試乗レポート

フォルクスワーゲン「T-Roc」、マイチェンでどう進化したか「TSI Style」でチェック

質感が向上したT-Roc

 時に激しく、時に静かな調べでセグメントをRockする(揺り動かす)存在になる、というメッセージが込められた「T-Roc」が日本に登場したのは、2020年7月のこと。その名前のとおり、T-Rocは欧州デビューからわずか4年で、全世界累計販売台数が100万台を超える勢いを見せた。日本でも、フォルクスワーゲンのSUV兄弟として最もコンパクトとなる「T-Cross」に続いて、2021年の輸入車SUVカテゴリーで登録台数2位を獲得。端正ながらしっかりとトレンドを押さえたハンサムなフロントマスクや、クーペライクなルーフラインといったデザイン、ツートーンが選択できる豊富なカラーバリエーションが高い支持を得ているという。

 そんなT-Rocが初のマイナーチェンジを受け、7月25日に販売開始された。大きな目玉は、待ち望んでいた人も多いハイパフォーマンスモデル“R”シリーズが日本初設定されたこと。「T-Roc R」はフロントとリアのデザインが専用となり、19インチアルミホイールやブルーペイントの大型ブレーキキャリパーなど専用アイテムが多数装備されている。搭載される2.0TSIエンジンは300PSを発生し、わずか2000rpmから400Nmという怒涛のトルクが生み出されるスペシャルチューン。トランスミッションは7速DSG、フルタイム4WDでアダプティブシャシーコントロール「DCC」を標準装備する。欧州参考値ながら、0-100km/h加速が4.9秒という俊足だ。

 そちらも早く乗ってみたいが、今回はガソリンとディーゼル合わせて5グレードあるうち、ガソリンの上級グレードとなる「TSI Style」に試乗した。まずエクステリアから見てみると、クールな印象が強かったフロントマスクは大きく変わり、少し丸みを帯びて人間味のある表情に。左右がつながったかのように見える六角形のデイタイムランニングライトもユニークで、とても個性豊かになったと感じる。クーペライクなルーフラインはそのままに、リアへまわるとSUVらしい力強さがアップ。でも全体的に、抑揚を抑えて洗練された大人っぽさを感じるデザインだ。

 ボディカラーはペトローリアムブルーメタリックが新色で登場。T-Roc R専用のラピスブルーメタリックを含めて9色の展開となり、ルーフカラーがボディカラーによってブラックまたはホワイトの選択も可能となるため、全14通りの組み合わせから選べるようになっている。

今回試乗したのは7月25日にマイナーチェンジして発売された「T-Roc」の「TSI Style」(417万9000円)。ボディサイズは4250×1825×1590(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2590mm。ボディカラーは新色のペトローリアムブルーメタリックにブラックルーフのツートーンカラー
マイナーチェンジで前後バンパーの意匠変更が行なわれるとともに、ライトまわりのデザインを刷新。フロントグリルにはエンブレムを挟んで左右のヘッドライトに連なるLEDストリップを設置したほか、フロントバンパーには新デザインの六角形のデイタイムランニングライトを装備。LEDマトリックスヘッドライト「IQ. LIGHT」はベースグレードの「TSI Active」をのぞく全グレードに標準装備
TSI Styleの足下は17インチアルミホイール(撮影車のタイヤは215/55R17サイズのハンコック「Ventus Prime3」)を標準装備
リアバンパーもデザイン変更が行なわれるとともに、LEDテールランプ(ダイナミックターンインジケーター付き)を標準装備

 そして、エクステリア以上に大きな違いを感じたのがインテリア。もともと、フォルクスワーゲンらしいシンプルモダンな中に、遊び心や先進性が散りばめられたインテリアには好感がもてたが、質感だけは指で触れるとコツコツと硬い素材感が、ややカジュアルな印象を強くしていた。それが今回は、ステッチが施されたソフト素材をダッシュボードやドアトリムに採用し、触れると柔らかで温もりを感じさせる触感。そこにタブレットが置かれているように配されたインフォテインメントディスプレイや、タッチコントロール式のエアコン操作パネルなど、さらに未来感が強調されているのも新鮮だ。そして、ステアリングホイールも新たなデザインとなり、インパネとマッチした上質な空間を演出している。

インテリアでは、ダッシュボードやドアトリムにステッチを施したソフト素材やレザレットを採用したのが新しく、質感が大きく向上した。また、インフォテイメントディスプレイをタブレットのように配置し、全グレードに標準装備するデジタルメータークラスターやタッチコントロール式のエアコン操作パネル(エアコンはアレルゲン除去機能付きフレッシュエアフィルターを採用)、さらに新デザインのステアリングなどによってモダンで先進的なインテリア空間を作り上げている

鼻先の軽さ、ボディの一体感を感じる身のこなしにあらためて感心

 さて、パワートレーンなどメカニズムに関してはとくに変更のアナウンスはないが、確認のため市街地を出発した。直列4気筒1.5リッターインタークーラー付ターボの目覚めは相変わらず穏やかで、室内にいればほとんど音が入ってこない上、振動も最小限なのがすごい。アクセルを軽く踏み込んで走り出すと、あまりの軽やかさに思わずテンションが上がる。ヒュンヒュンと小気味よくリズミカルにまわるエンジンと、ダイレクト感がありながら思い通りに操らせてくれる7速DSGの仕事ぶりは、記憶の中の走りよりもさらに熟成されて、完璧なタッグだと感じるのは気のせいだろうか。250Nmの最大トルクが1500rpmから発生するため、上り坂でもまったく余裕。ストップ&ゴーが頻繁な市街地では、足でのペダル操作だけよりもパドルシフトを操作する方が、よりキビキビ感がアップする。

直列4気筒DOHC 1.5リッターターボエンジンは最高出力110kW(150PS)/5000-6000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgfm)/1500-3500rpmを発生。WLTCモード燃費は15.5km/L

 さらに「ノーマル」に加え、「エコ」「スポーツ」「カスタム」が選べるドライビングプロファイル機能もついている。それぞれのキャラクターに合わせた設定に最適化する機能で、「スポーツ」を選ぶとアクセルのレスポンスが俊敏になり、山道などでも楽しめそうなキャラクターに変身。「エコ」はひと昔前にガマンを強いる走りではなく、どちらかといえば同乗者にやさしいコンフォートなキャラクターになるので、気ままなロングドライブなどの際におすすめだ。

 また、車線変更を瞬時に行ないたいと思った時の鼻先の軽さ、ボディの一体感を感じる身のこなしにも、あらためて感心した。車両重量が1320kgと、輸入車SUVとしては軽量なことに加え、ティグアン、T-Cross同様のプラットフォーム、MQBを共用しつつボディは完全に専用設計。ティグアンほど全高が高くないわりに、全幅は近い数値となり、SUVとしてはロー&ワイドなスタンスを実現しており、低重心でボディバランスにも優れているT-Rocの魅力は健在だった。

 そして後席にも座って試乗してみると、17インチタイヤで路面への当たりが丁寧な感じがあり、乗り心地はとても快適。足下スペースにも十分なゆとりがあり、大柄な人でもリラックスできそうだ。アームレストは前席にも後席にもあり、アンビエントライトも標準装備。ステアリングヒーターの設定がRのみで、シートヒーターはRとR-Lineのみ標準装備となり、そのほかのグレードではオプションとなるのはちょっと惜しいところだが、ワイヤレスチャージャーやUSBといった装備はしっかりついている。

 さらに、同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」や、緊急時駐車支援システム「Emergency Assist」がT-Roc初設定され、最新の運転支援システムが充実したのも嬉しいところ。昨今のコスト高騰の影響もあってか、価格帯がアップしているのは仕方がないとして、それに見合った進化が感じられるのが新しいT-Rocだ。とくに、唯一あまり価格が変わらないR-Lineはお買い得感が高く、新登場のRも輸入車SUVのハイパフォーマンスモデルとしては価格が控えめ。気になる人は早めのチェックをおすすめしたい。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとユーノス・ロードスター。

Photo:高橋 学