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デロイト トーマツ、インディ500で3勝目を目指す佐藤琢磨選手とのテクニカルパートナーシップ契約を締結

2022年2月7日 開催

デロイト デジタル ジャパンリード 宮下剛氏(左)、佐藤琢磨選手(中央)、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長 佐瀬真人氏(右)

 デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティングは2月7日に記者会見を行ない、インディアナポリス500レース(以下インディ500)の3勝目を狙って、13年目のインディカー・シリーズに参戦する佐藤琢磨選手とテクニカルパートナーシップ契約を結んだことを明らかにした。

 今シーズンの佐藤琢磨選手は「デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシング」に移籍して、2017年、2020年のインディ500優勝に次ぐ3勝目に心機一転臨むこととなる。デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングは、2021年に元F1ドライバーのロマン・グロージャン選手が在籍し、注目すべき成績を上げたことでも知られている。

コンサルティング企業のデロイト トーマツが佐藤琢磨選手のテクニカルパートナーに。レースでのDXの推進をサポート

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長 佐瀬真人氏

 デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループの1つで、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務といったサービスを企業などに提供している。今回、佐藤琢磨選手とテクニカルパートナーシップ契約を結んだのは、そのグループ企業の1つであるデロイト トーマツ コンサルティング。

 この契約により、デロイト トーマツ コンサルティングは同社の持つ知見などに基づき、テクニカルサポートを提供するほか、デロイト トーマツ グループとして取り組んでいるスポーツビジネスにおけるデジタル活用や脳データ研究、次世代アスリート育成、観戦体験向上、さらにはカーボンニュートラルを実現するDXなどの分野でも協業していくという。

デロイト トーマツの狙い

 デロイト トーマツ コンサルティング 代表執行役社長 佐瀬真人氏は「佐藤琢磨選手はグローバルに活躍されているプロフェッショナルで、これまでも常にリスペクトしてきた。その一方、われわれデロイト トーマツもコンサルティングというビジネスの世界でプロフェッショナルとしてグローバルに戦っている。そうした意味でフィールドは違うが同じグローバルで戦う仲間としてぜひ佐藤琢磨選手と一緒に活動したいということでお声をかけさせていただいた。今回のテクニカルパートナーシップで佐藤琢磨選手をサポートすることで、佐藤選手には勝利を、そしてわれわれはさまざまなことを学ばせていただき、コンサルタントとして勝つ、これが今回のパートナーシップのキーワードだ」と述べ、かつてはF1、そして今はインディカー・シリーズというグローバルなレースフィールドで戦う佐藤琢磨選手に共感して今回のテクニカルパートナーシップ提携に至ったと説明した。

 さらに、佐瀬氏は「今回のパートナーシップには、デジタルの活用、ウェルビーイング社会の実現、次世代アスリートの支援、スポーツを通じたより豊かな社会の実現という4つの柱がある。デジタルの活用では佐藤琢磨選手のレース活動をデジタルの力で支援する。ウェルビーイング社会の実現では、そうしたデータを人間がどう取り込んでいるのか脳の分析なども通じて支援していきたい。それにより認知力の分析などを行ない、交通事故を減らす取り組みなどに役立てていきたい。また、次世代アスリートの育成では、日本のアスリートの国際競争力に影響する貢献をしていきたい。スポーツを通じた豊かな社会の実現という観点では、モータースポーツの持続成長性を実現していくことに貢献していきたい」と述べ、佐藤琢磨選手と一緒に取り組んでいくことで、デジタルの活用や持続成長性などの観点でモータースポーツに貢献していきたいと強調した。

デロイト デジタル ジャパンリード 宮下剛氏
モータースポーツ以外でのスポーツのテクニカルパートナーシップ

 また、デロイト デジタル ジャパンリード 宮下剛氏によれば、パートナーシップを結んでいるのは佐藤琢磨選手だけでなく、サッカー男子日本代表 元監督 岡田武史氏が代表を務めるFC今治のほか、元プロ野球選手のセカンドキャリア、プロBMXチームなどともテクニカルパートナーとして活動していることなどを説明した。

第10戦 トロントで予定されているデロイト トーマツ仕様の特別カラーリング

 なお、同社によれば、インディカー・シリーズの第10戦として予定されているトロントのレースでは、同社のロゴを配したスペシャルカラーリングが採用される予定になっており、その車両のカラーリングイメージも公開された。

新しいチームへ移籍し、心身ともに最高の状態にあると佐藤琢磨選手。インディ500で3勝目を目指すと力強くアピール

佐藤琢磨選手

 会見には米国から佐藤琢磨選手も遠隔参加し、デロイト トーマツとのパートナーシップへの期待、そして今シーズンの見通しなどに関して説明した。

佐藤選手:デロイト トーマツさんとのテクニカルパートナーシップの実現をとてもうれしく思う。関係者の皆さまに感謝したい。これから一緒にやるレース活動において期待することは、やっぱりデロイト トーマツのデジタル技術を活用した競技支援になる。モータースポーツは人間の限界に挑むスポーツでありながら、テクノロジーの競争でもある。

 レーシングカーには本当に多くのセンサーが搭載されていて、走行中もテレメタリーという通信によって常に膨大なデータがマシンからピットにリアルタイムに送られている。例えば、ステアリングを切っていく角度やヨー角というコーナリングしている時の角度、タイヤの状態、サスペンションの状態などを、データエンジニアがリアルタイムに処理してレースエンジニアがドライバーからのフィードバックも参考にしながら状況を管理していく。それと同じようにエンジンの方も、水温、油圧、その気筒ごとに、燃料をどう噴射させて、どういうふうに火花を飛ばして、燃焼状態をどうするのかをモニターしながら微調整を進めたりしている。

 レース後にはそうしたデータが大量にできていて、それをきちんと整理して活用していくことが勝利の鍵となる。デロイト トーマツさんはそうしたビジネスの場でデータを活用されているので、その知見を生かしていただいて今シーズンの活動にうまくつながっていけばよいと期待している。

――今回の活動で競技支援以外に期待していることは何か?

佐藤選手:競技のパフォーマンスを上げていただくのはもちろんうれしいが、それをどのように社会に反映していくのかというのも同時に期待している。佐瀬氏の話にも出てきたが、次世代アスリートの育成を目的にした取り組みも重要だ。例えば、そうした次世代アスリートの育成にデジタルを活用するというのは重要で、自分自身も個人的に興味があってこれからどんなことができるかは楽しみにしている。また、本当に世界を目指していく子供たちの夢を応援したいという思いは自分自身にもあって、そういった活動もこれまでもしてきている。しかし、やはり個人でやれることにはすごく限界があり、それこそデロイト トーマツさんと一緒にこの活動の幅を広げていけたらと思っている。

 そしてやっぱりスポーツを通じて社会貢献に役立ていきたい。例えば、次世代の若者や子供たちがよりモータースポーツに取り組んでいけるような環境を作る投資をしていったり、地域創生に関する取り組みだったりは、やはり個人の力ではできないことなので、デロイト トーマツさんの力をお借りしたいと思っている。

 自分もここまで長く第一線で活躍させてもらえたのは、本当に多くの方の支援とサポートがあってこそのことだ。アスリートというのは競技に集中して、状況によっては英才教育なども受けながら、要所要所で力を発揮できるようにしてきている。そして成人してピークパフォーマンスを終えたあとのセカンドキャリアに関しては、その時になって初めて考えることになる。引退したあとどうするのかというのはスポーツ業界の大きな課題だと自分も感じている。そうしたアスリート一人一人の力だけではどうすることもできないことを、デロイト トーマツさんと一緒に進めていければ最高だと思う。

――グリーントランスフォーメーションについてはどう考えるか?

佐藤選手:サステナビリティ(持続性調整)における連携も期待したいところだ。レースの世界でもバイオ燃料をはじめ、次世代燃料の検討とか、EV化も本当に進歩している。インディカー・シリーズでも長年E85のバイオ燃料を使用しており、カーボンオフセットを目指している。

 昔ホンダ創業者の本田宗一郎氏が「F1は走る実験室だ」とおっしゃったそうだが、本当にその通りでトライアンドエラーをどんどん行なって評価していくのがモータースポーツであり、究極の効率を求めて限られたリソースを最大限活用してパフォーマンスにつなげていくのがモータースポーツだ。

 燃料1つを例にとっても、そのパワーを実現するために技術者が究極の燃焼効率を目指すというのは、少ない燃料で長い距離を走るという目的ということでもあり、ある意味一般車と共通だ。このあたりはデジタル技術を活用して、エンターテインメントを実現しながら、地球環境にとってもよい取り組みをしていくことにつながればよいと考えている。

――今シーズンに向けた意気込みを。

佐藤選手:今年はデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングに移籍して戦う。これまでインディ500で2勝、最初はアンドレッティで、2勝目はレイホールで勝った。今年13年目のシーズンだが、実は開幕戦のレースがインディカー・シリーズに挑戦を開始してから200戦目という記念すべきレースとなる。今回テクニカルパートナーシップを結んでいただいたデロイト トーマツさんと一緒に、心機一転頑張っていきたい。今はトレーニングも十分積んで心身ともに非常に高いところに来ているので、開幕戦から勝利を目指していきたい。インディカー・シリーズは市街地コース、ロードコース、ショートオーバルからスーパースピードウェイまでとバラエティーに富んでいるコースで戦うが、デロイト トーマツさんと一緒にデジタルを活用して頑張っていきたい。そしてインディ500の3勝目を目指して頑張っていきたいと思うので、皆さまからの応援をよろしくお願いしたい。

笑顔で説明する佐藤琢磨選手

【お詫びと訂正】記事初出時、写真のキャプションに誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。