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JVCケンウッド、2022年3月期通期決算は売上収益2821億円、営業利益91億円で増収増益
2022年4月28日 05:10
- 2022年4月27日 開催
JVCケンウッド長野での生産開始や子会社の売却などで増収増益
JVCケンウッドは4月27日、2022年3月期通期(2021年4月1日~2022年3月31日)の決算説明会をオンライン開催した。
2022年3月期通期の売上収益は2821億円(前年比85億円増)、コア営業利益は71億円(同3億円減)、営業利益は91億円(同42億円増)、税引前利益は85億円(同40億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は59億円(同37億円増)となった。
オンライン説明会では、JVCケンウッド 代表取締役 専務執行役員 最高財務責任者(CFO)宮本昌俊氏が解説を実施。
宮本氏は最初に決算概要を紹介して、とくに第2四半期以降、主にM&T(モビリティ&テレマティクスサービス)、PS(パブリックサービス)の事業領域で半導体などの部品供給不足による影響を大きく受けたものの、2020年から発生した新型コロナウイルス感染症の影響が減少して売上が戻りつつあり、売上収益は対前年比で増収になっているとした。
一方、コア営業利益は3億円減の71億円となっているが、これも部品供給不足による生産の遅れとこれに伴う売上の減少、経費の増加を原因として説明。42億円増の91億円で大幅増となっている営業利益については、その他収益として子会社の売却益、金融資産の評価益などを計上したことによる大幅増益であると解説した。
2022年は第2四半期まで部品不足の影響を受けて苦戦したが、不足する部品に対応するための設計変更、新製品の導入が間に合ったことなどが好材料となり、下期の第3四半期、第4四半期に売上収益、コア営業利益の挽回を実現しているという。
2022年3月期通期における営業利益の増減要因では、部品供給とコストアップの影響が116億円の減益要因となったが、固定費・経費削減が74億円、設計変更と新製品の導入、値上げなどの効果が28億円の増益要因となり、これに加えて子会社の売却益と金融資産の評価益が34億円の上乗せとなったことなどで、前期の49億円から42億円増の91億円という結果になっている。
サプライチェーンの問題では、直近の第4四半期で39億円、通期で337億円の売上収益減という影響を受け、M&Tでは3月に入って中国・上海で実施されたロックダウンにより工場での生産がストップしたことも悪影響になっているという。また、PSでは現在でも引き続いて半導体不足の影響が出ており、世界的な物流の混乱でも船便などを中心としたリードタイムの長期化が続いているが、第3四半期まで大きな懸念材料となっていた米国における通関業務は改善して、米国販売の改善につながっていると説明した。
サプライチェーン問題の対応策では、国内アフターマーケット向けのAVナビゲーションシステム「彩速ナビゲーション」の生産を、1月からJVCケンウッド長野に移管。予定どおり自動化生産ラインが稼働しており、国内向けでは計画を上まわる生産を実現しているという。今後もJVCケンウッド長野での生産を増やし、中期的に50万台生産の規模を目指していくと述べた。
地域別の売上収益では「アジア 中国」が中国でM&Tの分野でOEM事業が好調に推移し、「日本」も第3四半期まで対前年で減収だったところが、M&T分野の好調により第4四半期で巻き返している。
2023年3月期は売上収益3000億円、営業利益80億円と業績予想
すでにスタートしている2023年3月期の通期業績予想では、売上収益は179億円増の3000億円、コア営業利益は24億円増の95億円、営業利益は11億円減の80億円、税引前利益は15億円減の70億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は19億円減の40億円とした。
前期第4四半期までの実績で生産なども回復基調となっていること、M&Tで新規用品の案件を受けていることなどを受けてコア営業利益を増益予想としているが、前期に子会社の売却益、金融資産の評価益などで34億円を計上した影響から、営業利益などは減益の見込み。しかし、本業の実力を示しているコア営業利益を大きく伸ばす計画で問題はなく、配当も1円増配の7円にすると発表した。
営業利益の増減要因では、これまで発生していた半導体不足による影響が改善されることで74億円、コストアップに対応する価格の値上げなどで62億円、売上収益の増加による22億円などの増益要因を挙げ、半導体に限らない部品全般のコストアップで90億円、生産増に対応する工場作業員の人件費といった固定費増で45億円、その他収益費用で1億円といった減益要因を吸収。これに、子会社の売却益などで前年に発生した34億円の影響が入ることで減収予想としている。
中期経営計画「VISION2023」も順調に進めて成果を得ている
このほか説明会では、2021年5月に策定された中期経営計画「VISION2023」の初年度における進捗についても解説。これまでにビデオカメラの生産終了や子会社売却といった「事業ポートフォリオの再構築」、タイで展開してきた生産拠点の閉鎖とJVCケンウッド長野への回帰などによる「収益基盤の強化」、サプライチェーン問題に対応する部署の設置やサイバーセキュリティ対策の強化といった「経営課題への対応」などを順調に進めて成果を得ているとした。
好調に推移している成長領域として「テレマティクスサービス」「無線システム」を紹介。今後もさらなる展開と成長を期待しており、来年度に向けても売上を大きく伸ばす計画を進めているという。また、前日の4月26日に発表した、日産自動車、フォーアールエナジーと共同でBEV(バッテリ電気自動車)「リーフ」の再生バッテリをリサイクル利用するポータブル電源の開発についても取り上げ、サステナブルな社会実現に向けた経営にも取り組んでいくとしている。
円安傾向が続けば国内生産回帰をさらに進めていく
質疑応答では社会問題にもなっている円安傾向がビジネスに与える影響について質問され、宮本氏は同社の事業における海外比率は非常に高く、海外生産の取り引きを米ドル立てにしていることから、海外で生産した製品を日本に輸入する場合はコスト増になっている。しかし、同社では1年分程度の為替予約を常に行なっており、年明けから発生している急激な円安に対しては来年度に向けても予約で固まっており、一部の売上を除けば2023年3月期の利益などもそれほど大きな影響は出ないだろうと考えていると説明。
ただし、この傾向がさらに続けばその先の2024年3月期には影響が出てくるため、すでに実施している国内生産回帰をさらに進めて“日本で売る製品は日本で作る”という流れにすることも考えていくとした。
また、JVCケンウッド長野での生産についても宮本氏は補足を行ない、日本回帰の一番の目的はタイムラグの短縮であると紹介。海外の工場で生産した製品は日本の店頭に並ぶまで2~3週間のタイムラグが必要になるが、国内生産なら翌日には販売店に送ることが可能になると述べ、休日出勤といった現場の努力もあって、3月中に生産した製品を第4四半期のギリギリまで出荷する体制で臨んでいたと明かした。
【お詫びと訂正】記事初出時、本来「円安」であるところ「円高」と表記していました。お詫びして訂正させていただきます。