試乗レポート

日産の新型「ノート オーラ」、コンパクトクラスで上質さに感心したクルマはほかに心当たりがない

このクラスの他車にはない上質さ

 横須賀の追浜にあるグランドライブで試乗して好感触を持っていた「ノート オーラ」を、公道でドライブする機会が訪れた。今回試乗した4WDの「G FOURレザーセレクション」の価格は300万円近く、下限の2WDのGでも260万円超と、このクラスとしては高めではあるが、ノート オーラのようなプレミアムコンパクトの登場を待っていた人は少なくなかったようで、発売後3週間ですでに1万台超を受注しており、輸入車からの買い替えも多いという。

 あらためて実車を見ても、内外装のディテールにまで上質さにこだわったことが見て取れる。標準のノートもなかなか凝っていると感じていたが、ワイドボディをまとったノート オーラはさらにプロポーションのバランスがよく、存在感がある。専用のグリルやホイールの際立つデザインや、横一文字のLEDリアコンビランプによる後ろ姿も印象的だ。コンセプトどおり、このクラスの他の車種にはない上質さを感じさせる。写真のテーマカラー「ガーネットレッド/スーパーブラック」のほか、全14色が用意されたボディカラーも魅力的な色がいくつもあって選ぶのに迷いそうだ。

今回試乗したのは8月17日より販売を開始した新型「ノート オーラ」で、グレードは電動4輪駆動システムの「e-POWER 4WD」を採用する「G FOUR leather edition」(295万7900円)。ボディサイズは4045×1735×1525mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2580mm
標準のノートから40mmワイド化して全幅が1735mmとなり、ノート オーラでは3ナンバーボディとなった
外観ではボディのワイド化に伴って超薄型LEDヘッドライト/LEDシーケンシャルターンランプ(兼デイタイムランニングランプ)を採用するとともに、フォグランプや横一文字に点灯するリアコンビネーションランプといった灯火類も全てLED化。軽量化にひと役買う樹脂加飾付き17インチアルミホイール(タイヤはブリヂストン「TURANZA T005A」でサイズは205/50R17)も採用

 インテリアも上質そのもの。レザーセレクションのシートは、身体の滑りを防ぐ効果もあるという表皮のキルティングラインも目を引く。各部に配された木目調フィニッシャーやツイード調織物も、このクラスにはない独特の雰囲気を見せている。

 眼前には先進的な表示のワイドディスプレイが配されて、コネクティビティも充実している。視界も良好で目線はそれほど高くはないながらもミニバンのように見晴らしがよく広々としており、居心地のよい空間が構築されている。

 後席もシートの作りがしっかりとしていて、頭上や膝前、横方向の空間も十分に確保されているので、ファミリーユースにも使える。欲をいうと、プレミアムカーらしく後席向けの空調が装備されて、もう少しカカトの収まりがよくなるとなおありがたい。ラゲッジ容量もこのクラスとしては広い方だ。4WDではフロア下にいろいろ詰め込まれていて、補機用の12Vバッテリーまでもこちらに積まれているのには驚いた。

インテリアではツイード表皮と木目調パネルをインパネに採用するとともに、ツイード表皮シート(または本革3層構造シート)、センターコンソールのイルミネーション、クラス初採用の12.3インチフルTFTメーターなどを新たに装備し、五感で感じる美しさと機能性を追求
本革巻きステアリングの右側にプロパイロットが備わる
運転席前のフルTFTで視認性に優れた「アドバンスドドライブアシスト ディスプレイ(12.3インチカラーディスプレイ)」は、9インチの「NissanConnectナビゲーションシステム」と1枚に繋がるデザイン。12.3インチフルTFTメーターは、従来からあるようなタコメーター(e-POWERではパワーメーター)とスピードメーターを並べたような「クラシック表示」、中央のナビゲーションの表示を大きくしつつ独創的なメーター表示を行なう「エンハンス表示」の2種類を設定。ドライブモードは「SPORT」「ECO」「NORMAL」から選択可能
人間工学に基づき疲労が軽減するように設計された「ゼログラビティシート」を全席に採用。オプション設定の「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」(8スピーカー〈フロント、前席デュアルヘッドレスト、ツイーター〉、パーソナルスペースコントロール)では、BOSE独自のアドバンスドシグナルプロセッシングテクノロジーがもたらす広がりのあるプレミアムな音響を体感できる
ラゲッジ下に補機用の12Vバッテリーなどがレイアウトされる

ひとクラス上の電気の走り

 公道でドライブしても、グランドライブで感じたよい印象はそのまま。ノート オーラのために出力やトルクを向上した第2世代のe-POWERは、より静かでなめらかで力強くなっている。最高出力が100kW(136PS)、最大トルクが300Nmまで引き上げられたおかげで、踏み込んだときの加速力は相当なもの。特にSPORTモードでの瞬発力と伸びやかな加速フィールは、なかなか快感だ。

 e-POWERはどれもそうだが、アクセルを踏んだ瞬間まったく遅れなくレスポンスしてくれるのは本当に気持ちがよい。これはICE(内燃エンジン)はもちろん、パラレルハイブリッドの他車でいくら強力なモーターを搭載していても、初期の応答性だけはe-POWERにかなうものにはまだお目にかかったことがない。

ノート オーラのe-POWERは現行ノート(116PS/280Nm)からモーターの出力が18%、トルクが7%アップし、最高出力100kW(136PS)/3183-8500rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/0-3183rpmを発生。4WDモデルのリアモーターは現行ノートと共通の50kWというスペックになるが、100kW化したフロントモーター、17インチ化したタイヤのパフォーマンスなどに合わせて専用チューニングを実施。これにより発進・加速、減速、コーナリングといった次世代電動4WDの走りに磨きをかけたという。4WDのWLTCモード燃費は22.7km/L(2WDは27.2km/L)

 走りは極めてスムーズで、低速走行時にエンジンがかかる頻度も非常に少なく、静かさにも磨きがかかった。実はタイヤ回転数の変動から路面状態を推定し、ロードノイズが大きくエンジン音が分かりにくい荒れた路面で発電を行なうという、賢いことまでやっているらしい。加えてノート オーラではルーフやドア、フロントドアのガラスなどに遮音対策が施されている。

 その静かな空間に与えられた国内初採用という「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」も、ヘッドレストのスピーカーにより、クルマの中とは思えない広がりのある音場を実現していて感心した。これまたプレミアムカーとしてふさわしいものだ。

e-POWER 4WDの大きな恩恵

 フットワークにおいても、次世代電動4輪駆動システムをうたう「e-POWER 4WD」が効いて、より上質な走りを実現している。リアにも68PS/100Nmという強力なモーターを搭載し、かつてのe-4WDのように低速だけでなく全車速域において4輪を駆動し、最適に制御しているおかげだ。

 もともとe-POWER 4WDは、発進時からうまく駆動力を分散させて4輪で路面をつかみながらフロントをあまり浮き上がらせることなくフラットな姿勢を保ってくれるのが強み。さらにワイドトレッドのノート オーラでは、ハンドリングもより気持ちのよい仕上がりとなっている。

 軽いながらもしっかりしたステアリングを切ったとおりピタッとキレイについてくるのに加えて、ワイドトレッドのおかげで安定感も高く、コーナリングでの踏ん張りもきく。曲がりくねった都市高速のJCT(ジャンクション)でも揺り戻しもなくヨーの収まりもよいので、姿勢を乱すこともなく、イメージどおり狙ったラインをスムーズにトレースしていける。

 ストローク感のある足まわりがしなやかに路面を捉え、車体の動きや目線が縦にも横にもブレないのも、おそらく裏でいろいろ駆動力を緻密にコントロールしているのも効いてのことだろう。おかげで長距離を乗っても疲れにくい。取材日はまる1日、一般道や高速道路を走ったのだが、お伝えしたような走りのよさはもとより、疲労を軽減すべく設計された「ゼログラビティシート」や、もちろん「プロパイロット」の恩恵もあって本当に疲れ知らずだった。

 車両重量は2WDよりも110kg重く、コーナリングでは大きなモーターを積むリアのイナーシャを感じるシチュエーションもなくはないものの、普通に乗るにはe-POWER 4WDのメリットは乾燥した舗装路でも絶大だ。とにかく、かつての簡易的なe-4WDとはまったく別物であることを、あらためて念を押しておきたい。

 見た目はもちろん、実は走りも上質で、4WDはさらに輪をかけて上質に仕上がっていると認識いただけるとよいかと思う。コンパクトクラスでこれほど上質さに感心したクルマというのは、ほかにちょっと心当たりがない。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学