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スバル、2022年のニュルブルクリンク24時間レース参戦マシンを富士スピードウェイで公開
2021年12月10日 17:23
- 2021年12月8日 実施
12月8日、スバルとSTI(スバルテクニカインターナショナル)は富士スピードウェイ(静岡県)にて来年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦するマシンのシェイクダウンを行ない、その模様を報道関係者に公開した。
2020年、そして今年とコロナ感染症の影響を考慮し2年にわたり出場を断念したスバル/STIだが、その間もマシン開発は精力的に継続しており、今回公開されたマシンは随所に新しい試みを取り入れた最新のマシンであった。
会場ではスバルテクニカインターナショナル代表取締役社長 平岡泰雄氏、総監督 辰己英治氏、監督 沢田拓也氏、チーフレースエンジニア 宮沢竜太氏、チーフエンジンエンジニア 大塚達也氏が紹介され、総監督を務める辰己英治氏が集まったスポンサー企業や関係者、報道陣に向け「2年間ニュルブルクリンクに出場できなかったことで(マシンの進化が)停滞していたわけではございません。われわれは2019年に優勝させていただいて、2020年も2021年もスバルの性能を確かめたいと思いやってきました。そして、また来年を目指してやっておりますので、今日は1日じっくりとマシンを見ていただきたいと思います」とあいさつを行ない公開シェイクダウンがスタートした。
まずは今回公開されたマシンについてお伝えする。スペックの詳細、ドライバーラインナップは年明けの東京オートサロン2022での発表を目指しているとのことだが、今回説明があった範囲でもその変更点は多岐にわたる。
まずはタイヤサイズの変更だ。これまで使用してきた260mmから280mmへと変更した。実はこの変更に伴い車両重量や燃料タンク容量などのレギュレーションも変更されるが、スバル/STIは将来を見据えた先行開発として20mmアップに踏み切ったそうだ。この1年で日本各地のサーキットでの耐久テストをはじめドライ、ウエットでの最適なコンパウンドを開発し、最適な空気圧の適正値を模索するなど走行データやドライバーからのインプレッションを反映させ最適な組み合わせにたどり着いたという。
また、ホイール形状の最適化も行ない、タイヤ幅の変更と合わせ接地性の向上を果たしたとのこと。
これらの取り組みはSTIにとって量産車開発に向けたデータが多く得られたとのことだ。なお2022年に向けたマシン開発には井口卓人選手、山内英輝選手のほか、佐々木孝太選手らも開発に携わっている。今回のシェイクダウンでは佐々木孝太選手、井口卓人選手が走行を担当。もちろん山内選手も会場にはいたが、今回は同時に行なわれたSUPER GTのマシンの走行に専念していたようだ。
話をニュルブルクリンクへの参戦マシンに戻そう。タイヤサイズのほかで目につく変更点といえば電動パワーステアリングの採用だ。こちらも将来を見据えた先行開発という側面もあるとのことだが、従来の油圧式の課題であった悪路でのキックバックの大きさ、常時駆動での出力損失を克服しレーシングカーとしての信頼性を向上させたとのこと。また、パワーステアリングの特性をドライバーの好みに合わせ複数の設定ができるなどのメリットもあるとのことだ。
ほかにもタイヤサイズの変更に伴い、最低重量が今までより80kg増加し1300kgになったことへの対応として、主に上下曲げ剛性を向上しながらねじれ剛性を上げすぎないような補剛を行ない、また重心下の補剛で9mmの低重心化を果たしているという。
長丁場の耐久レースにおいてタイヤ幅の拡幅、重量増加と燃費悪化の要素はあるものの、これらの変更により総合性能は向上しており、ドライバーからも重量増を感じさせない走りとの評価を得ているそうだ。
2014年以来、久しぶりのNBRマシンの感触を佐々木選手は「僕が乗っていたころより、全てがかなり攻めたマシンに仕上がっている印象です。それでいて安心感も増しているので、ドライバーとしても攻めることができるんです。動きの安定感、ブレーキの効きなど、どれをとっても進化の度合いがすごい」とそのレベルアップぶりを語ってくれた。
燃料に関してはレギュレーションにより、今までよりタンクの容量が10L増えているのはピットストップ回数を減らすためには有効だが、一方で給油時間の短縮のために給油タンクの形状を見直しているとのことだ。
ちょっと写真で見る2022年参戦マシン
今年春に発表された2020年仕様は実戦で走行せず終わったものの、新しいマシン開発に取り組んだ背景を辰己総監督は「われわれは、常に新しいことをやっていこうと考えている」と語る。それはニュルブルクリンク24時間レースがスバル/STIが先行技術開発確認の場であることと同時に、人材育成の場であることの証でもある。どちらもレースがなくても途切れさせてはいけないのだ。
チームスタッフは、この2年間チェッカーフラッグを受けることができないどころか、ドイツに発送したパーツのコンテナが、手付かずのままの姿で日本に戻ってた寂しさを感じたという。そのような状態でも2022年に向けたシェイクダウンを行なう日が来たのはこのマシンに関わるファンやスポンサー、そしてこのマシンに関わる全ての人のおかげだと語る。
2022年へ向けた新しいマシンにはチェッカーフラッグをモチーフにしたデザインが施されている。このデザインは今年こそトップでチェッカーをとの想いの表れでもある。走ることのできなかったこの2年間もマシンを進化し続けた辰己氏は「高い目標を設定して、優勝してみなさんと喜びを分かち合いたい」と語りピットに向かった。