試乗レポート

日産「ノート」「ノート オーラ」の2WDと4WDの違いとは? 氷上で確かめた

 長野県の蓼科にある女神湖。ここは人工湖で夏は避暑地として、冬は氷上ドライビングに利用される。今年は氷の厚さが30cmほどあり、湖一面がしっかりした氷盤路となっている。似ているようで氷と雪では全く異なる路面。女神湖は一面が油氷状態だ。それでも現在の最新のスタッドレスタイヤは人も歩けないような氷の上で走り、曲がり、止まる能力は素晴らしい。

 日産自動車が開催した氷上試乗会ではメイン車種の「ノート」の2WD(FF)と「ノート オーラ」の4WDを中心に「ノート AUTECH クロスオーバー」「ノート オーラ NISMO」、そしてFRの「スカイライン」、「GT-R」などを自由に乗ることができた。注目はノートとノート オーラのFFと4WDの走りの違いだ。用意されたコースは氷盤のスラロームと円旋回、8の字旋回、そしてトリッキーなハンドリングコースがある。

日産の氷上試乗会は長野県にある女神湖で行なわれた

 さて、ノートの4WDは直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」型エンジンで発電した電気でフロントとリアのモーターをまわすツインモーター4WD。フロントモーターは85kW(116PS)/280Nm、リアは50kW(68PS)/100Nmの出力を持つ。ノート オーラの4WDではフロントモーターの出力がアップして100kW(136PS)/300Nmとなるのが大きな違いだ。リアモーターはノートと共通の50kW仕様だが、高出力化したフロントモーター、17インチ化したタイヤに合わせて専用チューニングを実施している。

 4WDとしてはフロントが空転した時に後輪が駆動するいわゆるスタンバイ4WDとは違い、積極的に後輪に駆動力を伝えるのが特徴だ。FFのノート オーラ NISMOなども用意されており、FFとの比較がしやすい。装着タイヤはブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザック VRX3」(一部車種はVRX2)だった。

各試乗車はブリヂストン「ブリザック VRX3」(一部車種はVRX2)を装着

FFよりもライントレース性が高く、安全マージンはかなり高い

 いよいよ氷上での試乗が始まる。FFではスタートで不用意にアクセルを踏むとトラクションコントロールが作動しっぱなしで思うように速度が乗らない。

 しかし4WDでは前後モーターが効率よくトルク配分を行ない加速していく。やはり駆動力制御が入りアクセルコントロールは必要だが、このような極低ミュー路でも高い実力を発揮する。

 ノート オーラ 4WDの出力はフロントモーター300Nm、リアモーター100Nmのトルクがある。前後輪同時にピークパワーを出すことはできないが、常に最適値のトルクを配分する。これがアイスバーンでも直進性に活かされ容易に加速する。

4WDのノート オーラ G FOUR(286万8800円)

 一方、アクセルOFFで回生ブレーキを積極的に使うSPORTモードかECOモードではワンペダルで安定した姿勢で減速できる。日常的に雪道を走るケースが多いドライバーには、このモードは有効ではないかと感じた。

 ではフットブレーキはといえば、今回のような油氷でもABSを効かせながら短く止まれる。ただ、コーナリング中のブレーキはタイヤの縦方向と横方向のグリップをすぐに使い果たしてしまうので、すぐにアウト側にはらんでしまう。

 電動4WDの特徴が最も現れたのは円旋回だ。1本のパイロンを旋回するコースではFFではなす術がなく、タイヤのグリップ限界以内に速度を落とすしかない。

 ところが4WDでは前後の駆動力配分を状況に応じてコントロールするので、フロントノーズをインに入れやすくなる。さらに一瞬のタイミングを逃さず、後輪の駆動力を前輪に合わせるように配分されるので、弱いテールアウトの姿勢になり、一定舵角でアクセルコントロールのみでグルリとまわることができる。

2WDのノート オーラ G leather edition(269万9400円)

 例えばFRでは繊細なアクセルワークをしてもいったんグリップを失った後輪を立て直すのは難しく、スタンバイ4WDも姿勢を安定させてグルリと旋回させるのも難しい。前後モーターの駆動力を必要に応じてシームレスに配分することできるe-POWERの4WDならではの姿勢安定性だ。円旋回ではフロントがインを向き始めたら躊躇なくアクセルを踏むことがポイントだ。リアモーターの出力はフロントモーターよりも小さいので、スピン状態に入ることはまずない。円旋回中、発電用エンジンはまわりっぱなしで前後モーターに電力を供給するのに忙しい。

 実は先代ノートの後期型にも4WD仕様があったが、後輪モーターの出力が小さく、新型ノートの4WDのように積極的に後輪を使うにはパワー不足だった。言ってみればスタンバイ4WD的なポジションだ。

各コースの走行イメージ(3分1秒)

e-POWER 4WDの仕上がりは予想以上に高い

4WDのノート オーラ G FOUR leather edition(295万7900円)

 円旋回からトリッキーなハンドリング路に向かいFFと比較する。FFでも加速時の安定性は高く、速度が乗っても目まぐるしく変わる路面変化に注意すれば、FRのような尻振り現象は起こらない。FRではスタートさえままならずトラクションコントロールが効きっぱなしで常に姿勢制御が入る。

 ではとノート/ノート オーラの4WDに乗ると、前輪で引っ張ると同時に後輪にも駆動力がかかり、制御もまったく滑らかでまっすぐに加速する。SPORTモードでのアクセルOFFではコーナーでも4輪で減速するので姿勢安定性が高い。

 さらに高い速度からフットブレーキを使った場合でもアクセルOFF時に前後姿勢を抑えるため安定した姿勢で減速する。タイヤグリップ以上のことはできないが最初の制御は重要だと感じた。

 FFではコーナー手前で充分減速して路面を選ぶしかなかったが、ノート/ノート オーラ 4WDでは路面を読みながら注意すればアンダーステアを御しやすい。路面ミューが急に落ちるコースでもFFよりもハンドル操作量が少なく、クルマが曲がろうとする力が高いことを確認できた。レスポンスに優れた電動モーター、そして巧みな前後駆動力配分システムを持つe-POWER 4WDの仕上がりは予想以上に高かった。

4WDのノート X FOUR(244万5300円)

 このような低ミュー路では、スーパー4WDスポーツカーのGT-Rと言えどもコース内にとどめておくだけで精いっぱいだし、オンロードでは快音を発するスカイラインのV6パワーもそれを発揮する間もなく、アクセルとハンドルワークに手こずった。このような路面では軽量4WDに勝るものはない。FFとの価格差は4WDでは約26万円ほど高くなるが、雪国で常用するなら4WDは安全に大きな寄与をするだろう。

FRのスカイライン GT Type P(463万8700円)
4WDのGT-R Premium edition T-spec(1590万4900円)
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一