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メルセデス EQシリーズ初のミドルサイズセダン「EQE」受注開始 航続可能距離624kmの「EQE 350+」は1248万円

2022年9月29日 受注開始

1248万円~1922万円

メルセデス EQシリーズ初のミドルサイズセダン「EQE」

 メルセデス・ベンツ日本は、メルセデス EQ初のミドルサイズセダン「EQE」を発表し、同日より予約注文の受付を開始した。価格は「EQE 350+」が1248万円、「メルセデス AMG EQE 53 4MATIC+」が1922万円。納車は11月ごろを予定する。

 EQEは、メルセデス EQモデルとして初となる3ボックスタイプのミドルサイズセダン。専用のプラットフォームを新たに設計・開発するだけなく、BEV(バッテリ電気自動車)ならではのパッケージの有用性を活かしたエクステリアデザインでは、空力という機能性も兼ね備えた先進の美しさを表現したという。

 EQEのエクステリアデザインは、「ワン・ボウ」(弓)のラインのほかキャブフォワードデザインを取り入れたスポーティなデザインが特徴となっており、「EQS」よりもホイールベースが短く、ボディサイドがより絞り込まれる。

 フロントにエンジンやトランスミッションを縦置きする必要がないことから、メルセデス・ベンツの典型的なシルエットとは異なるキャブフォワードデザインを採用した。通常よりも前方に位置するAピラーと前後のショートオーバーハングにより、ゆったりとしたキャビンスペースを確保。また、前後オーバーハングやフロントエンドが短い一方で、リアにはトランクリッドスポイラーを採用することでダイナミックなアクセントを加えるとともに、筋肉質なショルダーラインにより、エクステリアに力強さを与えた。

 フロントフェイスは「ブラックパネル」ユニットに統合され、ここには超音波センサー、カメラ、レーダーセンサーなど運転支援システムのさまざまなデバイスが組み込まれるが、それらを表から見えなくすることでクリーンで独特の存在感を放つ。また、ボンネットは左右フェンダーまで回り込んでおり、シームレスなデザインとしているだけでなく、高速巡航時にボンネットが浮く現象を抑え、空力的にも有効な機能性も備えているという。左フェンダー側面のサービスフラップはウォッシャー液補充のためのもので、ボンネットは、室内用エアフィルター交換などのメンテナンス目的の場合にサービス工場でのみ開閉可能となっている。ベルトラインに配置されたドアミラーは、空力と低騒音が最適化されたデザインとし、格納式のシームレスドアハンドルは全車に標準装備される。

EQE 350+

 エクステリアでは「ワン・ボウ」(弓)シルエットのサイドビューとクーペのようなサッシュレスドア、高い位置をアーチ状に走るベルトラインがEQE独自のデザイン要素となっており、ドアミラーはベルトラインに配置され、航続距離の伸長に寄与するエアロダイナミクスと低騒音を両立する。また、ドランクリッドにはスポイラーリップを設けることでスポーティな印象も与えた。リアカメラはスリーポインテッドスター裏側の、汚れがつかない位置に格納されるほか、LEDリアコンビネーションランプの内部は曲線的な螺旋構造となっており、立体的に映るような工夫が施される。リアには連続したライトバンド(光の帯)が設けられ、メルセデスEQモデルであることを強調する。

 エアロダイナミクスについては、ディテールに対する多くの細かな作業を通じて、デザイン担当者と緊密に協力し、空気の流れを最適化することに成功。このエアロダイナミクスは、特にディテールに対する膨大な作業を通じて実現したもので、アンダーボディのような通常目に見えない場所にまで徹底的に手を加えながら開発が進められた。仮想風洞内で実施した演算の回数は数千回に上るという。

メルセデス AMG EQE 53 4MATIC+

 また、快適性を損なう低周波ノイズを防ぐために、ボディの構造部の空洞部分の多くに防音発泡材が充填されるとともに、高周波の風切り音に対してはドアやウィンドウのシールに特殊な防音対策を施した。ボディ面に格納されるドアハンドルやウィンドウ支持部、取り付け位置が高いドアミラーについても、ノイズの最適化が図られている。

 さらにAピラーには、フロントウィンドウとの境目に特殊な形状のゴム製トリムを取り付けることで大幅なノイズの低減を実現。この開発においては、先進的な気流シミュレーションに加え、風洞内で特殊なマイクロフォン配列を使った外部ノイズ測定を支援ツールとして活用したといい、このようにして生まれたAピラーは風切り音を改善するだけでなく、Cd値の低減やウィンドウに汚れをつきにくくする上でも重要な役目を果たすとした。

 そのほかEVならではの技術として、低速走行するEQEに歩行者が気づきやすくなる車両接近通報装置も標準装備。音の発生装置は右側のフロントとリアのアンダーボディにそれぞれ設けられており、車速約30km/h以下でEQモデル専用の音を出す。音は車速が上がるにつれて音量が大きく、周波数が高く変化することから、歩行者はクルマの走行状態(減速/加速)を判断することができるという。

EQEはメルセデス EQとして初めて電気自動車専用プラットフォームを採用したモデル

 インテリアデザインではデジタルな要素を取り入れた。EQE 53にオプション設定のMBUXハイパースクリーンはEQEの象徴的な装備の1つで、3枚の高精細パネル(コクピットディスプレイ、有機ELメディアディスプレイ、有機ELフロントディスプレイ[助手席])とダッシュボード全体を1枚のガラスで覆うワイドスクリーンで構成される。そのまわりを細いシルバーのフレーム、エアアウトレットを組み込んだルーバー状のトリムなどが囲む。

 また、センターコンソールの前部はダッシュボードにつながり、下側は宙に浮いたような構造を採用。これはEV専用プラットフォームの採用により、従来のようなセンタートンネルが必要なくなったことを視覚的に示したもの。また、ドアパネルのデザインは先進的な室内デザインを提案したもので、ドアパネルに取り付けたモジュール本体は宙に浮く格好で、アームレスト、ドアグリップ、ドアポケットなど必要なものを備える。また、周囲が暗くなると自動的に点灯するアンビエントライトが、この宙に浮くような前衛的なデザインをさらに演出する。

EQEのインテリア
ダッシュボード全面に広がるディスプレイ“MBUXハイパースクリーン”はEQE 53にオプション設定

 シートについては、EQE 350+にはデザインはシンプルながら造形美にこだわったシートを採用し、サイドサポートの「ラップアラウンド」形状は乗員の体を支えるとともに、シートの中央部とのコントラストによる立体感を生み出す。オプションのAMGラインではスポーツシートが標準となり、スリムな一体型の形状が特徴でシート表面は本革のカバーを上から掛けたように見えるデザインが施された。シートは輪郭に沿って照明付きパイピングが施されており、夜間走行の際には雰囲気のある室内空間を演出するという。

 コクピットの機能と操作は基本的に「Sクラス」と同様となるが、EVならではのアレンジを各部に施した。グラフィックはすべてブルーのカラーテーマでデザインし、2つの円形メーターを映し出すクラシックなスタイルを採用。走行に関係するインフォメーションは2つのメーターの間に表示され、ディスプレイの表示は複数のスタイルからカスタマイズすることが可能。EQE 350+のスタイルは「スポーティ」「クラシック」「ジェントル」「ナビ」「アシスト」「サービス」の6つ、EQE 53のスタイルは「TRACK PACE」「Supersport」「スポーティ」「クラシック」「ジェントル」「ナビ」「アシスト」「サービス」の8つを用意する。

 また、EQEでは新開発の大型HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air)を全車標準装備し、約600gの活性炭を使用したことと室内のフィルターにより、フィルターを通過した空気は不快な臭いを低減。また、微細粉塵フィルターの吸着面積はサッカー場約150面分に相当し、分離処理能力はマイクロファイバー層により、いわゆるPM2.5~PM0.3クラスの微粒子(粒径2.5μm以下)含め粒子状物質を最大99.65%以上除去する。また、ウイルスへの対策は、室内のフィルター機能とあわせてオーストリア研究試験研究所(OFI)の「OFI CERT」ZG-250-1(自動車向け)試験をパスしているとのこと。

EQEでは新開発の大型HEPAフィルターを全車標準装備

 パワートレーンについては、EQE 350+はリアアクスルに電動パワートレーン(eATS)を搭載し、最高出力215kW(292PS)を発生。航続可能距離は624km(WLTCモード一充電走行距離)。電気モーターには永久磁石同期モーター(PSM)が採用され、PSMではACモーターのローター(回転子)に永久磁石が取り付けられているため、ローターには通電の必要がないという。電気モーターは三相の巻線を2つ備える六相式を採用した。

 EQE 53はフロントとリアにeATSを備えており、最高出力は460kW(625PS)を発生(RACE START使用時は最大で505kW[687PS])。航続可能距離は526km(同)とした。EQE 53ではトルクシフト機能によってフロントとリアの電気モーター間で駆動トルクの連続可変配分が行なわれるため、前後駆動力配分は常に効率的かつ最適化されるという。

 いずれのモデルもリチウムイオンバッテリのエネルギー容量は90.6kWh。6.0kWまでの交流普通充電と、150kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応する。また、メルセデス・ベンツでは自社製高電圧バッテリについてバッテリ証明書を発行しており、EQケアにより10年もしくは25万kmの性能(残容量 70%)を保証している。

 なお、日本仕様の特別な機能として、EQEから車外へ電力を供給できる双方向充電を可能にした。EQEは家庭の太陽光発電システムで発電した電気の貯蔵装置となるほか、停電した場合などに電気を家庭に送る予備電源としても利用できる。給電はMBUXの設定画面よりバッテリ残容量10%から50%まで10%単位で設定可能とのこと。

EQE 350+はリアアクスルに電動パワートレーン(eATS)を搭載し、最高出力215kW(292PS)を発生。EQE 53はフロントとリアにeATSを備え、最高出力は460kW(625PS)を発生する

 また、EQEでは回生ブレーキによる運動エネルギー回収をさまざまな方法で行なうことができ、アクセルペダルを戻した際やブレーキペダルを踏んだ際に、高電圧バッテリの充電を実施。加えて、ドライバーはステアリングホイールのシフトパドルを使って、回生ブレーキによる減速度を3段階(D+、D、D-)で設定できるほか、コースティング機能を選択することも可能。このほか前走車との車間距離、登坂・降坂などの道路状況などを加味し、最適な強度の回生ブレーキを行なうD Autoモードも選択可能とした。また、ECOアシストでは状況に応じて回生ブレーキの最適化を実行。最も効率的な運転スタイルとなるように減速の強弱を自動調整し、例えば先行車を検知すると、先行車との車間距離を調整しつつ先行車が停車に至るまで可能な限り追従するとしている。