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ルネサス、製造キャパシティーの強化など「Analyst Day」で戦略を説明
2022年3月7日 13:07
- 2022年3月3日 開催
ルネサス エレクトロニクスは、3月3日に証券アナリストなどを対象にした「Analyst Day」を開催し、同社の長期的な戦略、自動車向け事業部の戦略などについて説明を行なった。
ルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長 兼 CEO 柴田英利氏は「製造施設に投資していき、キャパシティーを充実させていきたい。現在は検討段階でまだ詳しいことを話せる段階にはないが、ファブライト(所有する工場を減らしていく)路線を変えるものではない」と述べ、中長期的に製造キャパシティーを増やしていきたいと説明した。
また、ルネサス エレクトロニクス 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部長 片岡健氏は、自動車向け製品事業の状況などを説明した。
中長期的な投資として製造キャパシティーを増やす取り組みを行っていくと柴田CEO
イベントの冒頭で柴田氏は「現在ウクライナに私たちの200人を超える社員と協力してくださる方がいらっしゃり、多くの方が仕事を続けている。1日も早く一刻も早くウクライナと世界全体に平和が戻ることを切に祈ってやまない」と述べ、現地採用と見られる従業員の安全やウクライナと世界の平和を祈念することから話を始めた。
そして、2021年の3月に同社の那珂工場で発生した火災事故に関しても「多くの皆さまにご迷惑をおかけしたが、その後は多くは皆さまに信じられないほどのご協力をいただき、迅速に復旧することができた。この場を借りてお礼を申し上げたい」と述べ、火災直後には出荷量なども大幅に減少したが、8月ごろには元の水準に戻り、火災で傷ついた機器なども2台から使える部品を合わせて1台を使えるようにしたり、中古品を急ぎ調達したりするなど、さまざまな努力を行なったことで予想よりも早く復旧することができたと説明した。
その後、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みや、節水の取り組み、女性の社会進出などの社会貢献に関する目標設定などに関して説明した後、デザインウインの獲得に向けた取り組みの結果や目標が、2022年は2021年を上まわる見通しであることなどが説明された。
そして、柴田氏が就任以来掲げてきた株主価値の最大化に関する取り組みに関しては、新しい成長戦略の元、目標として掲げてきたデレバレッジ(信用を元に自己資本以上に借り入れなどを増やして自己資本以上の取引や投資などを行なうこと=レバレッジの状態を解消すること)を1年前倒しで実現したことなどを明らかにした。
また、今後の中長期の投資に関しては、何らかの形で製造キャパシティーを拡充させていきたいと説明。また、質疑応答の中で柴田氏は「中長期の目標という目線で、まとまった形でキャパシティーを増やせないかということを検討してきた。といっても今の所は工場を作ることは考えておらず、ファウンダリーとの関係でもう少し踏み込んだやり方などがあるのではないか」とも述べており、新しい工場を作るというよりはファウンダリーとの関係をより深くして、確実にキャパシティーを得られる方法などを検討していくとした。
ADASやコクピット向けのR-Car Gen3は急成長を遂げるが、生産キャパシティーで制限されて需要に追い付いていない状況
片岡氏は同社の自動車関連ビジネスの戦略に関して説明した。
まず同社の2つの主力製品となるマイコンのRH850とSoCのR-Car Gen3について「RH850はゲートウェイ、xEV、ADASで採用がされており、40nmでスタートしたが、28nmの製品も立ちあがっている。車両1台あたりの採用数が増えており、年平均成長率は40%になっている。R-Car Gen 3に関しては特にADASやコクピット向けが伸びているものの、売り上げは供給面で制限されており、需要に追い付いていない状況」と述べ、いずれの製品も業界標準を上まわる勢いで成長を遂げていると説明した。
その上で、車載製品事業における成長の柱に関しては「新興OEMや新興市場での新規顧客の獲得、そしてADASやxEVなどの新しいアプリケーション向けの製品の投入、さらにIDTやDialogといった企業を買収して得たアナログやパワー半導体などとセットで提供することで、売り上げを伸ばしていきたい」と説明した。特に成長市場や新興メーカー向けには、アジャイルな体制で製品を共有できるように専用の組織を伸ばして対応したことで、多く伸ばすことができたと説明した。
片岡氏は「今求められていることは、お客さまの開発を容易にするソリューションだ。例えばソフトウエア開発環境は、従来はECUごとにあったが、これからはマルチなECUにまたがって開発できる環境を用意していく」と述べ、これからもソフトウエア開発環境を充実していくことが重要で、現在も日々充実させているところだと説明した。
そしてADAS関連ではアナログ関連の製品を投入して、センサーフュージョンをルネサスのソリューションだけで実現できるようにし、従来に比べて4倍の利用率を実現できると説明した。
xEV向けにはここ数年の買収で、アナログ半導体やパワー半導体のラインアップを強化、組み合わせてトータルで提供
ルネサス エレクトロニクス 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部 副事業本部長 ヴィベック・バーン氏は、xEVと呼ばれる電動化車(EV、HEV、PHEVなどの総称)向けのソリューションについて説明した。
バーン氏は「2021年にはデザインインが420%増えた。今後の長期的な成長率は40%以上を見込んでおり、市場平均の25%よりも高くなると見込んでいる」と述べ、そうした高成長を実現するために、アナログ半導体やパワー半導体などにも投資を行ない、他社との差別化を実現することに集中していると説明した。
「重要なことはお客さまにトータルのソリューションを提供することだ。すでにさまざまな製品群をラインアップしており、フルラインアップでお客さまにソリューションを提供できる」と述べ、インバーター、DC/DC、充電器、バッテリ管理システムなどに複数の製品を用意していると説明した。
そして今後の戦略としては、他社をリードするような製品群とレファレンスデザインなどを充実させることで、タイムツーマーケットで導入できること、さらにターンキー(顧客がルネサスの設計そのままを製品に実装できるようなデザイン例のこと)の最適化、機能安全や品質の向上などを今後の成長の鍵としてあげた。