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BYD、「アットスリー」「ドルフィン」「シール」の日本市場参入発表会 2025年までに100店舗のディーラー網の構築を目指す
2022年7月25日 06:36
- 2022年7月21日 発表
世界第2位のEVメーカーが日本の乗用車市場へ参入
中国のEVメーカーBYDの日本法人であるビーワイディージャパン(以下、BYDジャパン)は7月21日、日本乗用車市場参入発表会を実施した。
BYDは1995年に中国の深せんで創業し、ITエレクトロニクス、自動車、新エネルギー、都市モビリティの4つの領域で事業をグローバルに展開している企業。バッテリメーカーとして創業した背景から、バッテリだけでなくモーターや制御装置など、EV(電気自動車)コア技術の開発から製造までを自社で可能としている。すでに中国国内でのEVやPHEVといったNEV(New Energy Vehicle)の販売台数で、9年連続1位を獲得。2021年度のグループ年間売上高は335億ドル(約4兆6000億円)となっている。
日本では2005年にBYDジャパンを設立し、ソーラーパネルや産業用の蓄電システムなどの環境エネルギー事業のほか、EV事業などを展開。EV事業では主にEVバスとEVフォークリフトを手掛け、2015年に初導入。現在は岩手県から沖縄県まで公共交通用途などで65台の納入実績を持ち、国内EVバスのシェアは約70%を占めている。さらに、EVフォークリフトは物流業界、機械・製造業界、製紙業界など、約400台の納入実績を持つ。
日本の乗用車市場参入にあたりBYDの創業者で、現BYDグループ会長の王伝福氏はビデオメッセージで「日本とは1999年に二次電池事業を展開したことで関係がスタートし、その後も蓄電池や太陽光発電製品を提供しています。2015年に京都にEVバスを初めて納入して以来、7年間で福島、東京、大阪、長崎、沖縄などの都市で運行し好評をいただいております。世界的な技術革新と産業構造の変化という新しい潮流の中で、EV化の方向性は確実で、この流れは不可逆的です。BYD(Build Your Dreams)は名前の通り、クリーンな社会を実現するという夢を27年間掲げ続け、バッテリ、モーター、電子制御、および車載用チップなど産業チェーン全体のコア技術を網羅し、現在BYDのEVバスは世界70以上の国と地域、400以上の都市に導入されています。今年は上半期だけで64万台のEVを販売し、前年比300%以上の伸長となっています。また、今年3月から内燃エンジン車の生産を廃止し、EVとPHEVに注力すると発表したことに加え、世界の自動車メーカーとも綿密に連携してより魅力的なEVを開発していきます。日本の皆さまに最先端の技術、優れた製品、高品質なサービスを提供し、新しいグリーンモビリティ体験を生み出してまいります」と発表会にコメントを寄せた。
発表会ではBYDジャパン 代表取締役社長 劉学亮氏が登壇。BYDは携帯電話などのITエレクトロニクス、太陽光発電などを手掛けていたが、2003年に自動車産業に参入。日本には2005年に法人を立ち上げ、今でも琵琶湖の近くにメガソーラーを運用していることや、EVバス、EVフォークリフトの納入など、生活に密着した活動をしていると紹介。
そして2010年に群馬県にある金型製造会社TATEBAYASHI MOULDINGを子会社として迎え、自動車のボディパーツのプレス金型の製造品質を向上。また、日本の乗用車産業へ参入する前に独自の調査を実施したところ、30%の人がEVを買う気はあると答えた半面、「価格が高い」「インフラが心配」「走行距離が短そう」「選択肢が少ない」といった不安があることも分かったという。そこで、それらの不安を払しょくするクルマを用意し、2023年1月より参入することを決めたという。
劉氏は最後に「これからの時代は、EVを買うか?買わないか?ではなく、いつ買うかなのです。日本でも『eモビリティをみんなのものに』という企業理念に基づき、EVがより身近な社会を共に創造してまいります」と締めくくった。
乗用車の販売専用に新会社「BYDオートジャパン」を設立
続いてBYDジャパン 執行役員 兼 BYDオートジャパン 代表取締役社長の東福寺厚樹氏が登壇。新会社BYDオートジャパンは、日本の乗用車市場参入にあたり、販売からサービスまでを担う専門会社となる。
BYDが手掛けるEVの特徴について東福寺氏は、「バッテリメーカーでもあるので、モーターや制御装置など、EVのコア技術の開発が自社で可能なこと、特に熱安定性の高いリン酸鉄リチウムイオンバッテリを使用した独自の『ブレード(刀)バッテリ』を採用し、安全性と強度に優れている。実際にバッテリにとって最も過酷なテストである釘刺し試験において、温度上昇が少なく発火もせずと、高い安全性が証明されています」と技術力と安全性の高さをアピールした。
また、ブレードバッテリは、バッテリセルそのものをバッテリパックの1つの構成部品とすることで、空間利用率を従来比50%改善に成功。安全性を保ちつつエネルギー密度を高め、航続距離も大幅に向上させている。そのブレードバッテリを採用した専用の「eプラットフォーム3.0」は、縦横方向をフレキシブルに長さを調整できるのも特徴で、今回日本に導入される3台すべてに採用されているという。なお、バッテリの保証期間は8年、15万kmに設定されている。
また、車両販売について東福寺氏は、「ネットで購入できる時代とはいえ、クルマは家の次に高額な買い物なので、誰だって慎重になるし、やはり実際に触れてみなければよさは伝わらない」との考えから、日本国内では2025年までに100店舗のディーラー網の構築を目指すという。これにより購入だけでなく、購入後のサポートまで充実したサービス体制を構築し、安全と同時に安心も提供するとしている。
日本の乗用車市場に投入される3台。価格や販売方法は11月ころに発表予定
ミドルサイズSUV「ATTO 3」
1番最初に日本に導入されるのが、ミドルサイズSUVの「ATTO 3(アットスリー)」で、2023年1月に発売を予定。価格や販売方法については11月ころに発表予定だという。名称は物理学において測定可能な最も短いスケール「アト秒(ATTOSECOND)」から取ったといい、俊敏で若々しいアスリートのようなスタイルと走りを実現。インテリアはフィットネスジムをモチーフに、ファッショナブルにまとめつつ、パノラマルーフを採用することで、解放感のある車室内に仕上がっているという。
パワートレーンは、フロントにモーターを備えた前輪駆動モデル。モーターのスペックは最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nm。フロア下に横向きに122枚搭載したブレードバッテリの容量は58.56kWh、0-100km/hは7.3秒をマークし、満充電での航続距離は485km(社内データ)を誇るという。
ボディサイズは4455×1875×1615mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2720mm、車重は1750kg。最小回転半径は5.35mと狭い道路のある日本でも扱いやすい仕様という。ボディカラーは「サーフブルー」「スキーホワイト」「パルクールレッド」「ボルダーグレー」「フォレストグリーン」と、アクティブさを連想させるカラー名称を採用している。
コンパクトカー「DOLPHIN」
続いて日常的なサイズのコンパクトカー「DOLPHIN(ドルフィン)」は、2023年中旬導入予定となる。ボディサイズは4290×1770×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm。中国ではモーター出力70kWのスタンダードと150kWのハイグレードの2グレード設定となっているが、現状ではハイグレードの導入のみを予定しているという。なお、航続距離は471km(社内データ)となっている。
ボディサイズはATTO 3よりひとまわりコンパクトだが、ホイールベースは20mm差でほぼ同じ。ブレードバッテリの搭載向きと枚数もATTO 3と同じで、コンパクトカーという位置づけでありながら広い車室空間を確保している。モーター出力も同じ150kWとし、フロントにモーターを備えた前輪駆動モデルとなっている。インテリアは名前の通りイルカをモチーフにしていて、ドアノブはむなびれのような形状を採用している。
ハイエンドセダン「SEAL」
ハイエンドモデルのセダン「SEAL(シール)」は「海豹(あざらし)」の意味で、ドルフィンと同じく海洋美学をデザインコンセプトに取り入れ、2920mmのロングホイールベースを生かし、スポーティでエレガントなデザインに仕上げられている。中国では後輪駆動のスタンダードと、4輪駆動のハイグレードが設定されているが、日本への導入はハイグレードのみの予定という。
パワートレーンは、フロントに160kW、リアに230kWのモーターを搭載し、ブレードバッテリは、ATTO 3とドルフィンとは異なり、縦方向に85枚×2列の計170枚で電池容量は82.56kWhを誇る。航続距離は555km(自社データ)。日本では2023年下半期の発売を予定している。