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ルネサス、2021年通期の売上収益は9944億円と前年比38.9%増 高価格帯の自動車で搭載数が増加

2022年2月9日 発表

ルネサス エレクトロニクス株式会社 執行役員 兼 CFO 新開崇平氏(左上)、ルネサス エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO柴田英利氏(右上)、ルネサス エレクトロニクス株式会社 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部長 片岡健氏(下)

 ルネサス エレクトロニクス(以下ルネサス)は2月9日、2021年第4四半期(2021年10月~12月期)および2022年通年の決算を発表し、ルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長 兼 CEO柴田英利氏などによる説明会を開催した。この中でルネサスは、2021年通期のグループ全体の売上収益(製品による売上高とサービスによる売上高などの合計)が9944億円になり、前年同期に比べて38.9%増となったことを明らかにした。

 同社の主力製品である自動車向け半導体が、自動車半導体逼迫などの需要増により好調で、前年に比べて35.6%増となる4623億円と大幅増になっており、世界の自動車総生産台数が一桁パーセントの伸びだったのに比べると大きく伸びていることになる。

2021年第4四半期の売上収益は前年同期比64.1%、2021年通年では38.9%と大幅アップ

ルネサス エレクトロニクス株式会社 2021年第4四半期(2021年10月~12月期)および2022年通年の決算短信の概要

 ルネサスが発表した2021年第4四半期(2021年10月~12月期)および2022年通年の決算短信によれば、同社の第4四半期決算は売上収益が3144億円で、前四半期比で21.7%、前年同期比に比べて64.1%と大幅増になっており、売上総利益率も54.3%と前年同期比で7.2%のアップとなっている。さらに2021年通期(2021年1月1日~2021年12月31日)までの売上収益は9944億円で、前年比で38.9%とこちらも大幅増。売上総利益率は53.2%と前年比5.9%とこちらもアップしている。

2つの事業部それぞれの四半期推移
第4四半期の売上収益など

 同社の事業は大きくいって自動車向け、産業・インフラ・IoT向けという2つの事業に分かれている。自動車向けの2021年通年の売上収益は4623億円で前年比35.6%のアップ、産業・インフラ・IoT向けは5155億円と前年比41.8%のアップとなっており、両方の事業が二桁成長を見せたことで、会社全体の売上収益が大きく向上したということが見てとれる。

受注の状況

 また、昨年からルネサスが取り組んできた2022年に向けた受注を確定する活動により、すでに1兆2千億円を超える確定受注分があり、そこにコミット分(顧客から受注する確約を得ているが、まだ顧客からは正式には受注されていない分)や期中受注分(顧客からの追加受注、短期的な受注など)なども含めて、昨年を上まわる売上収益が期待できると説明された。

工場の稼働率

 また、ルネサスは2021年に主力工場が火災に見舞われるなどのトラブルもあったが、前工程(ウェハーと呼ばれるシリコンの板に回路を生成していく工程のこと)では第3四半期、第4四半期ともに80%を超える稼働率をすでに実現しており、火災の影響も完全に脱している状況であることも明らかにされている。

2022年第1四半期の予想

 今四半期(2022年第1四半期)の予想に関しては、売上収益の予想中央値が3360億円(±40)で、前年同期比が65%(±2ポイント)とやはり大きな成長が期待できることが明らかにされた。

自動車の生産台数が3%増に対し、ルネサスが35%増となったのは、半導体の利用数増加によるもの

 質疑応答では2021年の世界の自動車の生産台数が一桁台の成長だったのに対し、ルネサスの半導体が35.6%と大きく成長していることについて、「在庫が積み上がっているのではないか」という質問がでたが、ルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長 兼 CEO柴田英利氏は「1つにはエントリークラスでもADASの装備が充実しているなど応用例が増えていること、そしてEVへのシフトなどが影響している。またもう1つはある米国の自動車メーカーなどはあけすけにいっているが、サプライヤーからの供給制約があって、製造販売するラインアップの優先順位付けを自動車メーカーが変えている。より価格帯の高いクルマや機能が高いクルマの生産を増やしたという側面がある」と説明した。

 また、同じ質問に対してルネサス エレクトロニクス 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部長 片岡健氏は「全世界での生産台数の伸びは3%、機能向上などによる需要の伸びは8~15%のレンジにある。しかし、OEMメーカーは自動車をなかなか製造できない中で付加価値の高いクルマを増やしており、その中で半導体が利用されている。それにより上振れが発生していると考えている。当社は35%のアップだが、OEM側の完成在庫は歴史的に低い水準になっており、ティアワンも含めて在庫が積み上がっている状況ではないと考えている」と述べ、自動車メーカーや部品メーカーが在庫を増やしていることにより、ルネサスの売り上げが増えたという訳ではないと説明した。