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住友ゴム2022年度決算説明会、水素と太陽光発電の自然エネルギーを利用した製造時カーボンニュートラル量産タイヤ初披露

2023年2月14日 実施

住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 山本悟氏と製造時CN(カーボンニュートラル)を達成したファルケン「アゼニス FK520」

2022年度は過去最高の売上額だったものの減益

 住友ゴム工業は2月14日、2022年度決算説明会を実施した。登壇した山本悟社長は、「新型コロナウイルス感染症の影響は回復傾向にあるものの、高水準のインフレと急激な金利上昇、ウクライナ情勢による地政学的緊張、為替や物価の動向が不透明なため、不確実性の高い経済環境が続いている。また、多くの市場で回復基調が見られるが、海上運賃や原材料価格、エネルギーコストの高騰もあり、まだまだ見えない部分がある」と2022年度を振り返った。

 そして今期については「経営基盤強化を目指して全社でプロジェクトを強力に推進するほか、顧客ニーズに対応した高機能商品を開発・増販するとし、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果を最大化させることでグローバル体制による競争力強化を図る。そのために2027年を目標年度とした新たな中期計画の再編成を行なった」と説明した。

2022年度 連結業績

 2022年の連結業績については、売上収益が過去最高の1兆987億円で前年比117%、事業利益が220億円で同42%、営業利益が150億円で同30%、当期利益は94億円で同32%と、増収減益であったと報告。

 要因としては、天然ゴムや石油などの原材料高騰も挙げられ、これに対しては値上げ対応でカバーしたものの、海上運賃やエネルギーコスト増、さらに為替や経費などのマイナスも積み重なって、2021年の事業利益520億円に対してマイナス300億円の220億円になったと説明した。

2022年度 連結事業利益 増減要因イメージ

 また、2023年度の連結業績予想は、売上収益が1兆2000億円の前年比109%、事業利益が350億円の同159%、営業利益が300億円の同200%、当期利益が180億円の同191%と、増収増益の見通しとした。また、設備投資額も659億円と2022年の680億円と同等額を投資すると説明。

2023年度 連結業績予想
設備投資額、減価償却費(有形)の推移

カーボンニュートラルに向けた取り組みも積極的に推進

 カーボンニュートラルに向けた取り組みについて山本社長は、「福島県にある白河工場で、これまでは天然ガスを使って動かしていたボイラーの燃料を水素に切り替え、さらに太陽光発電の自然エネルギーを利用した製造時カーボンニュートラルを達成した量産タイヤとなるファルケン『アゼニス FK520』の生産に成功した」と発表。このタイヤは欧州から投入される予定という。

カーボンニュートラルに向けた取り組み
製造時カーボンニュートラルを達成したファルケン「アゼニス FK520」。初めて製造された製品のため、記念にサイドウォールに関係者のサインが入れられた

路面状況に応じてゴムが変化する「アクティブトレッド技術」を搭載した次世代オールシーズンタイヤを2024年に商品化

新たな中期計画の説明を行なった住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 山本悟氏

 2027年を目標年度として再編成を行なったという新たな中期計画については、DX経営のための基幹システムの刷新は2025年までに完了させ、基盤強化活動による組織体質改善や、既存事業の選択と集中、成長事業の基盤づくりへの注力を今後も継続させつつ、事業ポートフォリオの最適化と成長事業のさらなる拡大を推進するなど、新たな中期計画の骨子を説明。

中期計画骨子

 特に北米事業の利益悪化や固定費・変動費増による損益分岐点の悪化により、2016年から2022年にかけて事業利益が556億円も低下したタイヤ事業については、北米でしっかりと稼げる体質への変革と、既存事業の選択と集中、運営・組織体制の再構築、成長事業の基盤強化などの対策を講じつつ、投資余力をつくり2026年以降に北米に新たな生産拠点を設け、地産地消率を40~45%ぐらいまで引き上げたいとしている。

 そのほかにも、中期計画の課題解決を強力に推進させるために、役員を中核とした“変革プロジェクト”を立ち上げるほか、「企画開発体制を拡充し、最新のデジタル技術を活用したスマートタイヤコンセプトのテクノロジをさらに進化させて開発した、新商品を投入する」と山本社長は展望を語った。

実効性を高める変革プロジェクト推進
スマートタイヤコンセプトでのタイヤの進化

 また、ウエット路面や凍結路面など路面状況に反応してゴムの機能がアクティブ(能動的)に変化して常に最適な性能を発揮するという、現在開発中の「アクティブトレッド技術」を搭載した新たなオールシーズンタイヤを2024年に商品化し、まだオールシーズンタイヤが浸透していない日本市場へ積極的に導入するとした。

 さらに、このアクティブトレッド技術に加え、サイレントコアやセンシングコアを搭載し、現状のEV用タイヤよりも転がり抵抗を30%低減、20%軽量化を実現した次世代EV用タイヤを、2027年の発表を目標に開発。加えて、センシングコア技術を活用した「車輪脱落予兆検知」機能は、大型車を扱う4社から有効性があると判断され、今後は実装に向けてメーカーへ提案していくと、最新技術の進捗状況を紹介した。

アクティブトレッド技術を搭載したオールシーズンタイヤでCASE+サステナブルな社会に貢献
次世代EVタイヤと独自技術の組み合わせで、将来のモビリティ社会に貢献
センシングコアの事業化