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ルネサス、第4世代R-Carとなる車載向け新半導体「R-Car S4」など片岡本部長が説明 電動化/ADAS/コネクテッド向け製品拡充

2021年10月6日 発表

ルネサスが発表した新しい半導体製品「R-Car S4」

電動化/ADAS/コネクテッド向け製品を拡充

 ルネサスエレクトロニクスは10月6日、オンラインで記者説明会を開催し半導体製品などに関する説明を行なった。ルネサスが発表したのは、次世代車載中央コンピュータ向けとなる新たなゲートウェイ用SoC(System On a Chip)「R-Car S4」とパワーマネジメントIC(PMIC)の組み合わせ。同社の車載用マイコンとSoCを対象に自動車のサイバーセキュリティー国際規格ISO/SAE 21434に準拠していく方針も明らかにされた。

 ルネサスエレクトロニクス 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部 事業本部長 片岡健氏は、「車載メガトレンドは、3つある。それが電動化、自動化、コネクテッドだ。いずれの試乗も今年から2027年までの成長率の潜在市場規模(CAGR)を比較してみると、電動化が23%、自動化が12%、コネクテッドが10%の成長率が期待できる。特に新興地域の市場成長は著しく先進国よりも早く成長している。ルネサスとしては、先進国市場は引き続き重要だが、新興市場で大きく伸ばしていこうというのが成長戦略になる」と述べ、これまでもそうしてきたように、xEVと総称される「電動化」、ADASや自動運転などの「自動運転技術」、そしてセルラー回線によるインターネット常時接続による新しいサービスなどの提供となる「コネクテッド」の大きなトレンドに対応する半導体を提供し、現在の主要顧客である先進国の自動車メーカーに加えて、中国やインドといった急速に成長している新興市場の自動車メーカーに対しても積極的に売り込みをかけることで売り上げを伸ばしていきたいと説明した。

ルネサスエレクトロニクス株式会社 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部 事業本部長 片岡健氏
車載のメガトレンド
成長率
新興地域による市場性超
ルネサス新規事業の成長戦略

 そうした中でルネサスの提供価値としては、以前からの強みであるマイコンやコネクテッドや自動運転向けのSoCといったデジタル向けの分野に加えて、Dialogやインターシル、IDTなどの半導体企業買収によって得たアナログ半導体のソリューションを組み合わせて顧客に提供することで、自動車向けの半導体を提供するメーカーとしてのルネサスの立場を強化していきたいと述べた。

 また、ソフトウエアの開発が複雑になっており、それらのルネサスが提供する半導体を利用したソフトウエアの開発を自動車メーカーなどが容易に開発できるような開発環境に関しても力を入れていきたいと述べた。

ルネサスの提供価値
Dialogの買収のシナジー
ルネサスのオートモーティブ2021年の振り返り

 2021年8月31日に買収が完了したDialogについて片岡氏は「Dialog買収によるシナジーは、アナログ製品のポートフォリオが広がったことだ。PMICやCMIC、ハプティックなどのポートフォリオが加わり、1つのソリューションとして提供することが可能になった」と述べ、Dialogが持っていたPMIC(Power Management IC、電力制御を細かく行なうためのコントローラ)、CMIC(Configurable Mixed-signal IC、モーター駆動などに使えるプログラマブルなコントローラ)などの製品を自社のポートフォーリオに加えることができたため、顧客の利便性などを向上させることができると強調した。

ArmのAとRだけでなくRH850マイコンも内蔵したR-Car S4を発表

本日の発表

 その上で、ルネサスが会見前に発表した2つのソリューションについて説明した。1つは同社のArmベースSoC「R-Car S4」とPMICを組み合わせた新製品で、車載ゲートウェイと呼ばれる車両の中央コンピュータのソリューションだ。もう1つは同社のマイコンやSoCが、自動車のサイバーセキュリティー国際規格ISO/SAE 21434に準拠していく計画であることを明らかにしたことだ。

R-Car S4

 R-Car S4は、同社が車載コンピュータやADAS向けなどに提供しているR-Carシリーズの第4世代製品。片岡氏によれば「すでにOEMメーカー数社に採用が決定されている」とのとおりで、それ以前の世代が多くの自動車メーカーで採用されており、その後継製品になる。

R-Car S4のブロック図

 片岡氏によれば、S4の大きな特徴は「ArmのAとRだけでなく、RHアーキテクチャのマイコンも内蔵している。これによりハイエンドなアプリケーションも走るし、リアルタイム処理も走る。そしてArmとRHの両方に対応したソフトウエアを走らせて、以前のソフトウエア資産の活用もできる」とのこと。

 CPUコアとしては、ArmのCortex-A55(最大1.2GHz)が8コア、ArmのCortex-R52(最大1GHz)が1コア、RH850(400MHz)が2コアとなっており、Cortex-A55を利用してハイパフォーマンス処理が必要なIVIやADAS関連の処理、リアルタイム処理が必要なRTOSなどを走らせるときにCortex-R52を利用し、自動車の制御系の制御にはRH850を使うなどを1チップで実現できることが大きな特徴となる。

 そのほかにもPCI Express Gen 4コントローラが4レーン、2.5Gbpsの車載イーサネットが3スイッチなどを搭載しており、パッケージサイズは23×23mmなどで提供される。

「ISO/SAE 21434」への対応は、2022年以降に提供されるマイコンやSoCなどが対象になる。ISO/SAE 21434はコネクテッドな自動車を製造する自動車メーカーに与えられる認証制度で、自動車がインターネット常時接続になることでさらされるサイバーセキュリティーに対応した高いセキュリティー性を確保している指標の1つとなる。欧州などでは形式認証などにこのISO/SAE 21434への準拠が求められるなどしているため、自動車メーカーにとっては準拠する認証制度の1つとなっている。

 ルネサスによれば、2022年1月以降に開発する車載用の16ビットマイコン「RL78」、32ビットマイコン「RH850」、車載SoC「R-Car」などが順次このISO/SAE 21434に準拠していく計画だという。

E/Eアーキテクチャ戦略
E/Eアーキテクチャの進化
ルネサスのソリューション
より使いやすい開発環境の提供
R-Car Marketplace

 また、ルネサスはソフトウエア開発戦略にも触れ「北米の会社はすべてのコンポーネントを自社で用意する垂直型のプラットフォーマーと、1つ1つの分野に強みがある水平型のプラットフォーマーがある。自動車メーカーが今半導体メーカーに求めているのは、ソフトウエア定義型の仕組みだ。ソフトウエアのアプリケーションは自社で開発し、それ以外の部分のソフトウエアやハードウエアは半導体メーカーにやってほしいと考えている。そこでわれわれは自動車メーカーが必要とする幅広い製品ポートフォリオを用意し、それを容易に利用できる統合された開発環境を提供していくという、統合型のプラットフォーマーを目指していく」と述べ、自動車メーカーとも将来のロードマップをシェアして製品を作り上げていくと説明した。

xEV戦略
バッテリマネジメントソリューション
インバータ用パワーデバイス
Dialog由来のセンサー
ワイヤレスBMSソリューション
レーダーソリューション

 そのほかにも、電動化車両への取り組み、バッテリマネジメントシステム、インバータ用のパワーデバイス、Dialog由来のセンサー、レーダー向けのソリューションなどに関しても製品を充実していっていると説明した。