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ルノー、新開発のEV用大型L字型ディスプレイ「OpenRスクリーン」 メガーヌBEV仕様で搭載

2022年1月20日(現地時間) 発表

新型「メガーヌ E-TECH エレクトリック」に搭載される大型L字ディスプレイ「OpenRスクリーン」

グーグルやクアルコムの協力を得て新たな体験を提供

 ルノーは1月20日(現地時間)、新型「メガーヌ E-TECH エレクトリック」に搭載される「OpenRスクリーン」の技術について、ルノーのエクスペリエンス・デザイン・ディレクターであるマーク氏による解説を公開した。

 グーグル(Google)のエコシステムを搭載し、アンドロイド(Android)OSで動作するという「OpenR Linkインターフェース」は、これまでにない大きさのガラスパネルを用いて、コックピットのラインに美しく調和するデザインを採用。また、スマートフォンのようにシンプルな使い勝手で、従来のタッチパネルに比べて7倍もスムーズに画面を操作できるようになり、ここ数年のルノーの車載技術の中で、もっとも大きなブレークスルーを成し遂げた技術だという。

ルノー エクスペリエンス・デザイン・ディレクター マーク氏

 ディスプレイを初めて搭載したビュイックの「リビエラ」は、2021年で誕生35周年を迎えたが、車載エレクトロニクスはその後も大きく進化し続けている。ハードウェアはより効率的に、操作はよりスムーズに、アプリケーションは日々更新され、スクリーンは高解像度になり、使い勝手もどんどんよくなり、車載マルチメディアシステムは、ますますスマホに似てきているという。

 ルノーのエクスペリエンスデザインディレクターであるマーク氏は「主な課題はユーザーが必要なものを素早く、直感的に見つけることができるようなソリューションを考案することでした」と、OpenRスクリーンの開発コンセプトを明かす。

OpenR: touchscreens and tech blend | Renault Group(1分51秒)

完全な没入感を得るための「XXLスクリーン」

 ルノーは運転支援システムの近代化に合わせ、運転中の快適性をより高めるために、これまでになかった電子アーキテクチャ「OpenRスクリーン」を開発し、新型メガーヌ E-TECH エレクトリックに初めて搭載した。

 センターコンソールにある縦型12インチスクリーンと、ステアリングの後ろのダッシュボードにある横長の12.3インチスクリーンがL字型に組み合わされ、2つのスクリーンを合わせると774cm2もの面積となり、特別な没入感を味わうことが可能に。マーク氏は「ドライバーにとって見やすく、操作しやすいベストポジションにあり、道路から目を離すことなくマルチメディア機能をフルに活用できます」と語る。

L字型の大型ディスプレイを開発

 この大型スクリーンを実現できたのは、EV(電気自動車)用の新型プラットフォーム「CMF-EV」のおかげで、エアコンユニットをモータールームに移動させることで、コックピットのスペースを確保することができるようになり、センターコンソールが縮小でき、大型スクリーンを配置することが可能になったという。

 また、ギアスティックとマルチセンス・インターフェースをステアリングに移設し、人間工学を改善するとともに、運転席と助手席の間のセンターコンソールにも広いスペースを確保することができたとしている。

センターコンソールにもさらなるスペースを確保できたという

 多くの自動車メーカーがあらゆるものをスクリーンに移行しているがマーク氏は「ボタン類は中央のスクリーンの下に配置しました。そうすることで、エアコンの設定など重要なものは、依然として『フィジカル』なインターフェースで操作できるのです。このクロームメッキのボタンは、コックピットの中で自然な位置にあります。そして、前世代のクルマにありがちな、コンソールの下にある『あまり使われないボタン』の存在を避けることができたのです」と解説する。

 OpenRスクリーンは、最新のスマホと同じく、衝撃に強くて傷がつきにくく、寿命は推定15年というアルミノシリケートベースのコンチネンタル製強化ガラスを採用。HD267ppi(pixels per inch)の解像度により、鮮明な画像表示が可能という。

 また、ダッシュボードのスクリーンには反射防止コーティングを施しつつ、先進のマイクロブラインド技術(パソコンのプライバシースクリーンに使われている技術)も採用し、通常メーターに付いている太陽光を遮るバイザーを不要とし、よりスマートなインテリアデザインを実現。マーク氏は「画面の明るさも屋外の明るさに合わせて自動的に変化するので、見やすく、ドライバーも疲れない」と述べている。

先進のマイクロブラインド技術による反射防止コーティングにより、新型メガーヌE-TECHエレクトリックは日よけのメーターバイザーを装備していない
スマートフォンと同様、Android OS上で動作するOpenR Linkシステム

グーグルのエコシステムによって強化されたナビゲーション

 マーク氏は「この分野の王者であるグーグルと手を組んだことで、そのノウハウをすべて活用することができました。アプリにはグーグルマップを含む、グーグルのエコシステムの主要なものがすべて含まれています。携帯電話でグーグルマップを使っているお客さまはクルマの画面でもまったく同じ体験をすることができます。この画面は、平均的なスマートフォンの画面の6倍の大きさです。運転中の利便性は確実に向上しています」と解説している。

 グーグルマップには、リアルタイムの車両データ、気象情報、その他の状況を考慮して、指定された充電ステーションへの立ち寄り、その充電ステーションに到着したときのバッテリ充電レベル、および充電にかかる時間をドライバーに教えてくれるだけでなく、目的地に到着したときの充電量も推定することができるなど、EVにも最適化された機能を有している。

 さらにマーク氏は「地図は定期的に更新されるため、常に精度が向上していることもメリットの1つです。何百万人ものユーザーが、グーグルのデータベースを充実させ、ノンストップで強化しているのです。このシステムは『生きている』、常に進化しているのです」とグーグルの優位性を説いている。なお、毎日使うような機能の90%は、1~2回のクリックで操作できるようにしているという。

新型BEV「メガーヌ E-TECH エレクトリック」

 ルノーは、グーグルと協力して新しいディスプレイのソフトウェア・インターフェースを充実させたが、ハードウェアでは1月4日にラスベガスで開催されたCES 2022にて、米国のクアルコムと両社の協力関係を拡大する契約を締結。クアルコムは、将来のアプリ増加にも対応できるように十分な容量を持つ超高効率プロセッサを中心に構築した第3世代のプラットフォーム「Snapdragon Automotive Cockpit」をルノーへ供給。その結果、画面上の動きは前世代よりも7倍滑らかになったという。また、LGエレクトロニクスが、2つのスクリーンをペアリングするソフトウェア・プラットフォームを開発したという。

 マーク氏は「ハードウェアのサイズと画面の応答性に関して、これまでにない水準に到達しました」と総括している。

 ルノーは、クアルコムの「Snapdragon Digital Chassis」を活用して、今後発売されるルノーのクルマに次世代自動車向けの最新のコネクテッドソリューションと、インテリジェントソリューションを搭載していく予定としている。

大胆な発想で課題に挑む

 「OpenRスクリーン」の開発では、ドライバーの利便性と快適性を犠牲にすることなく、最高のマルチメディアサービスをいかにして自動車のコックピットに融合させるかが大きな課題だった。そのため開発に携わったエンジニアとデザイナーは、あらゆるパーツの最適な配置を見つけるために、いくつかの大胆なアイデアをひねり出したという。

 たとえば、エアコンの吹き出し口は大きなスクリーンがあるため配置が難しかったが、当然スクリーンを移動させるという選択肢はなく、デザインをフラットに保ちつつ、乗員が快適に過ごせるように縦型の吹き出し口にした結果、2つのスクリーンの間で目立たず、かつ空気の流れをより効果的に乗員室内に導くことができるようになったという。

2つのスクリーンの間にある吹き出し口は、デザイナーが直面した大きな課題の1つだったという

 もう1つ、大きなチャレンジだったのがステアリングで、マーク氏は「使い勝手とコンパクトさのバランスをどうとるか。センターコンソールをできるだけすっきりさせ、かつダッシュボードのスクリーンに表示されるすべての情報を見やすくするために、できるだけ多くのボタンを配置することが目標でした。そこでデザイナーは、運転が楽しく、ダッシュボードの画面が見やすいように、中央が少し平らになった、小さくて四角いステアリングホイールを採用しました。ルノーがこれまでデザインしてきた中で最大の縦型スクリーンを、まったく新しいアーキテクチャに組み込むのですから。ダッシュボードのスクリーンは水平で、もう1つのスクリーンはそうではないので、スタイリングの観点からもリスクがありました」とマークは説明する。

スクリーンは専用ステアリングを前提に設計していて、ドライビングの楽しさスクリーンの見やすさを両立させたという

 それでもマーク氏は、センタースクリーンを縦型にすることにこだわり、「これはルノーが2014年から採用しているものです。エスパスやクリオでもそうしてきましたが、新型メガーヌ E-TECHエレクトリックでもそうすることにしたのです。なぜなら、特にドライバーアシストやナビゲーションシステム全体の分かりやすさを考えると、それが最良の選択肢であると確信しているからです。『なぜ横型でなく縦型なのか?』、それはナビゲーションをするときは、隣ではなく目の前で起きていることを知る必要があります。また、SpotifyやDeezerで長い曲のリストをスクロールしているとき、縦長の画面は一度に多くの曲を表示できるからです」とマーク氏は締めくくっている。