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ルネサス、Dialog買収でオンライン会見 ルネサス柴田CEO「自然な相互補完性を持った組み合わせ」

包括的な製品を揃えてソリューションを提供

2021年2月8日 発表

左からルネサス エレクトロニクス代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏、Dialog CEOのJalal・Bagherli氏

 ルネサス エレクトロニクスと英国のアナログ半導体会社Dialog Semiconductor Plcは2月8日、ルネサスがDialogを買収することで合意したと発表。同日オンライン説明会が開催され、ルネサス エレクトロニクス代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏と、Dialog CEOのJalal・Bagherli氏が登壇して、買収に関する背景を話した。

 Dialogは、パワーマネジメント、チャージング、AC/DCコンバータ、Wi-Fi、Bluetooth Low Energy(BLE)技術を提供する企業で、今回ルネサスがDialogの発行済普通株式と発行予定普通株式を1株当たり67.50ユーロですべて取得することで合意。買収総額は約49億ユーロ(約6157億円)に相当する。

オンライン会見を開催

 今回の買収について、Dialog CEOのJalal・Bagherli氏は「Dialogは過去数年にわたり、多様性を追求する戦略を実行し、高成長を遂げてきました。高性能のアナログ製品や低電力ミックスドシグナル製品・技術の強力な基盤を築き上げ、製品ポートフォリオを拡大し、5G、ウェアラブルデバイス、自動車、スマートホーム、コネクテッドメディカル、インダストリアルIoTなどの市場に製品・技術を提供しています。こうした製品・技術基盤が、ルネサスの組み込みプロセッサやアナログ・パワー製品と統合することで、今後ますますコネクテッド化が進む今日の世界での成長機会を拡大します。Dialog社一同、ルネサスの一員に加わることを大変嬉しく感じています。統合後は、ルネサスの幅広いセールス、ディストリビューション、顧客サポート網の下、革新的な製品を提供できるポジションになると考えています」とコメントしている。

一貫したテーマで買収を続けるルネサス

2017年に米国のアナログ半導体企業Intersil Corporation(インターシル)を買収し、2019年には同じく米国のアナログ半導体企業Integrated Device Technology, Inc.(以下、IDT)の買収を完了

 一方、ルネサスでは、これまでに2017年に米国のアナログ半導体企業Intersil Corporation(インターシル)を買収し、2019年には同じく米国のアナログ半導体企業Integrated Device Technology, Inc.(以下、IDT)の買収を完了している。

 過去の買収により、ルネサスは多様な人材を獲得してマネージメント力を強化。今回の買収もルネサスの取り組みの延長線上にあるもので、DialogのR&D部隊が加わることで低電力アナログ・ミックスドシグナルでのエンジニア陣および設計開発技術を拡充することを目的にしているという。

 説明会の中で、ルネサスの柴田氏は「ここ数年来、一貫したテーマで買収を行なっています。そのテーマというのは、1つはアナログ/ミックスド・シグナルの分野で、特に私達の製品ポートフォリオの中で不足感が強いものを中心に、強化を図ってきたということ。それから、アプリケーションですね、例えば産業用、自動車用、IoTといったアプリケーションのバランスをよりよいバランスにしていきたいと。それからより多様なアプリケーションに対応できるような製品、ビジネスを構築していきたいということ。そしてタレント、特にエンジニアを中心としますがエンジニア以外のタレントも含めて、買収した会社からの積極的な人材の登用を進めて、私たちはもっともっと国際的な企業になって、どんどん組織の活性化をしてきたいと考えて買収を行なってきました」と狙いを話した。

製品面でのシナジー効果が見込まれる事業領域

 Dialog買収による製品面でのシナジーについて、柴田氏は「特に今回のDialogの製品、技術が加わるとによって、もちろんいろんな分野が強化されるんですけれども、特に分かりやすい例で申し上げると、ボディとかインテリアの分野において、例えばコクピットに使われるLEDバックライトであったりとか、あるいはワイヤレスのカギに使う技術だったり、それから一部のADAS、ヘッドライトに使うLEDのドライバーが私たちの中に取り込まれることになります。こうした製品群が強化されることによって、これまで以上に幅広い、end to endというかcomprehensive(包括的)な製品を揃えたソリューションをオートモーティブ、それからインダストリアル、インフラ、IoTの分野に提供していくことができるようになると考えています」と話した。

地域別のエンジニア構成比

 また、人材面についてはDialogを買収することで、エンジニアの従業員構成が、日本人が46%、アメリカが16%、EMEAが16%、APACが21%になるという。

 柴田氏は「エンジニアの従業員人口に限定してお話をしていますけど、ルネサスは当然ですが日本が過半数を占めるエンジニアの人口構成を占めているのに対して、Dialogはヨーロッパが過半を占めるというような構成になってます。この両者が組み合わさることによって、特にアメリカとヨーロッパのバランスが非常に心地よい状態になって、アメリカが16%、ヨーロッパが16%ということで、地政学的状況も大きく変わりつつある中で、どこかの極に集中することなく、より多様な観点から研究開発の活動を継続的に行なえるようになるということが1つの魅力だなと考えています」と説明した。

コスト節減による統合効果は、買収完了から概ね3年以内に実現

 ルネサスではDialogの買収することにより、約2億米ドル(Non-GAAPベースの営業利益、約210億円)の売上増による統合効果を見込み、さらには業務効率化により、約1億2500万米ドル(Non-GAAPベースの営業利益の年間ランレート、約131億円)のコスト節減による統合効果を獲得する見込み。

 コスト節減による統合効果としては、買収完了から概ね3年以内に実現し、売上増による統合効果は買収完了から概ね4~5年以内に実現すると見込むとしている。

 今後の大型買収については、Dialogとの統合を成功させてからと前置きした柴田氏は「Dialogと私たちは、かなり素直な、自然な相互補完性をいくつも持った組み合わせだと思います。これまで同様もしくはそれ以上に皆さんに対してきちんと結果を出していけるだろうと思っています。あとは結果がすべてですので、ちょっと時間がかかりますけど、皆さんにしっかりアップデートをご提供していきますので、今後ともよろしくお願いいたします」との意気込みを述べた。