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鈴鹿8耐、優勝は33号車Team HRC 波乱の幕開けも終わってみればポールトゥウィン

2022年8月7日 開催

33号車Team HRCがホンダとしては8年ぶりとなる優勝

「FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース」(以降、鈴鹿8耐)は8月7日、決勝レースが行なわれ、ポールポジションからスタートした33号車Team HRC(長島哲太/高橋巧/イケル・レクオーナ選手、Honda CBR1000RR-RSP、BS)が優勝を飾った。ホンダとしては8年ぶりの勝利。

 2位は10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8H(レオン・ハスラム/アレックス・ロウズ/ジョナサン・レイ選手、Kawasaki ZX-10R、BS)。EWCシリーズの総合ポイントでトップを走る1号車Yoshimura SERT Motul(グレッグ・ブラック/渡辺一樹選手、SUZUKI GSX-R1000R、BS)は3位に入り、チャンピオンシップで大きなリードを作って最終戦ボルドールを迎える。

スタート後2周目の激しいクラッシュでセーフティーカーの波乱

 ホームストレート上でマシンに駆け寄り発進するル・マン式でスタートした第43回レース、ホールショットを奪ったのは予選4位の5号車F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/マイク・ディメリオ選手、Honda CBR1000RR-R、BS)。ポールポジションの33号車Team HRC、10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hがそれに続いて1コーナーに飛び込んだ。

レーススタート直後、1コーナーに飛び込んでいくマシン

 オープニングラップもそのまま5号車が制したが、スタートダッシュを決めるには至らず、5番手までがトップグループを作りながら2周目スプーンカーブに向かうところで17号車Astemo Honda Dream SI Racing(作本輝介/渡辺一馬/羽田太河選手、Honda CBR1000RR-R、BS)が73号車SDG Honda Racing(名越哲平/榎戸育寛/浦本修充選手、Honda CBR1000RR-R、BS)に追突する形で激しくクラッシュ。33号車Team HRCがトップに立ったところでセーフティカーが導入される波乱の幕開けとなった。

オープニングラップを制した5号車F.C.C. TSR Honda France
2周目に激しいクラッシュがあり、セーフティーカーが導入。17号車と73号車ともに自走不可能な大きな損傷を受けたが、その後修復に成功しレースに復帰する
スタート直後の混戦

 8周目にレースが再開された後は、33号車だけが安定して2分7秒台で周回し、2番手10号車との差を徐々に広げていく展開。上位陣1回目のピットインとなる28周前後のタイミングでその差は10秒近くになった。スタートライダーを務めた33号車の高橋巧選手は2020年から海外のシリーズ戦であるSBK(スーパーバイク世界選手権)、BSB(ブリティッシュスーパーバイク選手権)に挑戦しており、その実力を改めて示した。

快調なペースでトップを走る33号車Team HRC

 一方、EWCシリーズフル参戦組のトップチームのうち、スタートの混乱で一時は22位にまで沈んでいた7号車YART-YAMAHA(マービン・フリッツ/ニッコロ・カネパ/カレル・ハニカ選手、YAMAHA YZF-R1、BS)は順位を大きく挽回し、3番手に。

スタート時に落ち込んだ順位を急速に回復させてみせた7号車YART-YAMAHA

 7号車YART-YAMAHA、1号車Yoshimura SERT Motul(グレッグ・ブラック/渡辺一樹選手、SUZUKI GSX-R1000R、BS)、5号車F.C.C. TSR Honda Franceというチャンピオンシップを争うトップ3がそれぞれ3番手、4番手、5番手となり、しばらく淡々と周回を重ねる。が、51周目に5号車が突如マシントラブルのためピットインし、19番手まで順位を落とし苦しい状況に。

EWCチャンピオンシップ首位の1号車Yoshimura SERT Motulは4番手につける
チャンピオンシップ2位の5号車F.C.C. TSR Honda Franceは序盤でマシントラブル

中盤、33号車Team HRCが徐々に後続を引き離す

 33号車Team HRCは第2スティント、長島哲太選手に交代してからも変わらず2分7秒台で走行し続け、おおよそ2分8秒台で周回する2番手以降をじりじりと引き離す。

ピットインし、給油とライダー交代を行なう33号車Team HRC

 スタートから2時間余り経過したところでデグナーカーブで他車の転倒、炎上があり、2回目のセーフティカー導入となった。その時点で33号車は2番手10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hに30秒以上の差をつけていたが、33号車と10号車が2台あるセーフティカーそれぞれの後ろについたことから、その差はさらに広がりおよそ半周分の1分14秒に。

 それでも、10号車は14時頃から平均的に2分7秒台に入れるようになったことで、2分8〜9秒台のトップ33号車との差を少しずつ詰めていった。かと思いきや、100ラップ目間近の99周目にまさかの転倒。すぐに復帰し、ピットインすることなく走り続けるも、差は1分30秒以上に再び拡大してしまう。

少しずつ差を詰めるかと思われたところで転倒を喫した10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8H

 折り返しとなる4時間が経過した時点で、上位陣の顔ぶれは変わらず、33号車Team HRCがレースをリードし、2番手10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8H、3番手7号車YART-YAMAHA、4番手1号車Yoshimura SERT Motulと続く。

1号車Yoshimura SERT Motulは粘り強く上位につける

 路面温度のピークが過ぎたと思われる16時近くになって、33号車を駆る長島哲太選手が2分6秒934を記録しベストラップを更新。さらにその30分後、レース残り3時間余りのところでついに2番手も周回遅れにし、優勝街道をひた走る。

日没間際の終盤で7号車YART-YAMAHAに相次ぐアクシデント

 残り2時間、10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hと7号車YART-YAMAHAの間で時折2番手を巡るつばぜり合いが繰り広げられるが、それ以外に目立った動きはなく、トップが33号車Team HRC、4番手に1号車Yoshimura SERT Motulという並び。

 33号車は終盤、概ね2分9秒〜10秒台とペースは落ちながらも安定してラップし続ける。18時30分、日没前のライトオン。残り1時間を切り、このままゴールまで波乱なく終えそうな空気感が漂っていたところで、7号車YART-YAMAHAがスプーンカーブで転倒する。

苦しい戦いを強いられた7号車YART-YAMAHA

 再スタートを切ることはできたものの修復のためピットインし、1ラップの差があった4番手の1号車Yoshimura SERT Motulに表彰台圏内を奪われる。しかもストップ&ゴーのペナルティも課され、7番手まで順位を下げることに。結果的にシリーズ総合ポイントでもトップの1号車にさらに差を付けられ、次の最終戦ボルドールでの逆転はより厳しくなってしまった。

 結局、33号車Team HRCがノートラブルで、一切の隙を見せることなく214周を走り切り、ホンダとして2014年以来8年ぶりとなるウイナーに。高橋巧選手も同じく8年ぶり、4回目の優勝チームライダーとなった。

ホンダとして8年ぶりの優勝を飾った33号車Team HRC
表彰式で優勝トロフィーを掲げる33号車Team HRC

優勝チームライダー3名の会見コメント

レース後に行われた記者会見

長島哲太選手

 めちゃくちゃうれしい。うれしい以外の表現ができない。自分が2021年にホンダの開発ライダーになってから、その集大成ではないですけど、1つの結果として優勝で終えられたのはとても重要なことだと思いますし、新型CBR1000RR-Rのポテンシャルをしっかり見せられたのもうれしい。さらに8年ぶりの優勝ということで、強いHRC、ここまでやるのかという強いホンダが帰ってきたと思うので、素直にうれしいです。

高橋巧選手

 僕もうれしい以外は出てこないですけど、2019年はすごく悔しい負け方をした、最後情けない走りで終わったので、まず優勝できてほっとしているし、足を引っ張らなくて良かったと思っています。テツ(長島哲太選手)がずっと(マシン)開発してきて、イケルもテストできていないなかしっかり安定したタイムで走ってくれたし、チームの開発グループ含め、しっかり仕事してきてくれたからこその結果だと思うので、全員に感謝しています。

イケル・レクオーナ選手

 自分にとって初めての耐久レース優勝できてすごくうれしい。勝つことができたのは、他の2人のライダーやチームのおかげだと思う。テストから調子が良く、この週末も僕らはかなり速かったから、最後は勝てると信じていた。本当にとてもハッピー。改めて2人にお礼を言いたい。

鈴鹿8耐 上位10チームの暫定リザルト

順位:チーム(選手、車両、タイヤ)
1:33号車Team HRC(長島哲太/高橋巧/イケル・レクオーナ選手、Honda CBR1000RR-RSP、BS)
2:10号車Kawasaki Racing Team Suzuka 8H(レオン・ハスラム/アレックス・ロウズ/ジョナサン・レイ選手、Kawasaki ZX-10R、BS)
3:1号車Yoshimura SERT Motul(/グレッグ・ブラック/渡辺一樹選手、SUZUKI GSX-R1000R、BS)
4:95号車S-PULSE DREAM RACING・ITEC(生形秀之/渥美心/津田拓也選手、SUZUKI GSX−R1000R、BS)
5:104号車TOHO Racing(清成龍一/國川浩道/國峰啄磨選手、Honda CBR1000RR-R、BS)
6:72号車Honda Dream RT 桜井ホンダ(濱原颯道/日浦大治朗/國井勇輝選手、Honda CBR1000RR-R、BS)
7:7号車YART-YAMAHA(マービン・フリッツ/ニッコロ・カネパ/カレル・ハニカ選手、YAMAHA YZF-R1、BS)
8:40号車Team ATJ with 日本郵便(高橋裕紀/伊藤和輝/小山知良選手、Honda CBR1000RR-R、BS)
9:50号車TEAM KODAMA(児玉勇太/長尾健吾/長尾健史選手、YAMAHA YZF-R1、BS)
10:5号車F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/マイク・ディメリオ選手、Honda CBR1000RR-R、BS)