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マツダ「MX-30 SeDV」説明会 手動運転装置付き車両に込めた開発陣の想いとは

2021年12月9日 受注開始

マツダ株式会社 国内営業本部主幹 松山雅昭氏(左)、商品本部主査 前田多朗氏(右)

自分の意思で移動する自由をすべての人に届けたい

 マツダは、12月9日より受注を開始する手動運転装置付きの「MX-30 SeDV(Self-empowerment Driving Vehicle=セルフ エンパワーメント ドライビング ビークル)」のオンライン説明会を実施した。登壇したのは国内営業本部主幹の松山雅昭氏と、商品本部主査の前田多朗氏の2名。なお、MX-30 SeDVの発売は2022年1月以降の予定となっている。

 冒頭に前田氏は、「マツダはカーライフを通じて、ユーザーに人生の輝きをお届けしたい」という企業で掲げているメッセージを紹介。あわせて「少しでも自分の目で見て、触れて、体験することの楽しさをユーザーに感じてもらいたく、クルマと過ごす時間を通してそれをお手伝いしたいと考えている」とあいさつ。

 続けてMX-30は“私らしく生きる”をテーマに開発した車両で、どんな人でも自分の意志で行動、移動をしたい人に寄り添って、その思いを実現してもらいたいと願いを込めた車両であることから、今回の手動運転装置付きを「MX-30 SeDV(Self-empowerment Driving Vehicle」と名付けたと解説。また、エンジンスタート時に、手による運転操作と従来の足による操作を選ぶことができるようにし、「誰もが走る喜びを共有できるうえ、安心・安全に、自由に移動することを支える土台になる」とMX-30 SeDVの懐の広さをアピールした。

 前田氏は続けて、足の不自由人が自分の意志で移動する際、共通性の高い困りごととして「運転に関すること」「クルマへの移乗」「車いすの積み込み」の3点があるとし、今回そこにマツダらしいアプローチでサポートしていることを強調。

 運転については妥協せずに開発に注力したとし、目指したのは「意のままに操れて気持ちいい、また運転したい、また出かけたい」と思ってもらえることで、そのためにいかに操作がしやすく、リラックスでき、素早く慣れられるかを考えたという。

 マツダは「両手が塞がらないことで自然な姿勢で運転ができ、運転中の自由度も増して、長時間のドライブも苦にならない」とアクセルリング式を採用。両手でステアリングを握るため操作性が向上し、一部体幹の弱い人でも上半身の姿勢保持がしやすいというメリットもあるという。

 また、アクセルリングは押し込むことで加速するタイプとなっているが、交差点の右左折や立体駐車場のスロープなど「ステアリングの持ち替え」と「アクセルの押し直し」が同時に発生するシーンにおいては、一定速度を維持する必要があり、押し込み量が瞬時に分かるようにする必要があったという。

 そこで、アクセルリングの反力にあえて段差=変曲点(ゼロGポイント)を設け、定速を維持できる押し込み量と加速が始まる押し込み量を分かりやすくし、ギクシャク感のないアクセル操作を実現させたとしている。また、押す場所によって操作感が変わらないように、リングにはしっかりとした剛性を持たせ、たわみをなくすことで操作感をつかみやすくしているという。

アクセルリング(直感コントロール機能付き)の詳細

 手動運転とペダルによる通常の切り替えは、イグニッションオン時にレバーブレーキか、フットブレーキか、どちらを踏んでいるかで切り替えることが可能で、操作ミスによる事故を防ぐために、アクセルリングとアクセルペダルが両方操作できる状態にはならないように設計し、安全性も確保している。これにより足の不自由な人しか運転できない専用車とはならず、家族や友達とも一緒に同じクルマで運転を変わりながらドライブを楽しめる仕様としている。

 ブレーキ機能については、安全確保の肝になる部分であることから、緊急時など瞬時にしっかりとブレーキをかけられることと、通常時は細やかな操作を実現させるこを目指したという。装着位置にもこだわり、シートスライドをさまたげず、ステアリングのチルトとテレスコピック機能により、適切な運転姿勢を確保できるようにしたとしている。操作面でも肘を置くサポートボードを設け、肘を支点にすることで細やかな操作と力の入れやすさを両立させたという。

手動運転とペダルによる運転を選択可能
レバーブレーキとブレーキサポートボード

 クルマへの乗り降りについては、一般的にボード式、回転式、リフトアップ式などがあるが、両腕がある程度動かせることを前提に、もっとも素早く乗り降りができると考え、ボード式を開発したという。

 特徴は「形状」と「折り畳み方」の2つ。下肢に不自由のある人の乗り降りの動きをじっくりと観察し、必要なところを残し、不要なところは削りとり、理想的な三角形を完成させることでスムーズな乗り降りを実現。また、運転中はサイドエアバッグに干渉しない位置に収納できるような折り畳み構造を開発したという。

 車いすの積み込みに関しては、MX-30の観音開き形状のフリースタイルドアが有効だとし、前田氏は「開口部の広さを活かし、お腹の上を通して助手席に収納することも、振り返って運転席の後ろに収納することも可能です」と選択肢の多さを紹介した。

移乗ボードについて
車いすの積み込みについて

マツダの手動運転装置付車「MX-30 SeDV」を「国際福祉機器展 H.C.R.2021」で体験してきました

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1367260.html

オンライン商談を活用することで個々の要望に応える

 続いて、国内営業本部主幹の松山氏よりパーソナライズへの対応についての説明が行なわれた。

 マツダはMX-30 SeDVの販売について、「ユーザー個々の困りごとにいかに寄り添うか?」と「実車確認と専門知識」といった2つの課題があると考え対応を模索。体に不自由を持っている人といっても年齢やその部位、レベルもさまざまで、クルマに求める要望も千差万別。また、実車の確認をはじめ、補助用品やパーソナル対応の知識、減税・助成金の知識など、その分野に専門的な知識を持ったスタッフをいかに立ち会わせるかが壁となっていた。

 そこでマツダでは、オンライン商談の活用を確立。事前にユーザーと商談日時を決めておき、居住エリアの減税や助成金の情報を予め準備しておき、当日はMX-30 SeDVに詳しいスタッフ、さらに福祉車両事業を営むミクニライフ&オートのスタッフもオンライン上で同席して、実車を使って説明することはもちろん、個々の要望にも対応しながら適切な装備を提案できるようにしたという。

 松山氏は「MX-30 SeDVは体の不自由な人だけでなく、自分の意志で行動しようとする人を支援する解決策の1つとして位置づけているので、マツダでは福祉車両とは呼びませんが、福祉車両としてさまざまな減税や助成金といった支援がある」と解説。価格も減税などで引かれた分と同等くらいに設定し、ユーザーの負担をできる限り少なくできるようにしたとしている。

パーソナライズ対応について
オンライン商談について
価格について
税金の免税と各種支援について

 この「MX-30 Self-empowerment Driving Vehicle(SeDV)」は、11月10日~12日に開催された「国際福祉機器展 H.C.R.2021」に展示し、多くのユーザーが実際に触れて確認していたという。

国際福祉機器展(H.C.R.)2021 ダイジェスト映像(2分30秒)