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三菱自動車、第52回定時株主総会「商用BEVの改良モデルを2~3年後に出す」「当面はPHEV推しでいく」など今後の展開が語られる

2020年6月23日 開催

登壇した取締役 兼 代表執行役CEOの加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は6月23日、第52回定時株主総会を開催した。今回も前年に引き続き株主の健康を最優先とし、本社会議室で入場制限を設け一部の株主のみ列席したが、基本的にオンライン配信で行なわれた。

 議長として壇上した取締役 兼 代表執行役CEOの加藤隆雄氏は、2020年度の業績が赤字決算であったことをお詫びし、現段階では資金を確保しながら、構造改革を推しめることが中長期的な観点で重要であると考えて今期は無配にしたと告げ、重ねてお詫びした。また、本年度は必ず業績を回復し、再配につなげたいと決意を語った。

質疑応答(要約)

 質疑応答では、事前に提出されていた「今後の商品戦略について」、特に電動化やカーボンニュートラル、国内販売について多くの株主が関心を寄せていたとし、加藤氏は選択と集中を行ないながら、環境とともに安全・安心・快適を提供することが三菱自動車らしさだと再定義し、電動化技術とオフロードの高い走破性を持ったSUV技術、機能的で楽しい空間での快適性能を体感できるクルマ造りをしていきたいと述べた。

 また、環境への取り組み方針については、2020年11月に30年後を見据えて策定した「新環境計画パッケージ」を発表し、2030年までの具体的な取り組みを明確にした「環境ターゲット2030」では、主な目標として2030年までに新車からのCO2排出量を40%削減(2010年度比)と事業活動からのCO2排出量を40%削減(2014年度比)を掲げ、「達成するためにすべての車種に電動車を設定する」と明言。合わせて「先進国を中心にインフラ整備が整った国や排出ガス規制の厳しくなる国や地域には電動車を積極的に導入する」と今後の方針を語った。

ミニキャブ・ミーブ

 特に三菱自動車は、電動車のパイオニアで他社に負けない技術があり、「ミニキャブ・ミーブ」が商用車として活躍してきたこと、「アウトランダーPHEV」が世界でもっとも売れたプラグインハイブリッド車となった事例を説明しつつ、合わせて現在BEVの軽自動車を日産自動車と共同開発していることも紹介。また、加藤氏は「電動化に向けて自社の技術とアライアンスのさまざまな技術を組み合わせられることが強みである」と力説した。

 さらに、急速に進んでいるカーボンニュートラルの取り組みは同社にとって大きなチャンスであると捉えていて、BEVの軽商用車は運送業界の課題となっている「ラストワンマイル」に対する最適解であると持論を述べ、商用のBEV軽自動車は国内だけでなくアセアンへの拡大も見込んでいるとした。

 ミニキャブ・ミーブについては、国内では日本郵便など利用企業が増えるとともに商品の改良も進めていて、2~3年以内に改良モデルを導入する予定だと明かした。また、ラリーアートブランドは純正アクセサリー、いずれはラリーへの関与も検討していると締めくくった。

 役員選任への質問については、2019年に15名でスタートしたが、多すぎるのではないか? との声もあり、今回は13名にすると発表。ジェンダーの点も含めさまざまな観点で検討しながら、今後も人選していくとした。また役員報酬については、厳しい現状を受け止め、株主との価値共有の観点から報酬総額を33~45%減としたことを発表。2021年度の報酬についても役に応じて10~20%減額することも明かした。これは業績目標を100%達成しても19~30%の減額になるとのことで、最後に今後の成長に全力を尽くすとした。

サスティナビリティ活動の進捗

 続いて来場者からの「BEVのパイオニアといっても、その後の存在感がいまいち足りない感じがしている。鉄道会社と組んで駅前でBEV軽自動車のシェアカー事業などをやってみたらどうか?」といった質問にたいして加藤氏は「BEVが儲かるかという問題がある」と製造原価に対して回収が難しいことを示唆。とはいえ、アライアンスと提携したり他企業と一緒に開発していくことは重要で、現時点でもすでに大手企業20~30社とさまざまな協業ができないかと話しをしているし、実証実験も行なっていることを明言。ただし、現時点では鉄道会社との話はないとのことで、そういった協業も検討していくとした。

 次に「ヨーロッパが好調とSNSなどで見かけたが、ヨーロッパ戦略は縮小・撤退であると報道されている。どちらが正しいのか? アライアンスに遠慮しているのではないか?」という質問に対し、加藤氏は「縮小の背景としては、ヨーロッパ市場は今後BEVの競争が激しくなるし、いろいろな規制も厳しくなる。これに対して当社の今の規模では対応が難しい。攻めるとなると開発費がかかるし、台数を売らないと回収できない。そのため一旦縮小して、ヨーロッパ市場の事業性を考え直す。アライアンスに遠慮することは一切なく、必要であればアライアンスに協力もあおぐ」と回答した。

2014年に23年の幕を降ろしたランサーエボリューションX

 さらに「2015年のランエボ終了以降、現在のラインアップにセダンやクーペ、スポーツカーが皆無だが、ラリーアートブランドの復活から何が起きるのか? ランエボの復活はあるのか? エボリューションモデルは無理でもMT車で楽しめるクルマを作ろうという考えはないのか?」とい質問に対して加藤氏は、「今の状況については、これまでの商品展開のやり方に問題があったのかもしれない」と前置きしつつ、「今は三菱らしさの再定義が必要で、昔ながらの三菱自動車の楽しさを知る人員の意見を取り入れた結果、ラリーアートの復活を決断した。スポーツカーが自動車メーカーの花形であることは理解しているので、さまざまな可能性を考えたい。ただし、BEVは開発費がかかるし、赤字も続いているので、まずは会社の体制を整えることが最優先で、いずれは少しでも出せるように頑張りたい」とコメント。

 続けて長岡副社長は、質問を投げた株主に感謝を述べたのち、「現状ではセダンタイプやスポーツカータイプの商品計画はない状態にある」と明言。しかし、ランサーエボリューションの根幹の技術である「S-AWC」などは進化した形でエクリプス クロスやアウトランダーにも入っていて、これまで培ってきた技術は脈々と生きているので、まずはそれをご堪能いただきながら、将来についてご期待いただきたい」とした。

アライアンスを活用した新型アウトランダー
すべて三菱自動車が手掛けているエクリプス クロス

 また、エクリプス クロスのようにアライアンスを利用していない、すべて三菱自動車が手掛けた車両が少ないとの指摘に対し、長岡氏は「アメリカで発売が始まったアウトランダーは、アライアンスで共有したプラットフォームを使用しているが、ボディも内装もすべて異なるもの。各社が渾身を込めた車両になっているので、まったく別物といってもいい。先行して試乗してもらったモータージャーナリストにも“これぞ三菱自動車のクルマ”と評価をいただいているので楽しみにしてほしい。車体の共有化が必ずしもバッヂ違いにはならない。ちゃんと自分たちのクルマを作りたいという意思があれば問題ないと考えている」と回答した。

 さらに2030年をめどに全車BEVをうたうメーカーもあるが、三菱自動車はプラグインハイブリッドを全面に押し出していくと宣言。電気を作る部分のCO2排出に課題があり、現状はプラグインハイブリッドが優れているとの考えを示した。