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日立アステモ、EV向けインバータ用パワーモジュールの絶縁構造が全国発明表彰の内閣総理大臣賞を受賞

2022年5月31日 発表

開発したEV向け800Vインバータ(左)と、両面冷却パワーモジュール(右)

 日立製作所と日立Astemoは5月31日、EV(電気自動車)向けインバータに用いられるパワーモジュールの絶縁構造に関する特許(特許第6200871号)が、科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ顕著な実施効果を上げている発明であると評価され、2022年度の全国発明表彰「内閣総理大臣賞」を受賞したと発表した。

 EV向けインバータの高電圧化は、EVの加速性能向上や短時間充電に有効で、今回インバータに用いられるパワーモジュールの絶縁構造を新たに考案したことで、高い絶縁耐圧と放熱性能を両立することに成功。これにより、インバータを従来の400Vから800Vに高電圧化でき、小型・高出力化を実現することで加速性能向上や短時間充電が可能になるという。

中間導体を内蔵した絶縁樹脂構造を発明

 パワーモジュールに用いられる樹脂絶縁シートは、熱源となるパワー半導体を搭載した導体板と放熱フィンを接着しており、「絶縁性」「放熱性」に加え、熱膨張差による熱応力に耐える高い「接着性」が求められる。しかし、「絶縁性」を向上するためにシートを厚くすると「放熱性」が低下してしまうため、従来の発想ではこの3つの機能を同時に成り立たせることは困難だった。

 そこで従来の樹脂絶縁シートの中央に、浮遊導体である“中間導体”を内蔵することで、絶縁層に加わる電圧を分割して低電圧化し、絶縁層の組成変更とシートを厚くすることなく絶縁耐圧の向上が可能となる構造を発案。これにより、接着性を維持しつつ絶縁性と放熱性のトレードオフ解消を実現したという。

パワーモジュールの絶縁構造比較

 日立と日立アステモは、今後もインバータなどキーコンポーネントの技術革新を通じてEVの普及を促進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するとしている。