ニュース

ルネサス、低自己消費電流を実現してよりシンプルな電源設計が可能となる「デュアル出力同期整流コントローラ」

電圧を素早く昇圧・降圧することで、安定した電力を供給

2020年8月17日 発売

 ルネサスエレクトロニクスは8月17日、車載用の新たな42Vデュアル出力同期整流コントローラ2種「ISL78264」「ISL78263」を発売した。

 デュアル出力同期整流コントローラは、ルネサスの車載用SoC製品「R-Car H3」および「R-Car M3」を搭載する、車載インフォテイメント(IVI)やデジタルコクピットシステムの車載用電子制御ユニット(ECU)に最適な一次電源。どちらも外部MOSFETを駆動するための2Aソース/3AシンクMOSFETドライバを搭載し、自己消費電流はわずか6μA。

 デュアル同期整流降圧コントローラのISL78264は、12Vバッテリシステムから二次電源向けに5Vまたは3.3Vに降圧し、50W~200Wの電力を供給。デュアル同期整流昇降圧コントローラのISL78263は、バッテリ電圧(VBAT)がクランキング時や始動/停止時に2.1Vまで下がった場合でも、5Vまたは3.3Vまで昇圧し25W~100Wの電力を供給可能。

 ルネサスの車載アナログパワー&ビデオ事業部のVice PresidentであるNiall Lyne氏は「ISL78264とISL78263は、ルネサスの車載SoCファミリR-Car H3とR-Car M3にとって理想的な一次電源ソリューションとなります。これにより、車両の性能、効率、安全性、そして信頼性の向上につながる新たなシステム構成が可能になります。コントローラの常時ON機能と業界最小レベルの自己消費電流により、電源の設計者は新たなECUの電源システムを100A内に収めるために余裕ができることはもちろん、より厳しい50Aの制限内に収めることも可能になります。ISL78264とISL78263には強力なMOSFETドライバが組み込まれており、他の車載用の昇圧/降圧VBATコントローラソリューションと比較して、より高い効率とパワーを提供します」と述べている。

 今回発売したデュアル出力同期整流コントローラ2種は、シングル降圧チャネルよりもさらに優れた6A(標準)という低自己消費電流(Iq)を実現。どちらのコントローラも、96%のピーク効率で10Aを超える出力電流を供給する外部FETを駆動できるFETドライバを内蔵しているため、よりシンプルな電源設計が可能となる。

 これに加えて、クランキング時のサポートが必要な用途向けにフィードバック抵抗と外部給電ブロックダイオードを、またEMI干渉の問題への対策としてプログラム可能なスペクトラム拡散も搭載。例えば、VBATのロードダンプに耐えられることから、サージ保護に必要なコストとサイズを低減でき、またクランキング時の電圧降下に対応し、必要な入力容量も抑えられる。スイッチング周波数最大2.2MHzのEMI低減対策も内蔵しているので、EMI除去フィルタ/シールドのコストとサイズも抑えることが可能となる。

 さらに、過電圧(OV)、低電圧(UV)、過電流、温度過上昇、およびブートストラップ供給電圧低下検出の保護機能と、ハイサイドMOSFETを保護するためのリフレッシュ回路も搭載されていて、どちらも-40℃~+125℃の周囲温度での動作を保証するAEC-Q100 Grade-1にも適合している。

ISL78264デュアル同期整流降圧コントローラの主な特徴

・入力電圧3.75~42Vで作動
・降圧1出力は3.3V/5V固定、または0.8V~5Vの間で調整可能
・降圧2出力は0.8V~32Vの間で調整可能
・シングル降圧チャネルよりも優れた低自己消費電力6A(標準)
・低デューティサイクル稼働でのオン時間25ns、チャンネル間180度位相シフト
・始動から停止時の過渡的なクランキング電圧降下には、プリブーストを必要とせずに2MHzで5.5Vまで対応

ISL78263デュアル同期整流昇降圧コントローラの主な特徴

・入力電圧2.1~42Vで作動
・降圧3.3V/5V固定、調節可能
・コールドクランク時の過渡的な電圧降下には、2.1Vまで降圧出力を一定に調整可能
・昇圧周波数は降圧周波数の1倍または0.2倍
・高デューティサイクル稼働時はドロップアウトモード(降圧)
・低デューティサイクル稼働時のオン時間25ns