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トヨタとJERA、世界初「大容量スイープ蓄電システム」を運転開始 電動車のリユースバッテリを活用した蓄電設備

2022年10月27日 発表

トヨタが開発した大容量スイープ蓄電システム

 JERAとトヨタ自動車は10月27日、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バッテリEV、燃料電池車といった電動車からリユースした駆動用バッテリを活用して、世界初となる「大容量スイープ蓄電システム」を構築し、同日より電力系統への接続を含めた運転を開始したと発表した。

 両社の事業では、JERA四日市火力発電所において485kW/1260kWh規模のリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池による設備を設置。中部電力パワーグリッドの配電系統に接続して、系統用蓄電池としての充放電運転を行なっていく予定。

 今後、JERAとトヨタでは2020年代半ばに供給電力量約10万kWhの導入を目指しており、同事業により蓄電システム全体のコストダウンに加え、CO2排出量の低減にも寄与するとしている。

トヨタが大容量スイープ蓄電システムを開発

 再生可能エネルギーの導入拡大に必要な調整力として、蓄電池は今後需要が拡大していくことが見込まれている。加えて電池の材料となるコバルトやリチウムなど資源の埋蔵量に限りがあるため、使用済の電動車用バッテリを回収し、蓄電池として有効に活用するなど、地球環境に配慮した取り組みも求められている。

 こうしたことを背景にJERAとトヨタでは、2018年から電池のリユース技術の確立に向けて検討を重ね、今回の大容量スイープ蓄電システムによる系統への接続を可能にした。

 トヨタが開発した大容量スイープ蓄電システムは、性能や容量の差が大きい使用済みの車載電池を扱うことが可能となる「スイープ機能」を搭載し、電池の劣化状態を問わず、かつ異種電池が混合した状態でも容量を使い切ることを可能にした。スイープ機能とは、直列に繋いだ各電池の通電と非通電(バイパス)をマイクロ秒で切り替えることで、充放電量を任意に制御するデバイスで、豊田中央研究所より開発された。

 加えてスイープ機能を応用することで電池からの交流の直接出力、または車載用インバーターをリユースすることで、パワーコンディショナー(以下「PCS」)を省略し、コストダウンに寄与するとともに、PCSによる交流から直流に変換する際の電力損失を抑えることでエネルギーの利用効率向上を図ったとしている。

従来の蓄電システム

 今回運転を開始した大容量スイープ蓄電システムのほかにも、JERAでは電動車用リチウムイオン電池の低環境負荷型リサイクルプロセスの開発に取り組んでおり、トヨタは、これまでの電池リサイクルの取り組みで培ったノウハウや知見を活かしながら、JERAの低環境負荷型リサイクルプロセスの開発を支援していく予定。両社は使用済み電池の回収や再資源化により、循環型社会の実現に向けて取り組みを加速していくとしている。