試乗レポート

スズキ「ラパン」のおしゃれな“お姉さん” レトロな雰囲気の「ラパン LC」でお出かけしてきた

ラパン LC

心をくすぐるデザインが進化

 ぴょこんと耳が立ったウサギのマーク。まんまるのキュートなヘッドライト。ホワイトをちりばめたレトロモダンな内外装。きっと誰でも、心のどこかに持っている“かわいいセンサー”をくすぐり、惹きつけるツボを心得ている希少な軽自動車がスズキ・アルト ラパンだ。

 現行モデルは2015年に登場し、かわいさはそのままに上質感がアップした内外装、運転しやすさと安心感がしっかり両立した走行性能で、息の長い人気を維持。これまでデザインは基本的に1つで、一部改良のたびにグレードによって違うシート表皮やカラードドアミラーを設定するなど、少しずつ熟成されてきた。

 それが今回、ガラリと大変身したもう1つのデザイン「アルト ラパン LC」が新登場。エクステリアは、小さな楕円形の専用のメッキフロントグリルガーニッシュが上品に微笑む口元のような雰囲気で、メッキヘッドランプガーニッシュが瞳をひとまわり大きく引き立てる。どこか懐かしく、でもかわいらしく、ちょっと大人っぽいラパンが新鮮だ。ホイールもシンプルなデザインとなり、リアにまわると「LC」のエンブレムが付いたメッキバックドアガーニッシュが上質感を演出。ボディカラーも落ち着いたメタリック調で、ルーフの色が通常デザインにも新たに設定されたソフトベージュに加え、アーバンブラウンが採用されてシックなおしゃれさでまとめられている。

2022年6月の一部仕様変更で新たに追加されたラパン LC。ボディサイズは3395×1475×1525mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2460mm。どこかレトロな雰囲気の専用メッキフロントグリルガーニッシュやメッキヘッドライトガーニッシュを採用
14インチのアルミホイールにはハーフホイールキャップを装着
LCエンブレムをバックドアに配置
いたるところにウサギが隠れている
パワートレーンは最高出力38kW(52PS)/6500rpm、最大トルク60Nm(6.1kgfm)/4000rpmを発生する直列3気筒DOHC 0.66リッター「R06A」エンジンを搭載し、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせる。トランスミッションはCVTを採用。WLTCモード燃費は26.2km/L(2WD)を達成

 実車を目の前にしたときの驚きは、もしこれまでのラパンが私の友人だったなら、「ラパンって、こんな素敵なお姉さんがいたの?」と初めて紹介されたような感覚だ。インテリアを見てみると、まず目を惹くのが木目調のインパネと、色を合わせるかのようにブラウンとアイボリーのツートーンとなったステアリング、ドアインナーパネル。シートはレザー調のブラウンにチェックのファブリックが外国のお部屋を思わせて、うっとりするような空間となっている。

 使い勝手や快適性もアップしていて、全車にUSBが標準装備されているほか、お肌や髪にやさしくウイルスも抑制する効果があるという「ナノイーX」搭載のフルオートエアコン、360°プレミアムUV&IRカットガラスが「X」に加わった。ティッシュボックスがすっぽり入る引き出しなどの収納は相変わらず便利で、後席を倒せば荷室がフラットに拡大するので、大きな荷物を積みたいときもOK。昨今はハイトワゴン系やスライドドア車が主流となっているものの、あらためてラパンの室内で過ごしてみると、1人~2人はもちろん、大人3人で乗っても十分な広さがあり、後席の足下スペースも余裕で足が組めるほどのゆとりがある。

濃淡の違うブラウンで統一されたインテリアは、シックで落ち着いた印象。バニティミラーには照明が付くのもうれしいポイント
ブラウン基調のシートはレザーとチェックのファブリックを組み合わせた仕様

かわいいも走りも両立!

 そんな、かわいいだけじゃなく中身はシッカリ者のラパンで、せっかくなので久しぶりにプチドライブに出かけてみた。運転席に座ると、先ほどまでは気がつかなかったけれど、メーターがキラキラしていてとんでもなくかわいい。目盛りがクリア、針もクリアで大きなアクセサリー時計の文字盤を思わせる。そして表示パネルにちょこちょこと登場する、ウサギのアニメーションに思わずニッコリ。アイドリングストップのときにピョコピョコと動いたり、一時停止などの標識を教えてくれたり、時にはしゃべったりするからずっと飽きない。エンジン始動時のアニメーションは季節やイベントによって変わり、今回は夏らしいヒマワリがかわいかった。

 歴代のラパンは、かわいい見た目のイメージに反してなかなかスポーティなハンドリング、低重心でじわりと落ち着いたコーナリング、安定した高速走行を見せることに定評があり、この現行モデルが登場したときにも感心した記憶がある。もちろん、自然吸気エンジンのみでタイヤも14インチなので、パワフルでハードな走りができるわけではないが、市街地を走り出してあらためて感じたのは出足からの軽やかさと、ボディの一体感が感じられるところ。車両重量が680kgという軽さ、全高が1525mmという低さを生かしつつ、4つのタイヤがちゃんと接地して丁寧に仕事をしている感覚がある。

 しかも今回、リリースでのアナウンスはなかったが、CVTがジヤトコ製からアイシン製に変わり、副変速機がなくなったとのこと。同時に双方の比較試乗をしていないのでハッキリとは言い切れないものの、以前よりも発進直後からの軽快感がアップしているように感じる。ストップ&ゴーが繰り返されるようなシーンでもストレスなく、長くクルージングできるシーンではスルスルと伸びやかな加速フィールが心地いい。乗り始めてすぐは、ブレーキペダルの踏みはじめで減速感がやや遅れてくるような感覚がちょっと気になる場面もあったが、グッと強く踏み込めばしっかりと減速してくれるので、慣れれば扱いやすくなるのだろう。ステアリングの手応えも適度な落ち着があり、速度を上げていってもフラフラするようなことがないので、安心感がしっかり。カーブでも思い通りのラインを描くことができ、こうしたところがさらに気持ちのいいドライブにつながっていると感じる。

 また、直線基調のフロントガラスやインパネ、サイドのボディラインなども、視界がクリアで車庫入れの際に平衡感覚がつかみやすく、運転しやすさをアシストしていると実感。先進の安全運転支援システム「SUZUKI Safety Support」は全車標準装備で、デュアルカメラブレーキサポートは夜間の歩行者も検知するものに進化している。LEDヘッドライトが全車標準装備となったことと合わせて、不安になりがちな夜間の運転をアシストしてくれるはずだ。また、オプションの全方位モニターを付ければ、狭い道でのすれ違いの際に左側とフロントの映像を自動で表示して、緊張しがちなシーンでのサポートがあるのもうれしい。免許取り立てのビギナーさんにもオススメできる機能が盛りだくさんとなっている。

 ちょっと大人っぽいかわいさと、おしゃれなインテリアにうっとりしつつ、運転中にはやさしさと頼もしさで支えてくれる、ラパン LC。才色兼備なラパンのお姉さん的な魅力に、またまたヒトメボレする人が続出しそうな予感でいっぱいだ。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとユーノス・ロードスター。

Photo:安田 剛