への効果を説明した。まず、CO2削減効果について2020年の段階でディーゼルに比べて44%、ハイブリッドと比べて33%あるとし、2030年に再生可能なエネルギーが発電量の23%を占めることを想定すればディーゼルに対して56%の削減も可能になると説明した。

 また、三菱ふそうの提供するeモビリティ・ソリューションにも触れ、車両の提供はもちろんのこと、ファイナンスのサービスからチャージのインフラまで提供する方針であるとし、走行したぶんだけ支払うTaas(トラック・アズ・ア・サービス)の提供や、充電インフラの提供、さらに将来は再生可能エネルギーを使いたいという顧客のために提供もしなくてはならないとした。

電気トラックの導入には政府の助成金が重要

 続いて、三菱ふそうトラック・ヨーロッパ 特販部のフランク・ローデ氏がビデオで参加し、パリ協定があり欧州では2030年に30%削減が求められていることを示しながら、乗用車ではBEVの売上が伸びているのにも関わらずトラック業界はまだ進んでいないことを指摘した。

三菱ふそう トラック・ヨーロッパ特販部 フランク・ローデ氏

 2018年に欧州に導入したeCanterは、欧州では今回登壇したDBシェンカーやハイネケンなどが利用しており、日本国内でも日常的に都心での配送などで運用し、実力を発揮しているとした。

 一方、eモビリティには従来の車両に比べて価格差があることも指摘。ここで政府の助成金が重要な役割となり、導入の後押しをすることになるとした。DBシェンカーは最大の顧客で41台のeCanterを運用しているが、顧客とのコンサルで重要なのはトラックの積載量や充電インフラなどのほか、利用できる助成金を確認することとし、例えばドイツではディーゼル車との価格差の80%を助成する制度があることも紹介された。

 さらにeCanterについては、ディーゼル車にくらべて扱いやすいことを指摘し、運用する企業ではベストなドライバーをeCanterに乗せているなどの事例を紹介した。運用におけるフィードバックから、次世代の車両にはバッテリの持ちや性能でディーゼル車と同じことができるようにし、短い時間で充電できることも含めて検討しているとした。

欧州各地で41台を運用するDBシェンカー

 実際にeCanterを運用する企業からは、ドイツに本社を置く物流企業であるDBシェンカーからヴァイスプレジデントのシリル・ボンジェーン氏がオンラインで参加。まず、eCanterを運用するなかで2025年にはサスティナブルリーダーになる道を進んでいることを強調した。

DBシェンカー ヴァイスプレジデント シリル・ボンジェーン氏

 eCanterの運用はDBシェンカーの欧州で41台。ノルウェー、フランス、ドイツの各8台をはじめ北欧といった寒い地域から南部にあるスペインやイタリアまで計11の国で運用している。使用方法は主にラストマイルやシティセンターで使っている。DBシェンカーではBEVの数を増やすという野心があると強調した。

 また、ディーゼル車に比べてBEVの価格が高いという導入コストについては、たくさんの学習効果があったよい投資だったと説明。現在のところ、保有台数全体の3万台のうちの41台と少なく、導入費がサービスの価格に影響がないとしながらも、完全に電動化した場合には電動車の価格も下がり、最終的には顧客負担に反映されるとした。

都内の店舗間輸送や、顧客向け配送で利用。騒音のない走行は住宅地に適している

 次に、国内のeCanter運用者からはイケア・ジャパン カントリー サスティナビリティ マネージャーのマティアス・フレドリクソン氏が登壇。イケア・ジャパンでは2台のeCanterを導入しており、1台はイケアが直接使用し、東京の都市型店舗間の配送に使っている。そしてもう1台は提携輸送業者が使用し、顧客向けの配送で使っている。

イケア・ジャパン カントリー サスティナビリティ マネージャー マティアス・フレドリクソン氏

 イケア・ジャパンでは2025年までに顧客向け配送サービスにおいて「BEVやその他のゼロエミッションの車両による配送達成率100%を目指す」とし、BEVの導入は必要な投資だと強調した。

 実際に運転するドライバーからの感想は非常にポジティブなもので、振動やノイズがディーゼル車と比べて減るとともに、騒音が少ないため、住宅地での配送にも適しているとした。eCanter導入にあたってドライバー向けにトレーニングした点は、静寂性や走り出しなどディーゼル車と違う点を教え、さらに走行可能距離と充電スポットの場所などを認識することだという。

 また、メンテナンスコストについても、オイル交換などの従来のエンジンでは必要だったメンテナンスにかかるところがなく、ディーゼルより30%低く、オペレーションの面でも利点があるとした。今後、オンラインで購入する顧客が増えることが見込まれ、ドライバーのストレス軽減と騒音の面で住宅地で有利なため、さらにeCanterが必要になってくるとまとめた。

質疑応答で並ぶ登壇者。左から三菱ふそう チーフ・トランスフォーメーション・オフィサーのアレクサンダー・ルージング氏、イケア・ジャパン カントリー サスティナビリティ マネージャー マティアス・フレドリクソン氏、イケア・ジャパン カスタマーフルフィルメント部カントリー サービス フルフィルメントオペレーションマネージャー 大久保竜介氏、オンライン参加のDBシェンカー ヴァイスプレジデント シリル・ボンジェーン氏