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住友ゴム、自然界に存在しない構造のバイオポリマーの合成に成功 天然ゴムの収率改善やタイヤ性能向上に寄与する天然ゴムの生産に期待

2022年6月30日 発表

トマト由来酵素と天然ゴム合成酵素の重要部位を置き換えたイメージ

 住友ゴム工業は6月30日、東北大学 高橋征司准教授、金沢大学 山下哲准教授、埼玉大学 戸澤譲教授らと共同で、天然ゴムの鎖長制御に重要な天然ゴム合成酵素の部位を特定。さらに、この天然ゴムの鎖長制御に重要な部位をトマト由来酵素に組み込むことにより、自然界には存在しない構造のバイオポリマーの合成に成功したと発表した。

 今後、研究を進めることで、天然ゴムの収率改善やタイヤ性能向上に寄与する天然ゴムの生産につながることが期待されるとしている。

 研究グループは、同じ酵素グループに属していて構造が類似しているトマト由来の酵素(短鎖を合成)と、天然ゴムを合成する酵素(長鎖を合成)の構造を比較することで、鎖長に影響を及ぼす重要部位を発見。

赤枠が鎖長に影響を及ぼす重要部位。画像左がトマト由来酵素、画像右が天然ゴム構成酵素

 さらに、トマト由来酵素の重要部位を、天然ゴム合成酵素の重要部位と置き換えた改変酵素では、天然ゴムと同程度の鎖長のポリイソプレンを合成することを発見した。この改変酵素を用いることで、天然ゴム合成酵素とは異なる開始基質を利用可能となり、その反応生成物として自然界には存在しないバイオポリマーの合成に成功したとのこと。

酵素を触媒として用いた合成反応イメージ。1は通常の天然ゴムを合成したもの。2のトマト由来酵素では短鎖しか合成できない。3では、改変酵素を触媒とすることで、天然ゴムと異なる構造で天然ゴムと同程度の鎖長を持つバイオポリマーの合成に成功

 これらの研究成果は、6月27日~30日にドイツ・ニュルンベルクで開催されたDKT IRC 2021で発表。同社は、今後も天然ゴムの安定供給とともに、安全・安心で環境負荷の少ないタイヤの提供を通じて、持続可能な社会の発展に貢献していくとしている。