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ジープ、3列シート仕様の新型フラグシップSUV「グランドチェロキーL」発表会。「ミニバンオーナーにも魅力的な選択肢になる」とヘグストロム社長
2021年12月13日 17:57
- 2021年12月13日 開催
ジープ(FCAジャパン)は12月13日、新型フラグシップSUV「グランドチェロキーL」のオンライン発表会を開催し、YouTubeのJeep Japan公式チャンネルで公開した。
グランドチェロキーは初代モデルが1992年に登場したジープブランドの伝統を受け継ぐラグジュアリーSUV。10年ぶりのフルモデルチェンジで4代目となった新型では、3列シートを備えてグランドチェロキーLの車名を採用。グランドチェロキーLのラインアップは788万円のリミテッド、999万円のサミット リザーブの2グレード構成となる。また、2列シートのPHEV(プラグインハイブリッド)モデル「グランドチェロキー 4xe」の登場も予告されている。
このほか、グランドチェロキーLの詳細については関連記事「ジープ、『グランドチェロキー』フルモデルチェンジ 初の3列シート仕様で788万円から」を参照していただきたい。
歴代グランドチェロキーに新たな1ページを刻むモデル
オンライン発表会ではFCAジャパン 代表取締役社長 ポンタス・ヘグストロム氏に加え、グランドチェロキーLの開発に携わった本社開発陣も登場。“野心的な3列シートモデル”を実現するために採用した新設計プラットフォームやクラフトマンシップ、最新の安全技術などについて解説した。
最初に登壇したヘグストロム氏は、2021年はグランドチェロキーが誕生して30年という節目の年であり、グランドチェロキーは世界中で賞賛を集め、日本市場でも輸入SUVとして最も成功したモデルだと前置き。新たに発売するグランドチェロキーLは、クラシカルな外観を持ちながらもまったく新しい発想で開発が行なわれ、先進的な安全装備やインフォテイメントシステムなどをプレミアムなルックスを持つボディに搭載していると紹介し、なによりモデル名にロングを意味するLを冠しているように、ロングボディに3列シートを備えるモデルとして生まれ変わったと概要を説明した。
また、販売面ではジープブランドの販売台数は12年にわたって右肩上がりを続けており、グランドチェロキーも10年間で累計約1万5000台を販売して躍進に貢献。2014年~2020年の期間にEセグメント輸入SUVのシェアで約27%を占めるモデルとなっており、同期間に年間販売台数で3回トップになったと解説。
さらに、グランドチェロキーは30年の歴史において全世界で累計700万台を販売しているモデルだが、新たに誕生したグランドチェロキーLは「歴代のグランドチェロキーの中でも間違いなく新たな1ページを刻むモデルとなることでしょう」と自信を見せ、「地球上のどこへでも連れて行ってくれるのが新型グランドチェロキーLなのです」とその魅力について語った。
相反要素を高度なバランスで両立させた「二重人格のようなクルマ」
グランドチェロキーL誕生の意義については、ジープブランド グローバル・プレジデントのクリスチャン・ムニエ氏からも解説を実施。
ムニエ氏はブランドのアイコン的存在であるモデルを作り直すことは、デザイン的にもエンジニアリング的にも冒険だったが、グランドチェロキーLはこれを乗り越え、よりモダンで、より革新的で、よりエキサイティングな1台に生まれ変わったと表現。グランドチェロキーらしさを損なうことなく、新しいテクノロジーと斬新なデザインによって未来を志向するクルマになったとした。
また、パフォーマンスとデザインという両面でこれまでの基準を塗り替えるモデルとなっており、シンプルでありながら非常に洗練されたデザインを持っていることに加え、高い悪路走破性や渡河性能を持つ一方で卓越したオンロード性能を備えるグランドチェロキーLを「ある意味で二重人格のようなもの」と表現し、相反する要素を高度なバランスで両立させたクルマであることをアピールした。
グランドチェロキーLは「グランド・ワゴニア」の系譜を継承
3列シートを備えるロングボディに刷新された外観デザインの新たなインスピレーションについては、ジープブランド エクステリアデザイン ディレクターであるマーク・アレン氏が説明。
ジープブランドのアイコン的存在であるグランドチェロキーLの開発では、ジープモデルで受け継いできた「7スロットグリル」「台形ホイールアーチ」を採用しつつ、この新型車がかつて存在した「グランド・ワゴニア」の系譜にあるとの考えから、外観デザインでも「逆スラント型ノーズ」を採用し、ピラーの位置関係やライトのデザインでもグランド・ワゴニアをモチーフとしているという。
さらにグランド・ワゴニアが持っていた視界の広さが生む開放感も参考としており、ベルトラインを下げたことに加え、エンジニアとの打ち合わせを重ねてピラーをできるだけ細くしてグラスエリアを拡大。ディメンションでは全幅は従来モデルから踏襲しつつ、タイヤを四隅に配置してフェンダーと美しく連続させたことで、トレッド幅は拡大。独特のスタイリングが完成したと語った。
「どのシートに座っても快適なスペースにすることが目標」
インテリアのデザインチームを率いてグランドチェロキーLの開発に携わったジープブランド インテリアデザイン ディレクターであるクリス・ベンジャミン氏は、グランドチェロキーLのインテリアはこれまでのグランドチェロキーから離れ、まったく新しいデザインにすることがチームの使命だと考えていたとコメント。
インパネは水平方向のラインやドライバーから遠ざかっていくように角度を付けるとこで広さ感を演出。車内の中央を貫くようなセンターコンソールがインパネに向かって駆け上がっていくようなレイアウトを取ることによって独特の空間演出を行なっており、囲まれ感はあるものの、圧迫感を与えないようにしているという。
このほか、現在はジープブランドの新しいデザイン言語を開発中で、インパネのデザインコンセプトはボディサイズが異なるセグメントのモデルに応用できるよう設計。これ以降に登場するモデルにも、グランドチェロキーLで採用しているデザイン言語を見つけることができるかもしれないと語った。
また、グランドチェロキーLの大きな特徴である3列目のシートについては「どのシートに座っても快適なスペースにすることを目標にしました」と説明。3列目シートは面に向かって滝が流れ落ちるような造形にしたことで、身長や体型に関わらず快適に座っていられるようになっており、快適さに加えてどこに触れても手触りのいい、柔らかいシートを目指して開発されている。
このほか、インテリアでは美しいレザーやウッドといったデザインエレメントで彩りつつ、収納ボックスやドアポケットなどにも妥協することなく、機能性を犠牲にしていないと強調している。
フロントアクスルとエンジン架台を一体化
グランドチェロキーLのチーフエンジニアを務めたフィル・グレイド氏からは、新アーキテクチャーを採用した走行性能について解説された。
グランドチェロキーLでは悪路走破性を最高レベルに高めるため、さまざまな新開発のコンポーネントを採用。フロントアクスルをエンジン架台と一体化した新たな構造により、NVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)を低減させたことに加え、エンジンを低い位置に搭載して重心位置を低下。ハンドリング性能を高め、横転しにくくなっている。また、マルチリンク式のサスペンションでは、使用するブッシュ類がそれぞれ担う役割について見極め、これは走行性能、これは快適性などと明確化して開発を進めていったという。
このほかに足まわりでは、サミット リザーブに「クォドラリフト エアサスペンション」を標準装備。最低地上高を高くすることで悪路走破性を高め、従来モデルから100mmアップとなる609.6mmの渡河性能を発揮する。
ボディには第3世代超高張力鋼板を含む高強度スチールやアルミニウムを多用して軽量化を追求。燃料タンクの小型化を可能とした燃費改善を実現し、走行性能も高めている。
4WD性能についてはヘグストロム氏が補足。4WDはジープブランドのルーツになっているもので、後付けのオプションといった位置付けではなく、すべてのジープモデルでDNAに深く刻まれたものだと語った。
グランドチェロキーLではアクティブトランスファーを備える「クォドラトラックII 4×4システム」が4輪に最適なトラクションを常に伝達。これに、トラクション、スラビリティ、スロットルマネージメントを瞬時に調節するトラクションコントロールシステム「セレクテレイン システム」を組み合わせることで、「あらゆる路面をいとも簡単に走破することができます」と語られた。
3つのPDCが電源供給する「アトランティス・アーキテクチャー」採用
グランドチェロキーLの開発主査を務めたマリオ・ホームズ氏からは、新たに採用された先進装備について解説された。
グランドチェロキーLでは、エンジンルーム、車両中央部、車両後方の3か所に設置されたPDC(電源供給センター)がシステムに電源供給する「アトランティス・アーキテクチャー」を採用。これにより、レベル2に相当する先進運転支援システムなど多彩な先進装備の搭載が可能になった。
安全装備の1つである「ドライバーアテンションアラート」はドライバーの運転パターンを学習。そのパターンから車両の挙動が大きく変化するとシステムが警告モードに切り替わり、スクリーンのコーヒーカップ表示と音声ガイドでドライバーに注意喚起する。
サミット リザーブに標準装備される「ナイトビジョン」では、フロントグリル内に設置された赤外線カメラで捕捉した車両前方の映像をECUで分析。物体の形状や温度から歩行者や動物だと判断した場合、対象が車両の前方にある場合はスクリーンに赤く表示し、それ以外でも車両の進行方向に入ってくると予想したときは黄色く囲んで表示するという。
グランドチェロキーLの特徴である3列目シートについても新装備を用意。車内のルーフ部分に設置したカメラで2列目シートからラゲッジスペースにかけて上から撮影する「インテリア リアフェイシングカメラ」を用意。3列目シートに座る子供の状況などをセンターコンソールにある「Uconnect 5」のディスプレイに映し、定期的に状況を見ながら安心してドライブできるようにしている。
このほか、FCAジャパンとして進めていく販売施策についてもヘグストロム氏から解説が行なわれた。
新たにラインアップに加わるグランドチェロキーLは既存のジープモデルオーナーや競合他社のSUVオーナーに訴求することに加え、日本市場で根強い人気を誇るミニバンのオーナーにとっても魅力的な選択肢になるだろうとヘグストロム氏はアピール。3列シートが必要でミニバンユーザーになっているという人のニーズを満たし、さらにミニバンにはないオフロード性能や快適性、多用途性を備えることに加え、見た目にもカッコいいグランドチェロキーLは、人とは違ったものが欲しいと考えるミニバンユーザーにうってつけの製品になるとした。