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ルネサス エレクトロニクス、2022年Q1決算を発表 売上収益は前年同期比70.2%上昇の3467億円

2022年4月27日 発表

ルネサスの2022年Q1決算説明会。画面右上からルネサス エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長兼CEO 柴田英利氏、左上がルネサス エレクトロニクス株式会社 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部長 片岡健氏、下段はルネサス エレクトロニクス株式会社 執行役員 兼 CFO 新開崇平氏

 自動車向け半導体などを提供する半導体メーカーのルネサス エレクトロニクスは、4月27日の午後に2022年度第1四半期(12月期)の決算発表会を行なった。その発表会の後には、ルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長兼CEO 柴田英利氏、同 執行役員 兼 CFO 新開崇平氏、同 執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部長 片岡健氏による、決算に関する説明会と質疑応答が行なわれた。

 ルネサスが発表した決算資料によれば、同社の2022年第1四半期の売上収益(売上高)は3467億円で、前年同期(2021年第1四半期)と比較して70.2%の大幅アップ、前四半期(2021年第4四半期)と比較して10.3%のアップ、さらに事前に出されていた予測値に比較して3.2%のアップと、前期に引き続き好調な決算となっている。

7期連続売上収益が増加、前年同期比70.2%アップの3467億円を記録

ルネサス エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長兼CEO 柴田英利氏

 冒頭でルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長兼CEO 柴田英利氏は「第1四半期の売上は事前の予測に対して上振れする結果となった。多くの皆さまが注目されている在庫はそれなりに増えていることも影響しているが、為替や価格変動、チャンネルの取引形態の変更なども影響している。工場の稼働率に関しては3月に地震が発生して停電が発生したことも影響し、3月後半にはウエハー(半導体素子製造の材料)を多く投入したことも稼働率の上昇に影響している。また、本日弊社としては初めてとなる少しまとまった規模の自社株買いをアナウンスさせていただいた」と述べ、同日に発表した「自己株式の取得及び自己株式の公開買付け」について触れた。

2022年第1四半期の決算概要
ルネサスの売上収益の四半期推移

 その後、ルネサス エレクトロニクス 執行役員 兼 CFO 新開崇平氏が、同社の2022年第1四半期の決算について説明した。それによれば、売上収益(売上高)は3467億円で、前年同期(2021年第1四半期)と比較して70.2%の大幅アップ、前四半期(2021年第4四半期)と比較して10.3%のアップ、さらに事前に出されていた予測値に比較して3.2%のアップという結果になった。同社の売上収益が前期比で増えているのは7期連続で、同社が好調に成長していることが見てとれる。

売上総利益率と営業収益率
工場稼働率

 企業収益の健全性を示す指標の1つとされている売上総利益率(グロスマージン)は58.4%となり、前年同期比で8.2ポイントアップ、前期比で4.1ポイントアップ、予測値と比較して2.8ポイントアップという結果。さらに、いわゆる利益となる営業利益は1355億円になり、前年同期比で829億円のアップ、前期比較で368億円のアップ、予測値との比較で196億円のアップになったと説明された。また、売上収益の3467億円のうち、自動車は1539億円で、前年同期比で49%アップ、前期比で16.9%のアップとなっている。

 売上総利益率などがいずれも予測に対して上振れした理由として、新開CFOは「為替、製品ミックスの変更などが大きく寄与している」と述べ、為替の変動のほかに、製造する製品の割合を変更することなどが大きく影響していると説明した。

第2四半期予測

 また、第2四半期の予測に関しては、売上収益は3750億円(±40)と引き続き昨年同期比で大幅に増えると予測しているが、売上総利益率は若干下がって57.5%、営業利益率は36.5%と今期から2.6ポイント減少する見通しであると説明した。

自動車向けはEV需要などが強い中国市場が成長、RH850やR-Carの最新製品は製造が追い付かないほどの強い需要

3月の地震の業績への影響

 柴田CEOの冒頭コメント、新開CFOの決算内容解説などの後には、証券アナリストなどとの質疑応答が行なわれた。

──TI(Texas Instrument)の決算説明会でも中国各地でのロックダウンなどの影響があると説明していた。そうしたことのルネサスへの影響は? また、3月の地震の影響について教えてほしい。

柴田氏:中国の様子を読むことが難しいのは事実だ。弊社はTIに比べると中国の影響が小さいポートフォリオ(製品群)になっているので、TIほど大きな影響は起きないと考えている。しかし、空港を中心とした物流や工場の影響はまだ分からない。さらにもっと分からないのは需要側の事情だ。そうしたことを考えるとリスクが全くなくはないが、それなりに吸収できるレベルのリスクだと判断している。

 3月の地震、それに伴う停電の影響については、それなりのインパクトはあったが、弊社のリカバリーの努力、製造パートナーの踏み込んだサポート、そしてお客さまでも努力をいただいて三位一体の合わせ技でそれなりにおさえることができた。それですべて帳消しになった訳ではないが、一定程度インパクトは押さえ込むことができている。そうしたリスクも、第2四半期の予測には織り込んでいる。

──決算説明では在庫に関する説明もあったが、アプリケーション別にもう少し教えてほしい。

柴田氏:アプリケーション別にはなかなか難しいが、中国を中心とするスマートフォンは弱く、Chromebookも同様に去年から弱くなっている。ノートPCやコンシューマ向けの製品は、顧客からの聞き取りでは堅調継続となっているが、少しそれは疑ってかかった方がいいと思っている。実際に製品のミスマッチが昨年末から起きており、第1四半期には在庫の積み増しが発生している。第2四半期はそれを調整にいき、チャンネルの在庫を消化させる時期になると考えている。

──売上総利益率の予測に関して、売上は増えているのに、売上総利益率は減ることになるのは?

新開氏:自動車などが端的な例だが、相対的に売上総利益率が低い製品の出荷が増えることが影響だと考えている。原材料費の高騰も引き続き高い水準で、為替の影響もある。

──原材料の高騰は、ファウンダリーのコストが上がるからか、それとも自社工場で使う原材料が上がるからなのか? その対策は?

新開氏:全部だ。ファウンダリー、自社工場の部材、電気に関連する原油の価格、それらが大きく寄与する。引き続き、コスト削減と原材料費の低減を、時間をかけてやっていく。短期的には供給を重視すべき局面だと考えているのと、製品価格への転嫁も検討しないといけない状況だ。

柴田氏:原材料の高騰はものすごい勢いで起きている、われわれも楽観していない。

──チャンネルの向こう側の在庫に関してどう思うか? 特に自動車。自動車がそこまで改善していない中で、自動車メーカーに在庫がたまっているのではないか?

片岡氏:OEM(自動車メーカーのこと)は増産という計画の中で部材が入らず、中国やウクライナ紛争などの影響を加味して減産している状況で、その影響はある。われわれの直接の顧客であるティアワンサプライヤーの在庫水準は上がってきているが、危険水準ではない。ざっくり言うと、1~2か月程度で、それも製品によって濃淡がある。現在はお客さまと密に連絡を取っており、在庫が十分であれば他の顧客に回すなどの措置を行なっている。ルネサス全体でそういう最適化を行なっているということだ。

柴田氏:主要な顧客における弊社製品の在庫状況はかなり細かく把握している。どの製品がどこに何個あるのか、どう使われていくのかは、詳細に把握している。一部(そうした在庫の積み上げ)はあるけれど、全体感として怪しいなという感じはなく堅調だと考えている。

──自動車に関して供給はよくなっていくと思うが、製品別に見たときに需給の強弱はどうなっているか?

片岡氏:xV(EVやHEV、PHEVなど電動車のこと)が伸びている中国などの需要は依然として強い。ただ、われわれは出荷できていても、同じ車両に搭載される他社製品が出荷できていないと需要が減るという状況。RH850やR-carなどの新製品は今立ちあがっているところで、需要が非常に強く出せ切れていないという状況が続いている。

──売上総利益率について、上がり下がりについてどう考えているか?

柴田氏:短期的には上がり下がりがある。いたずらに60%を目指しているとかではなく、55~60%の枠に入っていればよしとして、今後の投資により成長を加速する方向に持って行きたい。それが57、56、50みたいに下がっていってしまうのはよくないが、すぐに59にしなければいけないとは考えていない。

──来年売上をあげるためにフォーカスしていることは? 半導体逼迫の解消はいつになるのか?

柴田氏:現在の動向が急反転するのではという懸念はわれわれも持っている。在庫の数字などを追っていくと堅調に伸びているのだが、それが本当にエンドの需要に結びついていないのではないかという懸念は持っている。そこでお客さまと来年に向けての受注をいただくお話をするときには、今年は本当にこんなに使いますか? というような話も同時にしている。お客さまによっては来年確実に供給してもらえるなら今年はなくてもいいという話が出てくるのではないか。そうした顧客在庫を間引いて、下げる方向にいって、それが来年の需要になっていくことを思い描いて顧客とのやりとりを行なっている。

 現在は昨年と同じようにノンキャンセルのオーダーを改めて行なっている。アプリケーションやセクターで見え方は異なっているが、クラウドデータセンターや自動車向けはかなり強い状態で継続していくのではと考えており、3か月かけてしっかりとした数字を積み上げていきたい。

 そうした作業により、(半導体逼迫に関しては)今年の下期にはある種の正常化がされると考えている。ただ、顧客の段階では(ルネサスの供給が十分でも他社の供給が十分ではないため)必要な部材が集まらず作れないという状況が続いている。そうした顧客の段階で正常化が進むというのはまだ先になると考えているが、昨年のように誰もが右往左往して大騒ぎしている状況とは違ってきている。

ルネサスは同日に自社株購入を発表

──自社株買い、今年は配当などの株主還元はこれで打ち止めになるか?

柴田氏:先のことは分からないが、現時点では今年はこれでいいと考えている。