試乗レポート

BYDが2023年に日本で発売するバッテリEVモデル「ATTO 3」に乗ってみた

BYDミドルサイズSUVの「ATTO 3」に試乗する機会を得られた

 中国のEVメーカーBYDの日本法人であるビーワイディージャパン(以下、BYDジャパン)は7月21日に、日本乗用車市場参入発表会を実施して、メディア向けの試乗会も同時に行なった。

 日本導入が発表されているのは、ミドルサイズSUVの「ATTO 3(アットスリー)」と、日常的なサイズのコンパクトカー「DOLPHIN(ドルフィン)」、ハイエンドモデルのセダン「SEAL(シール)」の3車種。中国ではPHEVモデルもラインアップしているが、日本に導入される3台はいずれもBEV(バッテリ電気自動車)モデルとなる。

ミドルサイズSUV「ATTO 3(アットスリー)」のボディサイズは4455×1875×1615mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2720mm、車重は1750kg
コンパクトカー「DOLPHIN(ドルフィン)」
ハイエンドモデルのセダン「SEAL(シール)」

 今回試乗できたのはミドルサイズSUVの「ATTO 3」で、オーストラリア仕様を並行輸入した車両のため、正式に日本で発売される仕様とは若干異なる可能性があるとのこと。床下にバッテリ、フロントにモーターを備えた前輪駆動モデル。モーターのスペックは最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nmだ。

 ATTO 3の運転席に乗り込んで最初に気づいたのは、大型のセンターディスプレイに対して、メーターディスプレイが小さいこと。当然前方の視認性は良好。内装はフィットネスジムをイメージしたとのことで、爽やかな色使いが印象的。それ以外はいたって普通のSUV乗用車。

運転席まわり
メーターディスプレイはスマホぐらいのサイズ

 また、センターディスプレイで驚いたのは、ステアリングにあるボタンを押すと90度回転すること。カーナビでは先がよく分かる縦向き、同乗者が動画を観るときは横向きにするなど、用途によって使い分けできるのは素晴らしいと感じた。

センターディスプレイはステアリングにあるボタンを押すだけで90度回転する

 また、開発スタッフに聞くと「ウィンカーレバーとワイパーレバーが逆のまま発売するのは、ユーザー目線に立っていないと判断し、費用はかかるけれど金型から起こして、右ハンドル用にレバー類を作った」という。確かにたまに輸入車に乗って曲がる際にワイパーを動かすことが多い自分には、とてもありがたい配慮。

 そのほかにも、エアコンの吹き出し口もディスプレイ内で風向きを変えたりすることもできるが、ここはサッと動かせるほうがユーザーの使い勝手がいいとの判断で、物理的構造にしているという。

エアコン吹き出し口

 走り出してみると、違和感がまったくないほど普通にスイスイと走ってくれる。パワーの出かたは滑らかだし、ブレーキが効きすぎることもない。スタートダッシュの加速はさすがモーターと感じる鋭い瞬発力を見せる。マイカーは国産ハイブリッドカーで、エンジンもあまりかからないとはいえ、エンジンを搭載していないEVの静粛性はうらやましい限り。

 また、アクセルペダルを離したときの回生ブレーキの強さは2段階あり、このときは強いほうに設定してあるとのことだったけれど、凄く減速させている感じでもなく、自然なフィーリングで減速していた。次回乗る機会があれば弱いほうの設定も確認してみたい。

 車線変更も左折もウィンカーレバーが国産車と同じなので、何も気にすることなくできるし、唯一違和感を感じたのは音。走行中のモーターか意図的に出している音か、当たり前だけど国産車では聞いたことのない音。個人的な感想では隙間風が入ってきているような「ヒョーーー」という音。思わず「半ドア?」とか「窓がちょっとだけ開いてない?」と思ってしまった。でも、小さい音なのですぐに慣れちゃいましたが。

車内のドアノブも珍しい形状。上の部分に手を乗せて回転方向(時計回り)に引いてスライドさせる仕組み。しかも、中央部分はスピーカーという斬新な作り

 試乗を終えた全体的な印象としては、誰でも何も気にせず普通にマイカーとして運転できる仕上がりであると感じた。

 ただ、クルマを降りたとき、英語で「鍵をかけ忘れないでね」的な音声が流れたのもビックリ。オーストラリア仕様だから英語だったらしいけれど、日本仕様では日本語でおしゃべりしてくれるのだろうか? 個人的にはON/OFFできるようにしておいてほしいところ。

 正式な価格や販売方法は11月ころに発表するとのことだけど、誰でも手に入れやすい価格で提供したいとのことなので期待したい。

文化の違いからくる差異はあるものの、誰でも何も気にせず普通にマイカーとして運転できる仕上がりでした
編集部:塩谷公邦