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日産、地質や地形が「月」に近い三宅島を「e-4ORCE」で走破する「MOON-TRAIL PROJECT」
2022年12月14日 12:21
- 2022年12月13日 実施
三宅島をエクストレイルで駆け抜けるツアー実施。JAXAの月面ローバは「e-4ORCE」技術で走行実験
日産自動車は12月13日、東京・銀座のNISSAN CROSSINGにおいて、「エクストレイル」に搭載の4WDシステム「e-4ORCE」の走行性能を三宅島で実証する「MOON-TRAIL PROJECT」の紹介や、三宅島の月面に似た環境をエクストレイルで走破することも含まれた「MOON-TRAIL TOURISM」の発表、さらに、「e-4ORCE」を宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月面ローバの駆動力制御に活用する研究の紹介を行なった。
日産×三宅島、月面を思わせる三宅島をエクストレイルが駆け抜ける
「MOON-TRAIL PROJECT」では、月面を思わせる三宅島を駆け抜ける「日産新型エクストレイル」のムービーが撮影が行なわれた。
発表会では、まず、今回の主役となるエクストレイルに搭載の電動駆動4輪制御システム「e-4ORCE」について日産自動車 日本マーケティング本部CMMオフィス チーフマーケティングマネージャーの岡部龍太氏が「これまで機械式が主流だったこの4輪制御を、このクルマは100%電動で制御している」とし、JAXAと共同研究している月面ローバにもこの技術が搭載されていることも紹介した。
岡部氏は「本当は新型エクストレイルも月面で走らせると走行性能が分かりやすいが、さすがにイーロンマスクさんとスペースX社にお願いすることもできないので、月面に一番近しい場所を日本で探し、着目したのが三宅島」と話し、月面を思わせる地形と、玄武岩質の滑りやすい地面も月面に似ている三宅島でプロジェクトムービーを制作したという。
さらに、「e-4ORCE」の特徴として、従来の機械式の10倍から100倍のスピードで制御するため「タイヤが滑ったとしても、ドライバーが気づく前に、クルマがいなしてくれる。そこが最大の特徴」とし、実際に乗ってみても「ワクワクするドライビングの体験と、同乗者は非常に快適な空間を過ごせる」と説明した。
三宅島は「月の島」を強調。「MOON-TRAIL TOURISM」で魅力をアピール
発表された「MOON-TRAIL TOURISM」は、日産自動車と三宅島が協力してエクストレイルとともに月面をテーマに三宅島の自然と上質を満喫するツアー。実施は2023年3月4日~5日の1泊2日。抽選で1組2名が参加できる限定ツアーで、12月13日~2023年1月22日までTwitterで応募する。
三宅島は、玄武岩質の溶岩台地や大自然など、豊富な観光資源を有する魅力的な島でありながらも、その魅力を伝えきれてないという課題から、「月面を思わせる地質や地形」を新たな島の魅力として発信、誘客につなげたい希望から今回の取り組みを実施した。
発表会では、三宅島から三宅村副村長の吉田稔彦氏が登壇「三宅島の全周に広がる大自然を体感するには、あらゆる場所を快適に移動できるクルマが必要。そこで、究極のオフロードさえ悠々と駆け抜ける新型日産エクストレイルともに、三宅島の大自然を満喫できる月面をテーマにした良質な限定ツアーを開発するに至った」と経緯を説明。「月の島として日産自動車と観光資源の磨き上げを行ない、今までにない観光地域づくりを目指していく。ぜひ、三宅島に関心を持っていただきたい」と語った。
今回のツアーは、国立公園などに指定され、通常は立ち入りができない場所でエクストレイルを使った走行体験ができるほか、そのほかの通常の三宅島の魅力も満喫するコース。
ディナーについても、フランスの権威あるガイドブック「ゴ・エ・ミヨ」に5年連続掲載の店「モノリス」と、ミシュラン東京2023でビブグルマンに掲載された「モノビス」の2店舗のエグゼクティブ・シェフを努める石井剛氏によるスペシャルディナーが振る舞われる。メニューのなかには月面クレーターを思わせるような、三宅島特産のキンメダイの塩釜焼きも開発中だという。
また、星空の下に置かれたドーム型テントに宿泊。高性能望遠鏡を使った天体観測とエクストレイルの給電機能を使った快適な時間が過ごせるという。
JAXAの月面ローバ研究の駆動力制御に「e-4ORCE」を採用
今回の発表会では、エクストイレイルに搭載の「e-4ORCE」の技術がJAXAの月面ローバ研究の駆動力制御に活用され、三宅島で月面ローバの走行実験を行なったことも紹介された。これが月面ローバの研究において、初めて自然の環境で走らせてことになったという。
月面を走行する月面ローバの走行には、路面環境が過酷で、しかも走行に使える電力に限りがあるため高効率が求められる。
さらに、月面において基地を作ろうとした場合、地上から遠隔操作で作り上げることになるが、月面は細かな砂で覆われ、タイヤが空転してうまく走れないこともある。アポロ計画のような以前なら宇宙飛行士が実際に月面に降りて作業をしていたため、砂地にスタックした場合でも人の力で復旧させることもできたが、すべて遠隔操作となった場合にはスタックしない性能も求められる。
日産自動車からは、企画・先行技術開発本部先行車両開発部の伊藤健介氏が「これまでの共同研究で、砂地の走行において、タイヤの空転とタイヤに働く力には深い関係があり、空転を適切にコントロールすることで、タイヤに働く砂の抵抗やクルマを進む力を操ることができることが分かった」と説明した。
月面には、レゴリスと呼ばれる細かい砂が堆積し、月面ローバのタイヤは容易に沈んでしまうため、タイヤの回転を適切にコントロールするとクルマが沈むことなく走破できるようになるという。
また、今回はJAXAでは大きく2種類の実験を行なった。まず、月面では地球上のようなGPSのようなものがないなかでセンサーなどを使って月面ローバの滑りを正確に検知できるのかを推定する実験、そして日産の「e-4ORCE」の制御技術を搭載した実験。
JAXA 宇宙探査イノベーションハブ 須藤真琢氏は「月面ローバが自分の滑り状態を自ら推定しながら、その滑り状態に応じて、各タイヤの駆動力を制御しているということがポイント。各タイヤの動力を適切に制御することによって、月面ローバは効率よく走行できるということを確認した」と実験に大きな成果があったとし、「将来の月面探査で必要となる月面ローバの駆動制御技術、それを応用した自動運転技術の確立を目指したい」と語った。