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三菱自動車、第51回定時株主総会「早急な固定費削減とルノー・日産とのアライアンス効率化」を重視。加えて「株主への無配」と「役員報酬の減額」を加藤CEOが明言

2020年6月18日 開催

登壇した取締役 兼 代表執行役CEOの加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は6月18日、第51回定時株主総会を開催した。今回は株主の健康を最優先とし、本社会議室からインターネットライブ配信によって行なわれた。

 議長として壇上した取締役 兼 代表執行役CEOの加藤隆雄氏は、冒頭、新型コロナウイルス感染症の罹患者と関係者へのお見舞いを述べるとともに、インターネットによるライブ配信となったこと、短時間での開催となることを説明しお詫びした。

 総会では、白地浩三監査委員より監査報告が行なわれ、また新たな取締役15名が承認されたのち、株主を対象に質疑応答が行なわれた。質疑は事前に募集をしていて、1300件を上回る質問が寄せられたという。

質疑は「商品・経営戦略」「配当・株価」「役員構成・報酬」「アライアンス」の4項目が特に多く寄せられた

質疑応答

 質疑応答は寄せられた中でも多かった「商品・経営戦略」「配当・株価」「役員構成・報酬」「アライアンス」の4つの項目に絞り、加藤隆雄取締役 兼 代表執行役CEOが回答した。

商品・経営戦略について

 三菱自動車、2019年度通期決算。売上高は2兆2703億円、営業利益は前年度比89%減の128億円と減収減益と、5月19日の業績報告の通り、2019年度の業績は赤字で着地。2020年度も厳しい経営状況が予想されるため、商品・経営戦略について多くの質問が入ったという。

 2017年度から始めた中期経営計画において、欧米や中国における販売台数増加を目指し、商品や販売ネットワーク、人的支援を強化した結果、2019年度の固定費が2015年度比で約3割増加。また、メガマーケットでの販売台数は拡大したものの、期待していた収益を上げられず、固定費増加と合わせて、収益を確保しにくい体質になってしまっている。

 この実態を踏まえて2018年度の下半期から「Small but Beautiful(スモール バット ビューティフル)」へと指針転換を図り、2020年度から広範囲に渡る構造改革に着手する予定という。

 まずは地域戦略として、アセアンをコア地域とし、コア商品の展開可能な地域での拡販。メガマーケットへのコミットは段階的に削減する。商品戦略もアセアンでの主力商品であるピックアップトラック、トラックベースSUV、MPVをコア商品とし、既存商品の強化とパイプラインの強化に取り組む。

 この戦略に沿って、設備投資、研究開発費、広告宣伝費、間接労務費、一般経費の幅広い削減を行ない、ここ2年間で2019年度実績から2割以上の削減を目指す。速やかに着手し、早期に効果を出すべく全力を尽くす。非常に厳しい状況下だが、スモール バット ビューティフルで掲げる選択と集中の流れを本格化し、未来を見据えて前に進むと結んだ。

配当・株価について

 まず配当は誠に遺憾ながら、当事業年度の業績が赤字での着地、依然として新型コロナウイルスの終息が見通せない状況から、当面の資金繰りなどを勘案し、可能な限り手元資金を厚く確保しておくことが、中長期的な株主還元につながると考え「無配」とした。また、今後の配当見通しも、業績見通しを発表できるタイミングまで保留とした。

 株価は株式市場が定めるものと理解していて、業績動向にくわえ、自動車産業を取り巻く環境の厳しさ、新型コロナウイルスの影響、投資家の資金動向など、複合的な要因で形成されていると考えている。今年度以降は、アセアンへの経営資源の一層の配分と、固定費の大幅な削減、生産販売リソースの選択と集中を進めることで抜本的な構造改革を進めると、加藤CEOは決意を述べた。

アライアンスについて

 ルノー・日産自動車との今後のアライアンスについては、自動車産業が大きな転換期にあると同時に、新型コロナウイルスの影響により、自動車産業のみならず、社会の環境も大きく変わっている。ルノーや日産自動車と対応を話し合った結果、効率的にアライアンスを機能させるために「リーダーフォロワースキーム」を採用する。

 今後メンバー各社は、それぞれの持つリーダー的な領域と地理的な強みを活用して、お互いにサポートしながら活動する。三菱自動車は地域別で「アセアンとオセアニア」においてリーダーを務め、「CDセグメントのPHVシステム」でもリーダーを務める。すでにインドネシアとフィリピンで、日産自動車と協業できないか検討を始めている。

役員構成・報酬について

「取締役が多過ぎないか?」との声を多くもらっているが、業務執行を担う執行側と経営監査を担う取締役の間の橋渡し役として、社内の経営陣のトップである会長とCEOを取締役候補者としている。また、監査委員会の監査の実効性を確保するため、社内から取締役候補者を1名選任し、監査委員としている。

 また、コーポレートガバナンスコードを遵守すべく、独立社外取締役を2名以上選任すること、取締役会は知見をバランスよく備え、多様性と適正規模を両立すべきこと。監査委員には、財務・会計・法務の知見のある者を1名以上選任すべきことなどに考慮している。また一般的に取締役の3分の1以上が、独立社外取締役にすることが望ましいという点も考慮している。日産自動車、三菱グループから大株主として出資を受けているので、株主構成も反映されている。この結果、現在計15名体制としているが、知見、多様性などがバランスされていると説明した。

 最後に株主からの「利益が上がっていない以上、役員報酬を減額すべき」という意見に対して加藤CEOは「報酬の一部を減額することにした。詳細は代表執行役、執行役、執行役員については、業績連動報酬をゼロ。基本報酬を20~30%減額。報酬総額に対するカット率は執行側役員で最大45%になる。社外取締役を含む、非業務執行取締役からは、報酬総額の10%~25%を返納を求めている」と回答した。

本社に足を運んだ役員以外は、別会場から中継での出席となった

 なお、Webサイトには新車発売や電動車の普及活動、世界各国での企業活動から社会貢献に至るまで、2019年度の三菱自動車の活動をまとめた動画が公開さてれている。

MITSUBISHI MOTORS 2019-2020(日本語)(2分32秒)