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三菱自動車、2021年度第3四半期決算 営業利益559億円 純利益687億円で増収増益、「新型軽EV」を今春発売

2022年1月31日 開催

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏

 三菱自動車工業は1月31日、2021年度第3四半期(2021年4月1日~12月30日)の決算を発表し、同第3四半期のビジネスハイライトについて解説するオンライン説明会を開催した。

 2021年度第3四半期の売上高は前年同期(9528億円)から4633億円増となる1兆4161億円、営業利益は前年同期(-867億円)から1426億円増の559億円、営業利益率は3.9%、当期純利益は前年同期(-2440億円)から2887億円増の447億円。また、グローバル販売台数は前年同期(56万9000台)から11万8000台増減の68万7000台となった。

2021年度第3四半期累計業績のサマリー

 説明会では三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏が決算の概要解説を実施。業績についてのサマリーを紹介した後、営業利益の変動要因、販売台数の内訳などを紹介した。

 全体として見ると第3四半期になって新型コロナウイルスの感染拡大を受けた行動制限は各地域で緩和される傾向となっているが、半導体の供給不足に起因する生産能力の制約は依然として続き、同社の販売にも影響を与えているという。こういった環境ながら、同社では“販売の質改善”を引き続き推進。為替の追い風と合わせて収益が前年同期比で大幅に改善しているという。

 第3四半期累計の営業利益は、販売台数の増加、北米を中心とした各国における販売の質改善が進んだことなどによる604億円の増益効果となり、販売対策金の抑制による106億円、計画どおり進捗したコスト低減効果などによる65億円、減価償却費や間接員労務費の抑制などによる構造改革で184億円を増減要因として報告。これに為替レートの変動で373億円の増益効果が発生し、全体で前年同期比1426億円増という大幅な増益につながっている。

2021年度第3四半期累計で見た営業利益の増減要因
2021年度第3四半期で見た営業利益の増減要因
2021年度第3四半期累計の販売台数

 販売台数は前年同期比で21%増の68万7000台となっており、地域別では同社の販売でコアとなっているアセアンでは販売台数が13万2000台から17万9000台に36%増加。中でも2021年11月に新型クロスオーバーMPV「エクスパンダー」を発表したインドネシアでは、減税施策が同年12月まで延長されたこと、各メーカーで新型車を発表したこと、モーターショーが開催されたことなどが追い風となって消費者の購買意欲が大きく刺激され、新型エクスパンダーの好調などもあって同社の販売は倍増以上に増加。市場シェアも3位に上昇しているという。

 同じくコア市場となっている豪州・ニュージーランドでは、豪州で「トライトン」などで部品供給の問題で影響を受けたが、堅調に供給を続けられた「ミラージュ」「エクスプレス(商用車)」などが販売をカバー。ニュージーランドでは半導体不足の影響を受けにくかった「ASX」が販売を支えたほか、政府が行なった低公害車のディスカウント施策で「エクリプス クロス PHEV」「アウトランダーPHEV」が補助金の対象となって需要が高まり販売台数が増加。販売台数は4万9000台から6万5000台に増えている。

アセアン市場の販売状況
豪州・ニュージーランド市場の販売状況

 北米市場では新型「アウトランダー」の販売好調を受けて販売台数が増加。それ以外のモデルでも値引きの抑制によって採算性を高めているという。今後も半導体不足の影響による車両供給の制約は続くとの見通しだが、変化を続ける市況を注視し、デジタルメディアを活用する新しい販売手法を続けて販売効率のさらなる改善を続けていくとした。

 日本国内については半導体不足による供給制約、新型コロナウイルスの感染再拡大の影響で市場の回復が遅れていると分析。同社では12月に発売したアウトランダーPHEVが好調で、そのほかのモデルにも相乗効果をもたらして販売を牽引しているという。一方、軽自動車では半導体不足の影響に加え、12月以降は「eKスペース」「eKクロス スペース」が安全面の問題から生産・出荷停止となった影響から販売減となっている。

北米市場の販売状況
日本市場の販売状況

為替の円安傾向を受けて2021年度通期見通しを上方修正

2021年度通期見通しを上方修正

 2021年度の通期見通しについては、これまでも第1四半期決算発表、上期決算発表でも上方修正を行なっているが、先進国を中心とした需要の回復、構造改革による効果が着実に表われていること、販売の質改善が進捗していること、為替の円安推移などが要因となって大きく業績が改善。営業利益についてはすでに期初予想の300億円を上まわる状況となっていることもあり、経営環境には引き続き不透明な部分があることを認めつつ、為替の円安傾向が続いていることなどを盛り込んで売上高以外の項目を前回見通しからそれぞれ上方修正している。

 販売面では新型アウトランダー、新型アウトランダーPHEVの好調な販売状況を織り込んで上期決算の発表から1万8000台増の92万1000台に上方修正。前回同様、半導体の供給不足による影響で地域ごとの振替が都度発生すると予想されるため、地域別の台数見通しについては非公開となっている。

2021年度通期における営業利益見通しの変動要因分析
上期決算発表で示した通期営業利益見通しとの変動要因
2021年度通期の販売台数見通し

「新型軽EV」を今春発売

2021年度第3四半期に市場投入した2つのニューモデル

 直近の同社事業について解説するビジネスハイライトでは、新型アウトランダーPHEVが予想をはるかに超える評価を受け、現在も想定していた台数を上まわるペースで受注が推移していると池谷氏はアピール。質感の高い内装をはじめとするデザインに加え、「2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー」で「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた技術力が高く評価されていることを好調の理由として紹介し、日本を皮切りに発売したアウトランダーPHEVは順次グローバル展開を進め、同社のブランド価値を向上させていくとした。

 インドネシアで発売した新型エクスパンダーも商品性が高く評価されたことに加え、現地での減税措置の後押しによって計画以上の受注が続いており、こうした新しいモデルを契機にファンの増加を図り、市場動向を注視しながら収益を伴った販売拡大に務めていくという。

 カーボンニュートラル社会の実現に向けた対応としてはBEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッドカー)の拡充を推進。PHEVではアウトランダーに続いてエクリプス クロスにもラインアップを広げており、軽乗用車では「新型軽EV」を今春発売するため準備を進めているほか、軽商用車では現在は販売を一時中断している「ミニキャブ・ミーブ」を秋ごろに一般販売を再開すると明らかにした。なお、ミニキャブ・ミーブの販売再開については関連記事「三菱自動車、軽商用BEV『ミニキャブ・ミーブ』を2022年秋ごろに販売再開」を参照していただきたい。

 池谷氏は今後の電動化戦略について「当社は今後も各地域、各国の規制や地域特性、インフラ整備などを注視して、それぞれの地域、国の実状に即したカーボンニュートラルへの対応を加速させてまいります」と語っている。

電動化で軸足となっているPHEVで車種の拡大を行なったほか、軽自動車でも乗用モデルを今春から発売。商用モデルも今秋に販売を再開する計画で準備を進めているという

質疑応答

質疑応答では池谷氏(写真中央)に加え、三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長 長岡宏氏(写真左)、三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長 矢田部陽一郎氏(写真右)が記者からの質問に答えた

 後半に行なわれた質疑応答には、池谷氏に加えて三菱自動車工業 代表執行役副社長 長岡宏氏、三菱自動車工業 代表執行役副社長 矢田部陽一郎氏の3人が参加。

 ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスが車両電動化のロードマップを先週発表しているが、この中で三菱自動車がどのような役割を果たしていくのかといった質問が出され、これには長岡氏が回答。

「われわれとしては当面、固有技術であるPHEVを軸にまずはやっていきます。とはいえ、もともとPHEVの技術は『i-MiEV』などのバッテリEVで培ってきた技術なので、そこからライフサイクルアセスメントの面でクルマの生産からリサイクルまで考えたときに、今の状態であれば軽自動車ではバッテリEVにすることでCO2低減に効果的であると分かっています。そこでわれわれは軽自動車のバッテリEVを推進していくということです。大型のモデルについてはPHEV、もしくはそこから派生したハイブリッドカーを世界に広げていくというのが現在の考えです」。

「一方で、2030年以降については世界中でバッテリEVが増えていく可能性が非常に高いということで、われわれも同じように考えています。その部分については先日公表されたように、アライアンスでバッテリEVのプラットフォームをいくつか用意していますので、それにジョイントしていくという方向も当然あるでしょう。われわれが持っている技術を生かして、特にアセアンでは独自のモデルをやっていく可能性もあります。そこは現在鋭意検討中で、来年度にはそのあたりも含めて新しい中期経営計画を作る予定です。その中で2030年以降のバッテリEVの展開についてもしっかりと考えていく予定としています。ただ、いずれにしてもわれわれの技術、そしてアライアンスで進めている技術はすべてアクセシブルですので、そのときの状況に合わせてよいものを選べる状態になっており、どう選んでいくかをこれからしっかりとやっていきたいと思っています」と説明した。

 また、ミニキャブ・ミーブの販売再開について、再開に至った経緯と、説明内で「価格を改定する」と発言した部分が価格の引き下げを意味するのかと質問され、池谷氏は「価格については具体的なところはご容赦いただきたいと思いますが、私どももできる限りお客さまのニーズに応えられるよう、品質、価格を含めていろいろと進めているところです。また、このモデルについてはもう10年以上手がけていますが、皆さまからいろいろなニーズをいただいていて、特に(スライドで紹介した)日本郵政さん、日本郵便さん、東京電力さんとの取り組みも大きく書かせていただいていますが、11月に発表しているように郵便局を核とした電動車の活用、最適なエネルギーマネジメントということで実証実験をすでに行なっています」。

「ほかの電力会社さん、物流企業さん、いろいろなところと既存車両の活用もさることながら、次世代車の要件をどうするかについていろいろと実証実験させていただいています。私どもはこういった部分が今後のカーボンニュートラル化で大きな役目だと考えて、上期決算説明会でも社長の加藤が申し上げましたが、私どもなりにカーボンニュートラル化に向けた1つの大きな役割として育てていきたいと思っております」と答えている。