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三菱自動車、2019年度上期決算説明会。売上高1兆1280億円、純利益26億円。減収減益で通期予測を下方修正

2019年11月6日 開催

 三菱自動車工業は11月6日、2019年度上期決算の決算内容を発表。同日に東京都港区の本社で決算説明会を実施した。

 2019年度上期(2019年4月1日~9月30日)における三菱自動車の販売台数は、前年同期比2000台(0.3%)減の59万2000台、売上高は前年同期比413億円(3.5%)減の1兆1279億5500万円、営業利益は前年同期の568億6400万円から約467億円(82.0%)減の102億340万円となり、営業利益率は同4.9%から0.9%となった。当期純利益は前年同期の518億5700万円から約493億円(95.0%)減の25億9800万円で減収減益となっている。

 この内容を受け、7月に発表された第1四半期決算のタイミングでは変更なしとされていた2019年度通期業績見通しの修正を実施。販売台数は期初発表の130万5000台から3万1000台減の127万4000台、売上高は同2兆5800億円から1300億円減の2兆4500億円、営業利益は同900億円から600億円減の300億円、純利益は同650億円から600億円減の50億円と、全項目で下方修正している。

2019年度上期の決算内容などを解説する三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長 CFO(財務・経理担当)池谷光司氏
2019年度上期決算の概要。販売台数は2000台の微減に止まったが、営業利益は82%減、当期純利益は95%減となっている
販売台数の地域別内訳。三菱自動車の販売の主体であるアセアン、欧州で販売が伸びず、北米では6%減となったことで、日本や中南米などの販売増がほぼ相殺される結果となった
2019年度上期の営業利益増減要因
2019年度の通期業績見通しは全項目で下方修正。2018年度実績と比較して、販売台数は3万台増となるが、営業利益、当期純利益は大きく減少する見通し
期初発表からの通期業績見通し増減要因
三菱自動車工業株式会社 代表執行役 COO アシュワニ・グプタ氏

 上期決算と通期業績見通しの修正が発表された後、主な地域別の販売戦略が三菱自動車工業 代表執行役 COO アシュワニ・グプタ氏から解説された。

 グプタ氏は、グローバルの景気減速の懸念が2018年後半から顕著になってきたと語り、これが新車販売の伸び悩みにも大きな影響を与えていると説明。実際に中国などの市場で全体需要が大きく下落している現状を取り上げ、三菱自動車はこの下落幅と比較して影響が少ないとしている。

 市場別には三菱自動車の主力市場であるアセアンで、タイが順調に販売を拡大。ベトナムでも好調をキープしているが、景気が伸び悩んでいるインドネシアで想定を下まわる結果となった。ホームマーケットである日本では、2019年の前半に販売がスタートした「デリカD:5」「eKワゴン/eK X」などの新車効果で大きな成長を果たしたとアピール。

 中国では2018年後半から景気が低迷する局面となっており、需要も縮小傾向にあるが、そんな厳しい環境化でも三菱自動車は2018年11月発売の「エクリプス クロス」の現地生産モデルが販売に貢献。ほぼ前年同期程度の販売を確保しているという。北米では低金利政策によってオートローンの金利も低く、需要は横ばい状態となっているが、三菱自動車は競争が激化する中・小型SUV市場で苦戦し、販売台数が落ち込む結果となった。

 欧州では注力している「アウトランダーPHEV」が計画どおりに販売を伸長。しかし、市場全体の景気低迷の影響から販売が伸び悩んだ。オセアニアは景気減速の影響から市場自体がマイナス成長で、厳しさを増す価格競争も原因となって大きな販売減につながっているという。中東地域ではフリート販売が大きく貢献し、SUVの販売強化策が功を奏して高い成長を続けている。

2019年度上期の市場別販売実績

 これからの販売施策としては、コアマーケットであるアセアン、日本、オセアニアなどで「エクスパンダー」「トライトン」といった主力商品に注力することで販売を正しい方向に導いていきたいとグプタ氏はコメント。しかし、グローバル市場は極端な状態となっており、目指す方向に向かうために時間がかかっているとした。

 2019年下期の地域別戦略では、アセアンではタイの市況の悪化で販売が低迷すると予測。インドネシアでは選挙も終わり、国内情勢が安定していけば再び成長基調になっていくと想定。インドネシアは人口も多く、挽回していくだろうとした。

 また、アセアンでは堅調に販売を伸ばしているエクスパンダーをはじめ、7月にバージョンアップを行なったトライトンや「パジェロ スポーツ」に加え、11月12日(現地時間)にインドネシア ジャカルタで世界初公開を予定する新型SUV、「ミラージュ」「アトラージュ」といった新型モデルの投入などを予定しているという。

 日本では今年度中の発売を予定する、「eKスペース」の後継モデルとなる新型スーパーハイトワゴンで販売拡大を目指す。中国市場は現在低迷しているが、米中通商摩擦の影響は長く続かないと予測。中国のマーケットはまだまだ成長余地があり、日系メーカーの信頼度の高さから前年以上の販売台数を計画。成熟市場である北米の販売では大きな拡販を追わず、在庫の健全化、販売費や固定費のコントロール強化で収益を改善。収益確保を目指すとした。

地域別の販売戦略

「スーパーハイト軽ワゴン」の市販モデルを市場投入

三菱自動車工業株式会社 代表執行役 CEO 加藤隆雄氏

 説明会では「ビジネスハイライト」として、三菱自動車工業 代表執行役 CEOの加藤隆雄氏から三菱自動車の事業体制などについて解説が行なわれた。

 加藤氏は、現在進めている中期経営計画の一環として、2017年度から商品の刷新に取り組んでおり、2019年度は7月後半に新型パジェロ スポーツ、8月に「RVR」を刷新してグローバル展開を開始。すでにスタートしている下期では、同日に登場を予告した「クロスオーバーMPV」のほか、ミラージュ、アトラージュの新型モデル、閉幕したばかりの東京モーターショー 2019でコンセプトカーを初公開した「スーパーハイト軽ワゴン」の市販モデルを市場投入すると説明。これからも競争力を確保できるセグメントに集中して開発を行なっていく必要があるとの考え方を示した。

 また、アセアン事業においては、1988年にタイの「MMTh」工場でスタートした生産車輸出が400万台を突破。タイ生産の車両としても初の輸出となっており、タイでの累計生産台数は500万台を達成。アセアンでの成長の基盤になっていると位置付けた。このMMTh工場ではさらなる競争力強化に向け、新しい塗装工場の建設などの合理化投資を進捗。2020年度の後半からはアウトランダーPHEVのノックダウン生産も開始する予定となっているという。

 同じくベトナムにある「MMV」工場も事業開始から25周年となり、現在行なっているアウトランダーのノックダウン生産に加え、2020年からMMV工場でエクスパンダーのノックダウン生産を開始することも発表。取り扱い車種の増加を受け、生産能力の増強も検討しているという。

 加藤氏が前CEOの益子修氏から受け継いだ「スモール・バット・ビューティフルな会社」という路線に向け、収益重視を実現する投資の厳選、聖域なきコスト改善といった取り組みでは、計画の開始からこれまでに200億円近い固定費の圧縮を実現。しかし、世界的な需要の落ち込みや為替の逆風などが想定以上となっており、収支バランスを改善するにはまだ不十分であると説明。もう1段踏み込んだ改革に取り組み、規模に応じたコスト構造を実現していくとした。

2019年度中に「次期スーパーハイト軽ワゴン」などを市場投入
アセアン事業をさらに強化していく
スライドの最後には、東京モーターショー 2019で日本初公開となったクロスオーバーSUVのコンセプトカー「ミツビシ・エンゲルベルク・ツアラー」の写真を紹介