試乗レポート

新型Cクラスのディーゼル仕様「C 220 d」、FRメルセデスの美点を堪能した

ディーゼルの「C 220 d」がラインアップに

 2021年、フルモデルチェンジして日本に登場したメルセデス・ベンツ「Cクラス」。当初はガソリンの「C 200 アバンギャルド」から導入されたが、順次バリエーションを増やしている。最新のCクラスではディーゼル仕様の「C 220 d」がラインアップに加わった。

 C 200は1.5リッターの4気筒ターボを搭載したマイルドハイブリットだが、C 220 dは2.0リッター4気筒ターボ+マイルドハイブリットとなっている。出力は147kW/440Nmで低速回転からの力強い加速が魅力だ。

 ISG(インテグレッド・スターター・ジェネレター)によるマイルドハイブリットは、発進ではディーゼルエンジンの豊かな低速トルクに加えて電気モーターでサポートする。レスポンスのよさ、エンジン回転の滑らかさが気持ちよく、これは逸品に違いないと確信する。ディーゼルが得意とする高速クルージングに加えて街中のストップ&ゴーなど、どんな場面でも柔軟性のある力強いパワーユニットはメルセデスらしい走りに磨きをかけている。

今回の試乗車は2021年6月に発表された新型Cクラスのディーゼルモデル「C 220 d アバンギャルド」(682万円)。新型Cクラスでは内外装デザインに新型Sクラスの要素を取り入れ、随所にCクラスらしいスポーティさも表現。ISG(インテグレーテッド スターター ジェネレータ)とプラグインハイブリッドにより、全ラインアップが電動化されたのがトピックの1つ。ボディサイズは4755×1820×1435mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm
短いフロントオーバーハングと長いホイールベース、さらにリアオーバーハングの組み合わせによりダイナミックなプロポーションを実現。先代モデルと比べて全幅の拡大を10mmに抑えながら、全長は65mm伸長し、伸びやかなシルエットに仕上げている。足下は17インチホイールにピレリ「Cinturato P7」(225/50R17)をセット
C 220 d アバンギャルドはエンジン単体で最高出力147kW(200PS)/3600rpm、最大トルク440Nm(44.9kgfm)/1800-2800rpmを発生する直列4気筒DOHC 2.0リッターターボ「OM654M」型エンジンを搭載。エンジンとトランスミッションの間に配置されるマイルドハイブリッドシステムのISGにより、最大で15kW(20PS)、200Nmのブーストが可能。WLTCモード燃費は18.5km/L
ドライバー重視のスポーツ感を強調するためにダッシュボードと縦型の11.9インチのメディアディスプレイを6度、ドライバー側に傾けた新たなデザインを採用した。ホイールベースが前モデルより25mm、後席レッグルームは21mm伸長され、後席のヘッドルームも13mm拡張したことで後席の居住性が向上(数値は欧州参考値)
コックピットディスプレイとメディアディスプレイは3つのスタイル(ジェントル、スポーティ、クラシック)と3つのモード(ナビゲーション、アシスタンス、サービス)の中から選択可能

 トランスミッションはトルコンATの9速。スムーズで滑らかな変速なのが持ち味だ。低回転でどんどん変速して、いつの間にか高いギヤに入っている。ディーゼルのトルクはその負荷を補って余りある。しかもノイズ、振動自体も小さいことに加えて遮音もしっかりしているので静粛性は極めて高い。

 アクセルを踏み込むと一瞬の間を置いてシフトダウンして加速体制に入る。この一連の流れも滑らで質が高い。高速道路に乗り入れると粛々とクルージングし、メルセデスの真骨頂を示す。高いボディ剛性とメルセデスらしい路面にベタッと張り付くような安定性、それをドライバーに伝える乗り味はFRメルセデスの美点。ドライバーにとっては寛ぎと安心を同時に手に入れられることになる。

 レーダークルーズコントロールを使用すれば、見事なレーンキーピング能力とともに、高速域での安定した走りを体験することになる。クルマがまっすぐ走る。一見当たり前だが、それがいかに重要なことかはメルセデスの少し太めのハンドルを握るとすぐに分かる。

乗り心地はプレミアムセダンらしく快適そのもの

 街中でもハンドルの切れがよく、全長4755mm、全幅1820mmのサイズをまったく感じさせない。いつも堂々としている3ボックスセダンだが、狭い場所での取りまわしも素晴らしい。2865mmのロングホイールベースに対応して一部スポーツグレードには後輪操舵の4WSの装備も可能だが、小まわり性のよさはそれがないC 220 dでも十分に堪能できる。

 ヘッドアップディスプレイにはAR技術を駆使した道先案内が表示されるが、インフォティテイメントの分野でもメルセデスはトップクラスをひた走る。「ハイ、メルセデス(Hi,Mercedes)」の単語に反応して、オーディオやエアコンなどを音声でいとも簡単に操作できる。デジタル世代だけでなく誰にでも使いやすく作られているのがポイントだ。

 乗り心地はプレミアムセダンらしく快適そのもの。どの席でもたっぷりしたシートに身を委ねればリラックスでき、路面からの微振動もよくカットされていながら、それでいてクルマの姿勢を把握しやすい。ドライバーにとって路面インフォメーションや姿勢をすぐに感じ取れるのは重要だが、パッセンジャーにとってはクルマ酔いをしにくいクルマがCクラスだ。

 トランクスペースもセダンだからと言って侮ってはいけない。リアシートバックが前倒しトランクスルーにもなり、長くて広大なラゲッジルームが出現する。これなら長尺物も積み込める。

トランクスペースのレイアウト

 価格は682万円で、これに「ベーシックパッテージ」や「レザーエクスクルーシブパッケージ」などを加えて約765万4000円だが、その価値は十分にあると思う。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛