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【インタビュー】独メルセデスAMG ミヒャエル・クネラー氏にメルセデス・ベンツのハイエンドモデル戦略について聞く
2022年12月16日 12:07
- 2022年12月15日 開催
メルセデス・ベンツ日本は12月15日、ハイエンドモデル「メルセデス・マイバッハ」「メルセデス AMG」「Gクラス」を専門に取り扱う世界初の拠点「Sスターズ@メルセデス・ベンツ銀座」で特別仕様車「メルセデス・マイバッハ S 680 4MATIC Edition 100」の発表会を開催した。
新たなショールームフォーマットを採用するスターズ@メルセデス・ベンツ銀座と特別仕様車については関連記事「メルセデス・ベンツ、マイバッハ、AMG、Gクラスの専門拠点「スターズ@メルセデス・ベンツ銀座」世界初オープン マイバッハ100周年記念の特別仕様車を日本初公開」ですでに紹介しているが、この発表会後に会場で、独メルセデスAMG プロダクトマーケティング統括&トップエンドビークル営業部・責任者 ミヒャエル・クネラー氏にメルセデス・ベンツのハイエンドモデル戦略について聞くグループインタビューが実施されたので、本稿ではその内容を紹介する。
スターズ@メルセデス・ベンツ銀座などについて
――店舗に可変式というコンセプトを与えたのはどのような理由からでしょうか。
ミヒャエル・クネラー氏:われわれメルセデス・ベンツの信念の1つに「お客さまがいるところに行ってお客さまのために働く」というものがあります。それはどこでも変わらないのですが、とくにここは都市型になるので、都市に特化したブランドをお見せしていきたいと思うのです。そしてなぜこのようなショールームフォーマットを採用したかと言えば、先ほど述べたようにお客さま中心という考え方があります。可変式にすることでよりお客さまを中心に据え、お客さまが必要とする体験をご提供できるのです。それがカスタマージャーニーであり、カスタマージャーニーのなかで私たちがコンサルタントとしてお客さまのご相談を受けます。それは都市以外のほかのところでも採用されるかもしれませんが、フレックスストアというコンセプトでお客さまの要望、要求を常に満足させたいと考えています。
さらに付け加えれば、フレックスストアという形にすることでディーラーの皆さんが「お客さまが今見たいもの」を提供できるようになると思うのです。例えばマイバッハかもしれませんし、AMGもあるかもしれません。それをこの1つのロケーションを交代させて見ていただくことができます。従来の店舗というものは、おおむね1つか2つのブランドに焦点を当ててきました。これがフレックスストアなら、グローバルの面でもお客さまが見たいものをご紹介できます。そんな理由からも選んでいるのです。
――先週も日本でEQ専売拠点が世界初登場したばかりです。今回は立て続けにハイエンドモデルの専売拠点がオープンしますが、こうした場として日本が選ばれているのはどんな理由からでしょうか?
クネラー氏:なぜ日本なのかと言えば、まず私たちにとって最も価値のある素晴らしいパートナーシップが日本に存在することが理由になります。店舗もそうですし、メルセデス・ベンツ内部の組織についてもそうです。こういったパートナーシップがあることで、お客さまに満足していただけるようニーズにきちんと対応していけます。また、日本はすでに大きなシェアを持っている市場ですが、経済的に見ても将来が有望だと感じています。さらなる成長が見込めますし、お客さまが私たちに非常に高い期待を持ってくれています。そういったすべての状況から、私たちがトップエンドに焦点を当てたいと考えている戦略にフィットしていることが理由になります。
1つ付け加えてAMGを例に挙げれば、先ほどの発表会にも登場いただいた板東社長が率いるシュテルン世田谷は、世界で初めてAMG専売のお店をオープンさせた会社ですよね。これはAMGのブランドセントラルになる店舗で、そこから日本では37のAMGパフォーマンスセンターが展開するようになっています。そのようなネットワークの構築を見ると、私たちも非常に自信になるのです。そんな成功事例もあって、日本で世界初の取り組みをやってみようという考えにつながっています。
――AMGパフォーマンスセンターが日本国内で増えていったように、EQやスターズの店舗も増えていくのでしょうか?
メルセデス・ベンツ日本:日本国内での展開についてはわれわれからお答えします。EQの専売拠点については、本社とのコミュニケーションから日本ではEVの普及が進んでいないという課題があるなかで、それでも私たちは「EQオンリー」を目指す方針から、2030年に向けて動き出さなければいけないということで、本社からの承認を受けてEQ専売拠点をスタートさせました。メルセデス・ベンツはEQオンリーのブランドになっていくと宣言していますので、将来的にはすべての販売拠点がEQ専売というスタイルになっていくはずです。ただ、現状の新車販売におけるEV比率は1.3%といったところになりますので、欧州や米国、中国のように比率を伸ばしていくために、シュテルン世田谷さんに協力していただいて「メルセデス EQ 横浜」がオープンしました。
スターズという形態については、この銀座以外にも都市型のフォーマットに合う場所で2店舗目以降の展開を考えてもいいかなと話題になっています。まだ具体的に進んではいませんが、トップエンドを求めるお客さまは飽きやすい傾向が強く、可変式の展示内容で、ショールームに来ていただいたときに変化を付けられることはキャッチーな要素になります。大阪なのか、名古屋なのか、福岡なのか、具体的には分かりませんが、2店舗目もある程度考えています。
――スターズという店舗形態は、今後グローバルで展開する予定はあるのでしょうか? また、スターズで展示内容が切り替わるタイミングはどのようなサイクルをイメージしていますか?
クネラー氏:私たちが新しいコンセプトストア、新しい何らかのコンセプトを考えるときには、常にグローバル展開する可能性を維持しながら進めていきます。ただ、ここで重要になるのは、地域や国ごとにローカライズする必要があるということです。なぜなら、その地域、その国ごとに文化が異なるので、そこにきちんと合うような内容で展開したいと思っています。
スターズはフレックスストアというコンセプトで、フレキシブルということはお客さまが見たいと思うものを見せることができる。柔軟性があるので、例えば新型車をローンチしたときはそれに合わせた店舗演出に切り替えることが可能です。演出のテンプレートを用意しておけば1時間単位で変更するといったこともできるかとは思います。このスターズ@メルセデス・ベンツ銀座に関しては、運営するシュテルン世田谷、そしてメルセデス・ベンツ日本の皆さんと相談をして、私たちがお客さまにどんなことを発信したいのか、お客さまが今何を重要だと思っているのかなどを考え、週替わりなのか月替わりなのか、ローテーションの頻度をフレキシブルにアレンジ可能です。現状ではまだ決まっていません。
メルセデス・ベンツのハイエンドモデル戦略について
――これまでマイバッハとAMGはサブブランドとして長く展開されてきましたが、一方でGクラスは異なる位置付けで、例えばGクラスのAMGモデルなども存在しています。Gクラスがサブブランドの2つと同時に語られる狙いはどんなものになるのでしょうか。
クネラー氏:まず、Gクラスというモデルは製品として象徴的な、アイコン的な存在になっています。そしてマイバッハとAMGも独立したブランドとして象徴的なアイコンです。トップエンドビークルの1つとして、GクラスもマイバッハやAMGと並ぶ私たちの象徴的な製品として3つを並べています。
――先ほどの発表内で「ソフィスティケイテッド・ラグジュアリー」「パフォーマンス・ラグジュアリー」「アドベンチャラス・ラグジュアリー」という3つの概念を紹介いただき、それぞれにラグジュアリーという言葉が使われています。メルセデス・ベンツでは現在、すべてをラグジュアリーにつなげていく大きな戦略を進めているように感じていますが、こういった戦略について教えてください。
クネラー氏:おっしゃるとおりで、ラグジュアリーにフォーカスしているのが現在の私たちの戦略です。ここに焦点を当てることで、自分たちのポートフォリオをよりシャープでしっかりしたものにしたいと考えています。トップエンドと呼ばれるものにもいろいろあって、本当にトップのトップエンドがあって、またエントリーレベルのトップエンドもあると思うのです。
今回皆さんにご紹介した3つは、私たちのラグジュアリー戦略を導いていく「ガイディングスター」と呼ぶような目印として、戦略を進めていくためにあるものです。これに基づいて自分たちのポートフォリオをさらに鮮明なものにしていきたいという考えです。ラグジュアリーというアプローチですが、それぞれの前にソフィスティケイテッドやパフォーマンスといった言葉を付けているのは、3つのブランドそれぞれがその言葉に紐付いているからです。そして3つとも、ラグジュアリーというものがその上に位置するコンセプトになります。
――先日モデルチェンジしたSLは、新たにAMGだけのモデルになりました。これからマイバッハでも同じような展開が起きる予定はありますか? 例えばSクラスがマイバッハのみになるといったことはあるのでしょうか?
クネラー氏:SLについては歴史的な背景も知る必要があるかと思います。まず、お客さまがどんなクルマが欲しいと思っているのか。お客さまは完璧なメルセデスモデルとして、ロードスター、スポーツカーが欲しいわけです。でも、同時に快適性も欲しくて、最新技術も欲しい。そういったお客さまのご要望からSLをAMGの専売モデルにしました。これにより、スポーツカーだけど快適にドライブできる、さらにダイナミックなドライビングもしたい。そんなお客さまのご要望が、SLがAMG専売になった背景です。
これから先のポートフォリオについてははっきりとお伝えできませんが、それぞれのセグメントでどういったモデルがお客さまのニーズにマッチするのか、どんなものをお客さまがご要望されているのかを調べた結果、同じようなことが起きる可能性もありますが、まだ先のことについてはごめんなさいというところです。
――従来のメルセデス・ベンツ販売店ではAクラスからマイバッハまで幅広い選択肢を取りそろえていましたが、今後はラグジュアリーにフォーカスしていくという戦略が出てきて、これからの顧客体験はどのようになっていくのでしょうか。
クネラー氏:重要な点をご理解いただきたいのですが、私たちには3本の柱があります。それはトップエンド、コアモデル、エントリーレベルというものです。確かにトップエンドに注力していくと説明していますが、だからといってこれまで獲得したAクラスなどエントリーレベルのお客さまを失っていいとは決して思っていません。
私たちの戦略がトップエンドにシフトしていくのは、ポートフォリオからどういったところに投資していくかを明らかにするものです。トップエンドに対するポートフォリオを洗練されたシャープなものにしたいと考えているということです。私たちの製品にはコンパクトモデルもありますが、それを排除するような考えはありません。エントリーレベルのお客さまもきちんとキープしていきたいと思っています。