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三菱自動車、第53回定時株主総会「PHEV技術をベースとしたハイブリッドカーをアセアン市場から投入」と加藤社長

2022年6月23日 開催

三菱自動車工業の第53回定時株主総会で議長を務めた三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は6月23日、第53回定時株主総会を開催。今回は前年も行なわれたオンライン配信に加え、都内のホテルにも会場を設けてハイブリッド形式で実施された。

 今回の株主総会では、第1号議案の「定款一部変更」、第2号議案「取締役13名選任」について決議。第1号議案は、2022年9月1日に「会社法の一部を改正する法律」が施行されたことを受けた議案、第2号議案は3人の新任を含めた取締役13人を選任する議案となっており、両案とも原案どおり承認可決された。

シェラトン都ホテル東京に用意された会場の様子
取締役に新任された3人。左から稲田仁士氏、垣内威彦氏、三毛兼承氏

 このほかにも、議長として登壇した三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏が2021年度の事業報告と主な取り組み、今後の経営戦略について報告を行なった。

 2021年度の業績については前年度比17%増の93万7000台を販売し、売上高は前年度比40%増の2兆389億円となったが、配当については重要施策の1つと位置付けつつ、配当原資の不足を理由に無配とした。

 主な取り組みでは中期経営計画「Small but Beautiful」に沿ってさまざまな取り組みを実施。新型「アウトランダー」「エクスパンダー」の市場投入に加え、3月に中国市場でSUVタイプの新型バッテリEV(電気自動車)「エアトレック」を発売したことを紹介した。

 また、構造改革も積極的に進めており、中期経営計画のファーストステップとして掲げた営業利益500億円、営業利益率2.3%という目標を1年前倒しで達成したことも報告している。

三菱自動車の2021年度業績サマリー
3月には中国でSUVタイプの新型バッテリEV(電気自動車)「エアトレック」を発売
国内生産体制の再編を計画どおり完遂
中期経営計画のファーストステップ目標は1年前倒しで達成している

 経営戦略では“三菱自動車らしさ”を訴求する取り組みに注力。「環境×安全・安心・快適」を新たな三菱自動車らしさとして再定義し、これを体現する新たな商品として、6月に販売を開始した軽自動車のバッテリEV「eK クロス EV」が好評を得ており、今秋の販売再開を予定する「ミニキャブ・ミーブ」も多くの企業に試験導入され、実証試験が進められていると強調した。

 加藤氏は「2022年度も厳しい経営環境が持続すると予想されますが、常に課題を洗い出し、1つひとつ解決していくことで損益目標を達成して、次期中期経営計画につなげていきたいと考えております」と語った。

「eK クロス EV」は先行注文の受付開始から1か月で月販目標の4倍となる約3400台を受注
「ミニキャブ・ミーブ」も今秋の販売再開を予定している

質疑応答

質問で挙手した株主を指名する加藤氏

 質疑応答では会場に足を運んだ株主からの質問に先立ち、事前にインターネットを通じて寄せられた事前質問で多かった「商品戦略について」「配当について」の2点について加藤氏が回答。

 商品戦略については電動車の面で、現中期経営計画で独自技術とアライアンス技術を融合することにより、環境対応車のラインアップ強化に努めており、2021年まではPHEV(プラグインハイブリッドカー)に注力。「エクリプス クロス PHEV」「アウトランダーPHEV」を順次展開してきた。とくに2021年12月に発売した新型アウトランダーPHEVの反響は同社の予想をはるかに超えたものとなり、エクリプス クロス PHEVと合わせて販売が好調だとアピール。

 バッテリEVでは3月に中国で発売した新型エアトレックを皮切りに、日産自動車と共同開発したeK クロス EV、今秋に販売再開予定のミニキャブ・ミーブという3モデルを展開。「電動車については他社と比較しても充実したラインアップである」との見方を示した。

 また、PHEVとバッテリEVのそれぞれを用意した背景としては、現時点では中・長距離を走行する比較的サイズの大きめなクルマにはPHEVが、比較的短距離で使われる軽自動車などにはバッテリEVが最適であるとの分析によるものだと説明。

 中・長距離を走行するバッテリEVを手ごろな価格で提供し、充電を心配することなく使ってもらうためにはさらなる技術の進歩、充電インフラの整備を待つ必要があるとの見解を示した。そのため、バッテリEVとしては現有モデルを活用しながら知見を深めていき、アライアンスとも歩調を合わせながら技術を進歩させて将来的なバッテリEVの需要拡大に備えたいとした。

 一方でハイブリッドカーの需要は当面拡大が続いていくと予測しており、PHEVに加えてPHEVの技術をベースとしたハイブリッドカーをアセアン市場から投入。2022年度以降はアセアン市場の強化サイクルに入り、コアモデルとなっている「トライトン」の次期型車両を新車攻勢の先陣を切るモデルとして送り出すべく、生産開始に向けた準備に万全を期して取り組んでいると明かした。また、こうしたアセアン向けに開発する車両は一部を変更することで日本を含めた他市場にも展開可能であり、こうしたモデルを活用してアセアン事業を強化しつつ、“三菱自動車らしいクルマ”を他地域にも展開してラインアップの充実を図っていきたいと語り、2022年度を「新車攻勢に向けた販売強化の重要な1年」と位置付け、これに向けた販売強化施策を確実に実行していくと述べた。

 配当については、同社は2020年度から構造改革に伴う純損失を計上した結果、現時点でも配当原資が不足しており、2021年度も配当を見送っている。しかし、株主に対する配当は常に同社にとって最重要の責務であり、早期に復配できるよう全力を尽くしており、まずは計画した利益を積み上げ、海外子会社で積み上がっている内部留保の活用といった施策を実施。計画どおりに進めば配当の原資不足は今期中に大きく改善されていくと想定しているが、ロシアによるウクライナ侵攻、中国のロックダウン、半導体不足など、見通しの難しい問題が大きくマイナス方向に働く可能性も十分に考慮する必要があるとした。

 これにより、可能な限り早期の復配を常に念頭に置いて取り組んでいくとしつつ、今後の配当については慎重に検討していきたいと説明した。

ルノー新バッテリEV会社への出資は「本当にメリットがあるのかしっかり確認して結論を出したい」

 会場の株主から寄せられた質問では、ルノーが新たに設立するバッテリEVの事業会社に、アライアンスの日産、三菱自動車でも拠出するよう求められている点について問われ、加藤氏は「現在当社としてはルノーの考えなどを確認している段階です。皆さまもご存じのように電動化などで技術はどんどん進展していきますので、他企業との協力は非常に重要だと考えています。ただ、現時点では細かい部分まで含めた確認中です。最も大事なのは、新しく分社される会社が当社にとって価値を持つものなのかどうかという判断が一番重要であります。まだ配当も出せていないような状況ですので、本当にメリットがあるのか、株主の皆さまをはじめとするステークホルダーの皆さまにご理解いただける内容なのかしっかりと確認した上で最終的な結論を出したいと考えております」と回答した。

 また、三菱自動車のブランディングや認知度をどのように認識しているのか、今後はどのような施策を行なっていくのかといった問いかけに対しては、同じく加藤氏が「ブランドについてはさらなる強化が必要であると役員、社員一同考えていて、ブランドに関する特別な検討会を私も参加して大々的に開催して『いかに三菱のブランド力を強化していくか』を検討しております」。

「1度ブランド力が落ちたということの反省の1つに、例えばクルマを投入する仕方についても、われわれはいろいろな地域で事業を行なっていて、地域ごとに異なる『売れそうなクルマ』を考えてはどんどん造ってしまうということで、施策が定まらないままクルマ造りをしていました。その結果、いろいろなクルマを造っては、逆にそのクルマをアップデートさせてよいものにしていく工数が足りなくなって、古いクルマをずっと売り続けなければいけないという状況もありました。そういったところもブランド力を落としていた部分です。注力すべきはどこなのか、われわれが造りたい、お客さまに求められる目指すべきクルマはどんなものなのかを真剣に検討しておりまして、それをこれからの数年で登場させていきたいと考えていますので、期待も込めてお待ちいただきたいと思います」と述べている。