試乗レポート
ポルシェ、バッテリEV「タイカン4クロスツーリスモ」の質感が高いシャシーワークに感服
2022年2月28日 06:00
男も惚れる、イケメンっぷり!
ポルシェ初の量産BEV(バッテリ電気自動車)である「タイカン」。そのルーフ&ハッチを延長した「タイカン4クロスツーリスモ」を眺め、久々に超美形なエステートが登場したな! と胸が躍った。
もっともポルシェはこのクロスツーリスモを、タイカンよりも20cmほど車高を上げることによって、エステートやワゴンではなく「CUV(クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル)」と呼んでいるようだが。
そんなタイカン4クロスツーリスモの完成されたイケメンっぷりは、BEVだからこそ実現できた。フロントセクションにエンジンを積まないBEVだからこそ、これだけ低く構えた(車高は高いが)ノーズが得られ、美形のエステート……もといCUVとなったのである。
ちなみにポルシェはタイカンを「電動スポーツカー」と呼んでおり、実際走らせるとその言葉に間違いがないことを思い知らされる。しかし、そのロングホイルベースな4ドアボディをノッチバックしたスタイルは、どちらかといえばサルーンであり、実はかなり落ち着いたルックスである。
対してタイカン4クロスツーリスモは、そのCUVスタイルが断然若々しい。そして大容量バッテリを積むためのロングホイルベースが、間延びせず理にかなって見える。
同時にタイカン4クロスツーリスモは、CUVボディのベーシックモデルながら、その装備もちょっと豪華である。
後輪駆動の一番ベーシックなクーペ・タイカン(分かりやすくするためにあえてこう呼ぼう)が1モーターの326PS(ローンチコントロール時は408PS)であるのに対して、こちらは2モーターの4輪駆動となる。それゆえ「パフォーマンスバッテリプラス」が標準装備になってパワーも380PS(ローンチコントロール時は476PS)に上がっている。
そしてその足下には、スマートリフト機能を搭載するPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)付きのアダプティブエアサスペンションまで付いてくる。
ただし、航続距離については重量差やパワー差のせいだろうか、タイカンの354~431Kmに比べて360kmと、ほとんど差がないばかりか、場合によっては短くなるようだ。
それでいて価格は、タイカンの138万円増しだけなのである。1341万円という価格は、絶対値として高い。また、ポルシェをゼロ・オプションで買うことなど実質ないから、その値段はさらに上がる。ちなみにオプションてんこ盛りの試乗車は、1800万円オーバーのゴージャス仕様であった。
それでもタイカン4クロスツーリズモは、アーリーアダプターのみならず、目の肥えたポルシェ・ユーザーの心も上手にくすぐるだろう。なぜならそのルックスや使い勝手だけでなく、ポルシェ・シャシーで味わうBEVの気持ちよさが格別なのだ。
路面からのフィードバックは極めて正確で、それでいて操舵感は軽やか。カドのない、適度に引き締まったエアサスの乗り心地もポルシェらしさに溢れている。
加速力は0-100km/h加速が5.1秒とローンチコントロール時の476PSでも、実はテスラ「モデル3 ロングレンジ」に及ばない。全開加速も目がくらむようなロケットダッシュをするわけではないのだが、4WDのトラクションとリニアなモーターレスポンスが、欲しいときに欲しい加速をきちんとくれる。
もちろん飛ばせばかなり楽しい実力の持ち主だが、ゆっくり走らせていても質感が高いから、日本の道路環境にはすごく合っていると思う。そしてこういう走りを支えているのが、ポルシェのシャシーワークである。
面白いのはこのタイカンシリーズに呼応するように、内燃機関のシリーズ、特にモデルチェンジを果たしたタイプ992型「911」のターボやGT3が、マッシブな乗り味を表現してきたことだ。「心地いい走りはタイカンで」とばかりに、その本質を解き放ってきたことである。
やはりその歴史が長い分だけ、ポルシェは大人なのだと思う。大げさな回生ブレーキを提供しないその姿勢からも分かるが、彼らがタイカンで表現した走りには、子供っぽさがない。童心に返りたいのなら「911」や「ボクスター/ケイマン」をどうぞ……。極めて贅沢な無言のメッセージだが、それこそがポルシェというブランドの気高さであり魅力である。