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GM、米国を代表する新EV工場「ファクトリー・ゼロ」をグランドオープン バイデン大統領も登場

2021年11月17日(現地時間) 発表

ファクトリー・ゼロのグランドオープンセレモニーにはバイデン大統領も足を運んだ

共通のバッテリープラットフォームを使用し生産効率を向上

 GM(ゼネラルモーターズ)は11月17日(現地時間)、改修を終えたEV(電気自動車)組立工場「ファクトリー・ゼロ」にジョー・バイデン大統領のほか、UAW(全米自動車労働組合)とUAW第22支部の幹部、工場の従業員、その他関係者を招き、グランドオープンセレモニーを開催した。

 これにより、GMがデトロイトのハムトラミック工場に22億ドルの巨額投資をして全面改修し、さまざまな全電動ピックアップ・トラックやSUVを製造すると発表してから2年足らずで、ファクトリー・ゼロでの生産が開始されることになる。ファクトリー・ゼロでは、ピックアップ・トラックの2022年型「ハマーEV(GMC HUMMER EV)」、2024年型「ハマーEV SUV(GMC HUMMER EV SUV)」に加え、「シボレー シルバラードEV」「クルーズ オリジン」のほか、未発表のEVの生産を予定。フル稼働時には、2200人以上の雇用を創出する見込みとしている。

 ファクトリー・ゼロで製造されるすべてのEVは、共通の車両アーキテクチャに加え、バッテリーセル、モジュール、パック、ドライブユニット、EVモーター、統合パワーエレクトロニクスといった推進コンポーネントが含まれ、EV生産工場の基盤となり、GMのEV商品戦略の中心である「アルティウム」バッテリープラットフォームをベースに生産されるという。プラットフォームの1本化により、機械、工具、組立工程の共通化と合理化を図ることで、車両組立工場のネットワーク全体でバリューチェーンの戦略的シフトを実現させるとしている。

 GMの会長兼CEO メアリー・バーラ氏は「GMの米国における製造専門技術こそ、私たちが全車電動化の未来を実現する鍵となります。今日はGMチーム全体にとって記念すべき1日です。私たちはお客さまにとって最高品質のEVを製造するために、世界で最も優れた最先端の技術を駆使してファクトリー・ゼロを改修し、完成させました」と述べている。

ICE車と同じ労働時間でEVを生産することが可能なスタッフ

 GMは更地に新工場を建設する費用の3分の2で、ファクトリー・ゼロをEV専用工場へと改修したが、これは今後、GMが工場を改修する際のモデルとなるという。GMは既存の工場を改修することで、2030年までにコストを大幅に削減し、顧客に対応した商品やサービス、技術に対して、より戦略的に再投資するとしている。また、資金面でのメリットに加えて、GMのEVへの移行期間中に既存の生産工場ネットワークを刷新するGMの取り組みは、時間の短縮にも貢献。立ち上げと生産開始を早めることで、新しく革新的なEVをより短い期間で顧客に届けることが可能になるとのこと。

 なお、ピックアップ・トラックの2022年型ハマーEVは、今秋にファクトリー・ゼロで試作車両の製造が開始され、「ハマーEV(GMC HUMMER EV)」の生産第1号車は、年内に納車される予定という。

 GM グローバル・マニュファクチャリング・サステナビリティ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのジェラルド・ジョンソン氏は「私たちのEVへの野心的な移行を実現するため、北米におけるEV生産能力は2025年までに20%、2030年までには50%に達する見込みです。ファクトリー・ゼロは、今後世界中の工場で実施されるEV工場へのシフトのモデルになるでしょう」とコメントしている。

 このファクトリー・ゼロを支えているのは、GMのグローバル製造部門で自動車産業の問題解決に当たってきた9万人以上のチームスタッフで、経験年数は合わせて140万年にも及ぶという。また、年平均11件も内燃エンジン(ICE)車とEVの両方に携わってきた経験値で、ICE車と同じ労働時間でEVを生産することが可能だとしている。

 前出のジェラルド・ジョンソン氏は、「人材こそがGMの真の優位性であり、これは買うことも、素早く構築することもできない強みです。ファクトリー・ゼロでは、ユニットあたりのコストを抑えながら、EVとAV(電動自律走行車)のローンチを安全、高品質、迅速に成功させるためのトレーニングを行ない、経験を積み重ねていきます」と述べている。

 ファクトリー・ゼロは、旧工場の床の破砕コンクリートを工場周辺の仮設道路で再利用するなど、工場の改修で発生したほぼすべての資材をリユースまたはリサイクルを実施。また、雨水をリサイクルすることで排水コストを削減し、飲料水コストを相殺。雨水を処理し、冷却塔や工場の消火システムに活用。工場内にはDTEエナジー製のソーラーカーポート(30kW)と地上設置型ソーラーパネル(516kW)を設置。さらに、敷地内にはオオカバマダラ、キツネ、シチメンチョウの住処となる約16.5エーカーの野生生物生息地を確保するなど、GMはファクトリー・ゼロを通じて、製造業のリーダーとしての手腕と、全車電動化の未来への移行に伴うモビリティの根本的な変化への対応力を示しているという。