ニュース
2022年に新型EV「メガーヌ E」登場を発表したルノーの電動化戦略を紹介する「Renault eWays」オンラインカンファレンス
2021年7月1日 12:18
- 2021年6月30日(現地時間)開催
仏ルノーは6月30日(現地時間)、ルノー・グループのテクノロジーエコシステムについて解説するオンラインカンファレンス「Renault eWays」を開催した。
このカンファレンスでは、“力強さを高めた”という新型EV(電気自動車)「メガーヌ E」が2022年に登場することが明らかにされたほか、専用のEVプラットフォームを最大限に活用して、2025年までに10台の新しいBEV(バッテリーEV)を発売。このうちの7台はルノーブランドからリリースされ、1月にプロトタイプが公開された「ルノー 5」や、「4 ever」と名付けられているアイコニックなモデルも含まれているという。
カンファレンスのオープニングでは、ルノー・グループ CEO(最高経営責任者)ルカ・デメオ氏が「本日はルノー・グループのEV戦略が歴史的に加速した日です。北フランスにコンパクトで効率的なハイテクエレクトリックエコシステムであるルノー・エレクトリシティと、ノルマンディーにあるeパワートレーン メガファクトリーを建設することで、競争力のある環境を作り出しています。ST Microelectronics、Whylot、LG Chem、Envision AESC、Verkorなど、それぞれの分野ですでに確立された、または新たに台頭しつつあるトップクラスのアクターたちを鍛え上げ、投資してパートナーとなります」。
「10モデルの新しいEVが考案され、2030年までに100万台のEVがコスト効率の高いシティムーバーからハイエンドスポーツカーとして製造される予定です。EVを普及させるため、私たちは効率性に加え、人々に愛されている『ルノー 5』をルノータッチで電動化した象徴的なデザインに賭けています」と述べている。
2030年にアライアンス内で全固体電池導入を目指す
デメオ氏によるオープニングセッションの後は、6つのテーマ別に担当者が解説を実施。最初はバッテリーについて、ルノー・グループのリサーチ&アドバンスドエンジニアリング担当VP Sophie Schmidtlin氏が紹介を行なった。
ルノー・グループはEVのバリューチェーンで培ってきた10年の経験を活かし、バッテリー戦略で競争力を解き放つためアライアンスにおける大胆な標準化の選択を決定。リチウムイオンバッテリーに変え、NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)をベースとするユニークなバッテリーを開発。
これによってルノー・グループは将来発売する全セグメントのBEVをカバーして、2030年までにアライアンス全体で最大100万台のEVすべてに搭載する予定としており、ほかの化学ソリューションと比較して航続距離が最大20%増加し、リサイクル性能が大幅に向上するとしている。
また、ルノー・グループではEV戦略の一環として、Envision AESCと提携。2024年にドゥエーに9GWhの発電能力を持つギガファクトリーを開発し、2030年までに24GWhの達成を目指すロードマップも発表。ルノー・エレクトリシティに関わるパートナーは、将来登場するルノー 5を含め、最新技術、コスト競争力、低炭素、安全性に優れたEV用バッテリーを生産することになる。
さらにフランスの新興バッテリーメーカーであるVerkorの株式を20%以上保有する株主になる覚書にも調印。両社はCセグメントやさらに上位セグメントのルノーモデル、アルピーヌモデルに適した高性能バッテリーの共同開発を予定している。この提携には2022年から実施する、バッテリーセルとモジュールのプロトタイプ開発に向けたフランスでのパイロット生産ライン開発も含まれ、第2段階としてVerkorは、2026年からフランスで高性能バッテリーに向けた初の巨大工場建設も目指すという。ルノー・グループの初期容量は10GWhで、2030年までに20GWhまで増加する可能性もある。
今後10年以内の目標では、2025年に100ドル/kWh、さらには80ドル/kWhを下まわることを目指し、2030年にアライアンス内での全固体電池の導入に向け、パック単位でコストを段階的に60%削減していくという。
2025年に軸流磁束型モーターを量産する最初のOEMメーカーになる
パワートレーンについては、ルノー・グループのパワートレーン&EVエンジニアリング担当SVP Philippe Brunet氏が解説。
ルノー・グループでは独自の減速機を持つことに加え、OEMメーカーとして初めて希土類を含まない(永久磁石を使用しない)シンクロナスモーター「EESM」技術をベースにした独自のモーターを開発。投資の大半はすでに完了しており、過去10年間でバッテリーにおけるコスト削減を2倍にしており、今後10年間でさらに2倍にする予定。2024年以降には、EESMにステータヘアピン、接着モータースタック、ブラシレス化、中空ローターシャフトといった新技術を組み込んでいく予定で、さらなる低コスト化、高効率化を実現していく。
また、フランスのスタートアップ企業 Whylotと、革新的な自動車用軸流磁束eモーターに関するパートナーシップ契約を締結。この技術は、まずWLTP(B・Cセグメント乗用車用)で最大2.5gのCO2削減を図りつつ、コストを5%引き下げることを目指したハイブリッドパワートレーンに適用する予定で、ルノー・グループは2025年に軸流磁束型モーターを量産する最初のOEMメーカーになる見込みだ。
パワーエレクトロニクス分野では、インバーター、DC-DC、オンボードチャージャーなどを自社製の専用ボックスに集約し、バリューチェーンのコントロールを強化。コンパクトな設計を実現するこの“ワンボックスプロジェクト”では、コスト削減のためより少ない部品で800Vに準拠し、スケール効果を高めるためすべてのプラットフォームとパワートレーン(BEV、HEV、PHEV)に使用される。インバーター、DC-DC、オンボードチャージャー用のパワーモジュールでそれぞれ使用されるSiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)は、ST Microelectronicsとの戦略的パートナーシップによりもたらされることになる。
これらの新技術に加え、「オールインワンシステム」と呼ばれるよりコンパクトなeパワートレーン開発にも取り組んでいる。このeパワートレーンは、モーター、減速機、パワーエレクトロニクス(ワンボックスプロジェクト)を1つのパッケージに統合したもので、合計で体積を45%削減し、これは現行モデルの「クリオ」(日本名:ルーテシア)の燃料タンクに相当する体積になる。また、パワートレーン全体で30%のコストダウンを実現し、WLTPで45%のエネルギー削減を可能にして、EV走行レンジを最大20km追加する。
CMF-BEVプラットフォームで「ZOE」と比較して車両コストを33%削減
プラットフォームについては、ルノー・グループのアライアンス プラットフォーム リーダー Laurence Excoffon氏が解説。
ルノー・グループは「CMF-EV」「CMF-BEV」で10年におよぶEV専用プラットフォームの開発実績を持ち、C・Dセグメントで比類なき走りの楽しさを提供するCMF-EVプラットフォームは、ルノー・グループと日産自動車のエンジニアが、フリクションの低減、軽量化、最先端の熱管理に取り組んできた結果、極めて低いエネルギー消費により、WLTPモードで580kmまでの走行レンジを実現。2025年までにアライアンス全体で70万台を生産する予定となっている。
さらにEV専用プラットフォームでは、ボンネット下にあるすべての技術要素でより大きなキャビンスペースを実現できるようになり、背面から前面に交差するすべてのケーブルが不要になることで、重量とコストを削減。空調関連の要素もボンネット下に配置されてるので、より薄型のダッシュボード設計が可能になる。
走行面でも低重心と理想的な重量配分、高速車両応答を可能にする非常に低いステアリング比、マルチリンクリアサスペンションなどが運転の喜びを提供。フランス北部のドゥエーで生産されることになる新型メガーヌ EもCMF-EVプラットフォームを採用することになる。
BセグメントではCMF-BEVプラットフォームを採用することで、低価格で誰でも手が届きやすいEVを製造できるようになる。この新型プラットフォームは、バッテリーモジュールの互換性、100kWの適正サイズのパワートレーンを低コストで実現するほか、2025年までに「CMF-B」プラットフォームで生産される300万台の非電動化車両からコンポーネントをキャリーオーバーすることで、現行モデルのコンパクトEV「ZOE」と比較して車両コストを33%削減する。
CMF-BEVプラットフォームは、設計、音響、車両挙動などに妥協することなく、WLTPモードで最大400kmの走行を提供し、手ごろな価格で提供されることに加え、NF-C 15118規制に基づくの革新的なプラグ&チャージも含まれるという。
ルノー・エレクトリシティでは生産コストを車両価格の3%以下に削減
EVを生産するルノー・エレクトリシティについては、ルノー・グループの生産担当EVP Jose Vicente de los Mozos氏と、同ルノー・エレクトリシティ VP Luciano Biondo氏が解説。
Mozos氏は6月9日に発表され、フランス北部に新たに設立されたルノー・エレクトリシティには、ドゥエー、モブージュ、リュイッツの3か所にあるルノーの工場と、強力なサプライヤー施設によるエコシステムが集結。早ければ2024年にも、ドゥエーにあるEnvision-AESCの大規模工場からコスト競争力のあるバッテリーが供給される。フランス、英国、ドイツ、イタリア、スペインの5か国は、2025年に欧州のEV需要全体の約3分の2を占めることから、北フランスは理想的な立地だとした。
Biondo氏は、従来の内燃機関から電動パワートレーンへの転換を成功させたこの産業エコシステムは、2024年末までに700人の新規雇用を創出し、AESC EnvisionとVerkorと合わせ、2030年までにフランス国内で4500人の雇用を創出すると分析。
この生産拠点はルノー・グループにとって欧州最大のEV生産拠点であり、2025年までに40万台/年を生産。生産コストを車両価格の3%以下に削減するなど、欧州で最も競争力のある効率的なEV生産拠点となると説明した。
V2Gによって年間で最大400ユーロの価値を生み出す可能性も
バッテリーライフサイクルについては、ルノー・グループの副CEOであり、MobilizeブランドのCEOを務めるClotilde Delbos氏が解説。
ルノー・グループは自動車メーカーとして初めてバッテリーのライフサイクル全体に対応。確かな専門知識を開発し、Mobilizeがさらに進化させている。耐久性を高め、用途を拡大し、バッテリーのライフサイクルの各段階で付加価値を生み出している。
バッテリーの最初の寿命では、EVの車載バッテリーから電力網にエネルギーを給電する「V2G」ソリューションを提供。電力会社は負荷を分散するため、EVのバッテリーが実現する電力貯蔵ソリューションに非常に興味を持っているという。このソリューションによって1日のうち8時間電力網に接続されたEVは、V2Gによって年間で最大400ユーロの価値を生み出す可能性がある。これにより、EVのオーナーは年間リースコストの一部を相殺でき、ルノーはEVに関連する反復利益を獲得する。
バッテリーがEVに搭載されて最初の寿命が来たときでも、実際にはまだ容量の約3分の2を残しており、第2の寿命のために再使用できる。Mobilizeは定置用バッテリーストレージを中心とした新しいアプリケーションを開発しており、時間に合わせた電力需要を管理したり、他の業界向けのモバイル用蓄電や発電機を開発したりしている。ルノーはこの市場を開拓しており、欧州で市場をリードするため独自の産業構造を定義。それはディーラーネットワークのサポートによる使用済みバッテリーの回収、リアルタイムの技術モニタリングによるバッテリー価値の評価、競争力のある価格でバッテリーを再生し、次の25万台のZoeリースバッテリーを再パッケージするための産業能力などを挙げている。
バッテリーが使用済みになってからも、子会社であるIndraとVeoliaの長年にわたるパートナーシップにより、ルノー・グループはEVバッテリーの回収とリサイクルにおける強固なノウハウを活用できる。これまでにバッテリーの累積容量で75MWhをリサイクルしており、この半分は2020年だけでリサイクルした数値となっている。
また、2030年までに使用済みとリサイクル活動による売上高として10億ユーロ以上を達成することを目標としたFlinsのリファクトリプロジェクトでは、バッテリーの改修や再利用、解体、リサイクル施設を展開。さらにリサイクルを進めるため、SolvayとVeoliaが共同で発表したコンソーシアムでは、コバルト、ニッケル、リチウムなどの戦略的バッテリー材料を非常に高い効率とバッテリー品質で回収し、新車バッテリーの生産に再利用できるようにしている。
バッテリーの回収とリサイクルのプロセス全体が進化することで、リサイクルの純コストを2030年までに3分割され、天然資源を維持しながら、ニーズの一部に対して競争力のあるコストでバッテリー材料の代替的、持続可能な調達を確保していく。