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メルセデス・ベンツ、4気筒ターボ+ソフトトップに生まれ変わった新型「メルセデスAMG SL」発表会

2022年10月24日 開催

1648万円

新型「メルセデスAMG SL」の発表会を開催

「メルセデス AMG SL 43」の1グレード展開

 メルセデス・ベンツ日本は10月24日、ラグジュアリーロードスターの新型モデル「メルセデスAMG SL」の発表会を東京 六本木のグランドハイアット東京で開催した。新型SLの価格は1648万円。

 2022年に初代300 SLの誕生から70年を迎え、新型SLはメルセデスAMGによる完全自社開発モデルとして生まれ変わった。先代ではV型6気筒3.0リッターターボの「SL 400」、V型8気筒4.7リッターターボの「SL 550」、V型8気筒5.5リッターターボの「メルセデスAMG SL 63」などをラインアップしたが、新型SLでは量産車として世界初となる「エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー」を採用した直列4気筒2.0リッターターボ「M139」型エンジンを搭載する、2+2シートレイアウトの「メルセデス AMG SL 43」を展開する。

発表会会場には初代300 SLも展示。同車両はオーナーカーで、日本におけるクラシックカーラリーイベント「ラフェスタ ミッレミリア」にも過去参加しており、1992年10月に参加された際は故スターリング・モス氏がドライブする300 SLRと一緒に走行した車両。ヘッドライトをロードスター用へ変更し、石原裕次郎氏(故人)が所有していた300 SLと同様のスタイルに仕上げている

 このターボチャージャーはF1由来の技術で、メルセデス AMGペトロナスF1チームがモータースポーツの最高峰であるF1において長年採用して実績を上げているシステムを直接のベースとするもの。エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーの電気モーターは厚さ約4cmで排気側のタービンホイールと吸気側のコンプレッサーホイールの間のターボチャージャーの軸に直接一体化される。このモーターが電子制御でターボチャージャーの軸を直接駆動し、コンプレッサーホイールを加速。この加速はコンプレッサーホイールが通常のターボチャージャーと同じく、排気の流れによって駆動されるようになるまで行なわれる。

 これにより、アイドリングスピードから全エンジン回転域にわたってレスポンスの速さが大きく改善され、アクセル操作に対するエンジンのレスポンスがいっそう自然なものとなるほか、ダイナミックな走りが楽しめるようになるという。さらにターボチャージャーの電動化は低回転域のトルクを高める効果をもたらし、アジリティや発進加速性能の向上につながるとしており、アクセルから足を離したり、ブレーキを踏んだりした場合でも、エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーは常にブースト圧を維持することができるため、速やかなレスポンスが途切れることなく得られるメリットがあるという。

 また、SL 43のトランスミッションには従来は63モデルにのみ搭載されていた「AMG スピードシフト MCT」(9速AT)を採用。トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを搭載し、ダイレクト感のある素早いシフトチェンジと高い伝達効率を特徴としており、トルクコンバーターに見られる損失を低減し、軽量化も相まってレスポンス向上に貢献する。走行モードは高速走行時などにアクセルから足を離すとエンジンとトランスミッションを切り離して燃料消費を抑えるセーリング機能の採用によって燃費を優先する「Comfort」、よりスポーティなドライビングが楽しめる「Sport」「Sport+」「RACE」、滑りやすい路面を安全に走行する「Slippery」、さまざまなパラメーターを個別に設定できる「Individual」の6つのモードを設定している。

 エンジンの最高出力は280kW(381PS)/6750rpm、最大トルクは480Nm(48.9kgfm)/3250-5000rpmを発生し、WLTCモード燃費は10.8km/L。0-100km/h加速は4.9秒、最高速は275km/hとなっている。

直列4気筒2.0リッターターボ「M139」型エンジンは最高出力280kW(381PS)/6750rpm、最大トルク480Nm(48.9kgfm)/3250-5000rpmを発生

 ボディサイズは4700×1915×1370mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm。エクステリアではボンネットのパワードームなど、随所にSLの伝統を受け継ぐ特徴的な要素が施されるとともに、ルーフについては新型SLがスポーツ性をより重視したポジショニングを与えられたことから、先代の金属製バリオルーフから電動ソフトトップにスイッチ。これにより21kgも軽くなり、合わせて重心も低くなった。開閉は約15秒で完了し、60km/hまでであれば走行中でも開閉可能。操作はセンターコンソールのスイッチパネルまたはタッチ機能付のメディアディスプレイで行なう。

メルセデス AMG SL 43のボディサイズは4700×1915×1370mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm
メルセデス AMG SL 43のディティール。足下は20インチAMG5ツインスポークアルミホイールが標準装備(タイヤサイズはフロント265/40R20、リア295/35R20)で、展示車にはオプションのAMG21インチ鍛造アルミホイール(10スポーク ヒマラヤグレー)装着車も
メルセデス AMG SL 43のインテリア。2+2シートレイアウトが新しい

自然吸気エンジンのようなレスポンスを実現

メルセデス・ベンツ日本株式会社 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏

 発表会ではメルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏が登壇してあいさつを行なうとともに、営業企画部 商品企画1課 SL担当の張明代氏が製品概要を紹介。

 上野社長は、新型SLの最大の特長はR129以来の復活となる2+2シートレイアウトにあると述べるとともに、ソフトトップは先代までのハードトップの静粛性を確保しながら最大限の軽量化を図ったと報告。また、直列4気筒2.0リッターターボエンジンはF1で培ってきた技術を採用し、どの回転域でも気持ちの良い自然吸気エンジンのようなレスポンスを実現するとアピールした。

新型SLのアンベール
メルセデス・ベンツ日本株式会社 営業企画部 商品企画1課 SL担当の張明代氏

 続いて登壇した張氏は、「70年の伝統のあるSLは、このたびクラシックなソフトトップと2+2シーターモデルとして全く新しく生まれ変わりました。パワートレーンも48Vの電気システム、エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーを採用し、メルセデスAMGのマイスターによって1機ずつ丁寧に組み上げられたエンジンを搭載しております」とコメント。

 そしてデザインについては「メルセベス・ベンツのデザイン基本思想である“SensualPurity(センシュアルピリティー:官能的純粋)”に、メルセデスAMGのスポーティな要素を取り入れております。随所にSLの長い伝統を受け継ぐ特徴的な要素を取り入れ、長いホイールベース、短いオーバーハング、長いボンネット、大きく停斜したフロントガラス、そしてフロントセクションから大きく広がっていくボリュームのあるリアエンド。また、前後のフェンダーの盛り上がりや大径のアルミホイールにより、SLはパワフルでダイナミックになりました。また、シームレスに統合されたソフトトップが純粋でスポーティな印象を強調します。パワフルでワイドなフロントエンドではAMG専用フロントグリルが最大の特徴で、14本の垂直ルーバーが入ったラジエーターグリルは、1952年製の伝統的な300 SLレーシングカーから取り入れたデザインであり、低い位置に取り付けられることで、ダイナミックなフォルムをさらに強調しています。2本のボンネットのパワードームもSLの歴史に対するオマージュとなっております。また、極めてスリムでシャープな輪郭を描いた、片側130万画素の高解像度なデジタルライトは、存在感をさらに高めております。スリムなLEDリアコンビネーションランプは、フロントのヘッドライト形状に対応しております」などとアピール。

新型SLの製品ポイント

 また、新型SLではトランクリッドにリトラクタブルリアスポイラーを採用。このスポイラーは80km/hで作動を開始し、作動時は速度、前後方向や横方向の加速度、操舵速度などのパラメーターを考慮し、走行状況に応じて5段階に角度を変化させて操縦安定性の最適化、空気抵抗の低減に役立つという。

 インテリアについては「伝統的なデザイン要素と現代的なデジタル世界を融合したハイパーアナログと呼ばれるデザインを採用いたしました。上質な素材と、丹念なクラフトマンシップ、最新のこだわりにより、ラグジュアリーを感じていただける仕上がりとなっております。表示スタイルを4種類から選択できるデジタルコックピットディスプレイは、立体的な三次元バイザーにぴったりとはめ込まれ、初代SL300の伝統を表現するとともに、ソフトトップ開口時に光の差し込みを防ぐ役割をしております。また、センターコンソールに配置された19.1インチのMBUXメディアディスプレイもドライバー重視のデザインとしております。光の反射を防ぐため、ディスプレイの傾きを電動で最大32度まで調整する機能を備えています」と紹介した。

インテリアではシートヒーター、シートベンチレーター、ステアリングヒーター、エアスカーフなどが標準装備される

 一方、パワートレーンについては「48V電気システムの技術を採用し、エネルギー回生とパワーブーストを可能としております。効率性、快適性、高性能化を実現したワンマン・ワンエンジンによる2.0リッター直列4気筒ガソリンエンジンのM139を搭載しているほか、量産車としては世界初となるエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーを採用しています。このターボチャージャーは48V電気システムと組み合わされたF1由来の技術で、今回搭載されたシステムはAMGペトロナスF1チームにおいても長年採用して実績を挙げているものです。全エンジン回転域にわたって極めて自然なスロットルレスポンスが得られ、ダイナミックな走行が楽しめます。メルセデスAMG SL 43は最高出力381PS、最大トルク480Nmを発生し、2.0リッターのダウンサイジングエンジンでありながら高い性能を誇ります。3.0リッターエンジンと比較しても損色ありません」とアピール。

ボディシェル
エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー
他モデルとの性能比較

 また、足まわりには軽量で可変ダンピングシステムを搭載した高性能なアルミニウム製ダンパーと軽量コイルスプリングを搭載した新開発の「AMG RIDE CONTROLサスペンション」を標準装備。フロントには、メルセデス AMGの量産車としては初めて5本のリンクをホイールの内側にすべて収めたマルチリンク式が採用されており、そのため運動学性能が大幅に向上したという。ホイールをコントロールする部分とサスペンション機能を受け持つ部分を相互に独立させることで、高い横加速度を可能としつつ、ステアリングシステムに対する駆動力の影響を最小限に抑制。リアサスペンションにも5リンク式が採用された。

新開発の「AMG RIDE CONTROLサスペンション」を標準装備

 なお、今回の発表会では本国スタッフからのビデオレターも寄せられ、新型SLのデザインを手がけたメルセデス・ベンツのチーフデザインオフィサー ゴードン・ワグナー氏、新型SLの開発を担当したメルセデスAMG CEOのフィリップ・シーマー氏もあいさつを行なった。

メルセデス・ベンツのチーフデザインオフィサー ゴードン・ワグナー氏
メルセデスAMG CEOのフィリップ・シーマー氏

 ワグナー氏は「私は25年務めていますが、SLは初めて手がけました。初代300 SL以外では、このSLはもっとも美しいと思います。このクルマはこれまでとは根本から変わりました。2+2シーター、ソフトトップの採用により外観が大きく変わるとともに高級感が強調されました。しかも、リアエンドは初代300 SLに似て美しい素敵なデザインになりました。レジェンドの再来ともいえるモデルですので、きっと皆さまにも気に入っていただけると思います」とコメント。

 また、シーマーCEOは「AMGブランドの中核をなすものは、言うまでもなくAMGの素晴らしいクルマたちです。ですから、本日メルセデスAMG SL 43の発表の場に参加できることを大変嬉しく思います。SLは私の心の中でも特別な場所を占めています。幸いにも自分自身が美しいSL 280のオーナーであり、この名車の正真正銘のファンなのです。さらに、今回のSLは純粋なAMGモデルであり、開発は今私がいるドイツのアファルターバッハで行なわれました。新型SLは初代SLのスポーティなDNAをAMGならではの『ドライビングパフォーマンス』と融合させたクルマであり、しかも同時にラグジュアリーや快適性においても最高の水準を究めています。ご存知のとおり、SLは日本において大変根強い支持をいただいております。今回の新型SLはこの素晴らしいクルマのサクセスストーリーを継承していくことになるでしょう。その意味からも私は近いうちにいずれかの販売店で皆さまとお目にかかれる機会を持ちたいと願っております」と述べている。

新型SLのデビューを記念し、シンガーソングライターのiriさんとコラボ。iriさんは新型SLをイメージしたタイアップ曲「friends」を書き下ろし、10月26日から配信をリリース