ニュース

三菱自動車、2019年度通期決算。売上高は2兆2703億円、営業利益は前年度比89%減の128億円と減収減益

選択と集中の考え方に沿って、より強い危機感を持ってコスト構造改革に取り組むと加藤CEO

2020年5月19日 発表

2019年度 業績サマリー(前年度/前年同月比)

 三菱自動車工業は5月19日、2019年度通期決算の内容を発表。あわせて電話会議形式にて決算説明会を実施した。

 2019年度通期(2019年4月1日~2020年3月30日)における三菱自動車の販売台数は、前年度比9%減の112万7000台、売上高は前年度比10%減の2兆2703億円、営業利益は前年度比89%減の128億円と減収減益。また、経常利益は1237億円減のマイナス38億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1587億円減のマイナス258億円となった。

 代表執行役CEOの加藤隆雄氏は説明会の冒頭で「2019年度はとても厳しい環境だった。世界の自動車需要減少が継続するなか、比較的堅調であったアセアンも中国の景気減速の影響を受けて軟調に推移。さらに2020年に入り、顕在化した新型コロナウイルス感染拡大が世界経済に甚大な影響を与えている。この厳しい環境のもと、次期中期経営計画に着実につなげるべく固定費削減や在庫の適正化を全社一丸となって取り組んできたが、収益環境の悪化は想定以上で、4月24日に公表した通り、上半期決算に修正した結果を達成できなかった」と苦しい局面を顧みた。

代表執行役CEOの加藤隆雄氏
2019年度 営業利益変動要因分析(前年度比)
2019年度 販売台数実績(前年度比)

 2019年度期は米中通商問題に端を発する景気の先行き不透明感が依然として漂う中で幕を開けたが、三菱自動車グループは販売台数の拡大を図るべく、主力地域であるアセアンにおいて新型「パジェロスポーツ」や新型「エクスパンダー クロス」を発売。また日本では新型軽ハイトワゴン「eK クロス/eK ワゴン」の発売で通年貢献の最大化を図ってきた。しかし、中国の景気低迷の影響を受け、貿易国であるアセアンやオセアニア各国などの当社主要市場で自動車需要が軟調に推移したことに加え、2020年に入ってからの新型コロナウイルス感染症拡大による世界経済への影響が深刻化。

 この自動車需要の落ち込みが進む中、三菱自動車グループは収益の改善を図るべく全社一丸となって経費削減に取り組んだが、新型コロナウイルス感染症拡大による販売台数の急減は想定を大きく超えていて、当事業年度末にかけて市場環境と収益が急速に悪化した。

タイ、フィリピン、ベトナムなどアセアンで好調なエクスパンダー
着実に商品力を向上させてきた

中期経営計画「Drive for Growth」の振り返り

「中期経営計画の目標の1つに“商品の刷新”を掲げており、商品ラインナップの拡充やライフサイクルマネージメントに積極的に取り組んできた。2019年度はグローバルで販売環境が厳しかったものの、日本においてのekシリーズのフルモデルチェンジなど、既存車種の刷新を計画通り行った。今後もユーザーにニーズに沿った魅力的な商品を持続的に投入することにより、ブランドの向上および販売台数の拡大に努める」と、代表執行役CEO加藤隆雄氏はまとめた。

新型コロナウイルス感染拡大影響
中期経営計画「Drive for Growth」の振り返り
「選択と集中」への着手

今後の見通し

 一部の地域では段階的に経済活動を再開し始めているものの、新型コロナウイルス感染拡大の克服と出口はいまだ見通せてなく、著しく不透明な事業環境が業績にどの程度影響を与えるか足下を見極めきれず、適正かつ合理的な業績予想の算出が非常に困難なため、2020年度業績見通しを「未定」とし、業績予想の開示が可能となった段階で速やかに公表するとした。

 そのうえで代表執行役CEOの加藤隆雄氏は「新型コロナウイルス感染拡大終息に向けて、各国の政府や地方自治体と連携して安全を最優先とすると同時に、事業への影響を最小限に抑えるべく対応を行なっている。しかし、海外からの部品調達難による生産への影響や販売減少による在庫調整など、すでに大きな影響が出ている。今後もサプライチェーンや販売モメンタムを都度確認しつつ対応していく。これまでの中期経営計画ではメガマーケットでシェア拡大も意識した全方位での成長を基本路線とし、積極的な投資を計画していたが、途中から世界経済の減速傾向で競争が激化したこと、メガマーケットでの環境規制対応、ユーザーが求めるサービスの高度化などにより研究開発費といった固定費が増加した。結果として固定費全体が2015年比1.3倍と大幅に上昇、2018年後半から「選択と集中」の修正戦略を加速させたものの、回復は困難な状況となった。そのため全方位への拡大戦略ではなく、選択と集中の考え方に沿って、より強い危機感を持ってコスト構造改革に取り組むことが最優先事項であると認識している。そこで2021年度までは、固定費削減を軸とした構造改革の期間と位置付け、アセアンなど強みを持つ地域に経営資源を集中し、販売ネットワーク、生産体制もアセアンを中心として進めていき、設備投資費、研究開発費、宣伝費などなど、あらゆるコスト構造を見直し改善し、2020年度比20%の削減を目指します」と締めくくっている。

2020年度 通期業績見通し及び予想配当
2019年度 バランス・シート/フリートキャッシュフロー(前年度比)
2019年度 地域別業績(前年度比)
2019年度 設備投資・研究開発費・減価償却費