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三菱自動車、2021年度通期決算は売上高5834億円増の2兆389億円、営業利益1826億円増の873億円で増収増益

2022年5月10日 開催

2021年度の通期決算説明会に出席した三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は5月10日、2021年度通期(2021年4月1日~2022年3月31日)の決算を発表した。

 2021年度の売上高は前年同期(1兆4555億円)から5834億円増となる2兆389億円、営業利益は前年同期(-953億円)から1826億円増の873億円、営業利益率は4.3%、当期純利益は前年同期(-3123億円)から3863億円増の740億円。また、グローバル販売台数は前年同期(80万1000台)から13万6000台増の93万7000台となった。

2021年度通期累計業績のサマリー

 オンライン開催された決算説明会では、2021年度通期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏が解説。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏

 池谷氏は2021年度通期決算について、2020年から続く新型コロナウイルスは変異株による流行を繰り返し、サプライチェーンや販売面で打撃を受け、2021年度の下期からは材料費、物流費などの高騰によるコストアップも顕在化。さらにロシアによるウクライナへの軍事侵攻を発端とする地政学的リスクも顕在化しているなど、同社を取り巻く経営環境は不透明感を増しており、日々変化していると語った。

 このような状況下ながら、2021年度は「アウトランダー」「エクスパンダー」といった新型車をはじめとする商品がユーザーから選ばれ、全社を挙げて環境変化に柔軟に対応していることで、収益は回復軌道に乗っていると述べ、営業利益では為替の追い風に加え、販売台数の増加、値引き抑制の効果、コスト改善効果などが回復要因になっていると分析している。

2021年度通期における営業利益の増減要因
2021年度第4四半期における営業利益の増減要因

 通期販売台数では、同社の販売で主力となっているアセアン市場で「ゼロコロナからウィズコロナ」に各国政府が政策転換したことを受けて2021年末から需要が回復に転じ、前年度比32%増の25万台を販売。豪州・ニュージーランドでは市場が好調に推移しており、部品不足の影響を受けにくかった車種の拡販、新型アウトランダーの好調などで前年度比35%増の9万7000台を販売。このほか、北米で2021年4月から販売を本格化させた新型アウトランダーが年度を通じて好調に推移したことで前年度比38%増の15万6000台の販売などとなっており、販売が低迷した中国、欧州などの台数減をカバーして、全体では前年度比17%増の93万7000台という結果になっている。

2021年度通期の市場別販売実績
2022年度の業績見通し
2022年度見通しの営業利益増減要因
2022年度の販売台数見通し
2022年度以降のアセアン市場における取り組み
2022年度以降のグローバル市場における取り組み

3種類のBEV発売で環境対応車のラインアップをさらに強化

2021年度のビジネスハイライトについて解説する加藤氏

 決算報告に続き、三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏から2021年度のビジネスハイライトについて解説が行なわれた。

 同社は2020年7月に発表した中期経営計画「Small but Beautiful」で掲げた構造改革や環境技術の強化などに取り組んでおり、さまざまな逆風が吹き荒れる中でも初年度から構造改革の効果を刈り取り、販売の質改善も推し進めて業績の大幅改善を達成。利益目標も1年前倒しで実現しているという。

 中期経営計画で仕上げの年になる2022年度に向け、独自技術とアライアンス技術の融合を進めて環境対応車のラインアップをさらに強化。中国で3月に市場投入した新型BEV(電気自動車)「エアトレック」、日産自動車と共同開発して間もなく発売予定としている「新型軽乗用EV」、秋の販売再開を予定する軽商用BEV「ミニキャブ・ミーブ」という3種類の新たなBEVをラインアップに加え、電動車により多くの選択肢をユーザーに提供していく。

中期経営計画「Small but Beautiful」で変化している営業利益
新たに3つのBEVをラインアップに加え、多彩な選択肢を提供していく
主力となっているアセアン市場でも取り組みを強化
「環境対応力」「走破性」といった三菱自動車らしさの訴求も進めていく

 最後に加藤氏は、「コロナについては“ウィズコロナ”で対応を模索しながら徐々に終息しつつあるように見受けられますが、部品不足や資材費の高騰、物流網の混乱などは解決までまだまだ時間がかかりそうです。また、ロシア・ウクライナ問題は引き続き終息を見通すことができず、中国におけるロックダウンの先行きも不透明です」。

「このように混乱は続きますが、混乱を続けながらそれが終息していく過程で世の中の変化はいっそう加速していくと予測しております。そういった環境下で、当社は次期中期経営計画を策定していくことになりますが、世の中の変化を捉えながら、電動化をはじめとするカーボンニュートラル対応、デジタル化やビジネスモデルの変化に対応する変革の方向性を見つけていきたいと考えています」。

「その中で、上昇基調にある当社収益回復の流れをいっそう確実なものとして、すべてのステークホルダーの皆さまのご期待に応えられるよう、経営基盤をさらに強固なものとしてまいります」と締めくくった。

2025年以降に向けて収益力をさらに高めていく

質疑応答

質疑応答で回答する池谷氏

 質疑応答では、半導体不足による影響について質問され、池谷氏は「2021年度は10万台程度に影響があるとお話ししていましたが、とくに上期で非常に大きく景況が出ました。本来は下期で回復させようと考えていたのですが、ご存じのようにずっと需給もひっ迫している状況が続いて、上海のロックダウンなども起こりました。上期で10万3000台、下期で1万7000台と、全体で12万台が影響を受けたイメージです。ざっくりとした金額では360億円程度の影響になっています」。

「2022年度も影響がいろいろと継続しておりまして、前年度の後半からマレーシアでの半導体供給不足が起きたり、中国でのロックダウンなどで半導体に影響が出ています。私どもとしては年間で10万台強から11万台に影響するようなイメージで、損益では300億円~330億円の影響が出るかなと思います。とくに上期に影響が出る予想で、なんとか下期に回復できればいいなと思っています」と答えている。