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日産、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の進捗 2030年度までに電動パワートレーン3機種、内燃機関16機種まで絞り込み

2023年2月27日 発表

日産自動車株式会社 COOのアシュワニ・グプタ氏

 日産自動車は2月27日、2030年に向けた長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の進捗について発表を行ない、電動化に向けた最新動向、テクノロジーの現地化、内製ソフトウェアによるSDV(Software Defined Vehicle、ソフトウエア定義の自動車)の拡大といった項目について日産自動車 COOのアシュワニ・グプタ氏が説明を行なった。

 2021年11月に発表された「Nissan Ambition 2030」では、今後5年間で2兆円の投資を行ない、車両の電動化と技術革新を加速させるとともに、2030年度までに15車種のBEV(バッテリ電気自動車)を含む23車種の電動車を導入し、日産、インフィニティの両ブランドあわせてグローバルでの電動車のモデルミックスを50%以上とすることを目指すとアナウンス。

 この目標の達成に向け、2026年度までにBEVとe-POWER搭載車を合わせて20車種導入し、各主要市場における電動車の販売比率について「欧州:75%以上」「日本:55%以上」「中国:40%以上」「米国:2030年度までに40%以上(EVのみ)」のレベルまで向上させるとしていた。

 今回の発表では「Nissan Ambition 2030」における2つの戦略的な柱について説明が行なわれ、どのように日産が電動化を加速化しているか、またソフトウェア定義型車両をどう開発して新しい価値を創造するかという点について語られた。

 グプタCOOはまず、BEVとe-POWER搭載車のグローバルでの累計販売台数がそれぞれ60万台、70万台となり、電動車の販売比率(2022年第3四半期)はグローバルで13%であることを報告するとともに、市場のトレンドについて「日本国内についてはハイブリッドの需要が高いですが、その一方で政府のお客さまに対するサポートもあり電気自動車は大変ご好評いただいております。ですからこそ、日産としてはまずはe-POWERで進み、また電気自動車をリードするためにサクラ、アリア、リーフのラインアップでご提案しています。欧州については電気自動車の普及が進んでおりますが、日産は電動車のラインアップを2026年までに100%揃えたいと思います。これはNissan Ambition 2030よりも前倒しということになります。アメリカについてはカーボンニュートラルに政府が集中していますので、インフレーション抑制法(IRA)によって当社は電動化をスピードアップすることができます。すでに道筋をつけてIRAの要件を満たすべく準備を進めております。中国については、ローカルブランドが電気自動車の市場をけん引していますが、そういった中で当社は中国専用の電気自動車のSUVを2024年に投入する計画です」とコメント。また、充電インフラが不足する地域ではe-POWER搭載車が好評を博しており、メキシコ、南米、エジプトなどでe-POWER搭載車の投入を推進していくとした。

 これをもって「Nissan Ambition 2030」当初の目標である「2030年度までに15車種のBEVを含む23車種の電動車を導入」を「2030年度までに19車種のBEVを含む27車種の電動車を導入」へとアップデートするとし、グプタCOOは「これは今の仮説です」と前置きしたうえでグローバルでの電動車のモデルミックスが55%に上がると述べた。

 また、2026年度に向けた国別の内訳について、欧州では100%の乗用車が電動化され(小型商用車も入れると98%。当初見込みは75%)、中国では35%(当初見込みは40%)。日本はサクラの販売が好調であることから58%(当初見込みは55%)、米国はIRAによって「40%以上になるという確信があります」(グプタCOO)とした。

 一方、テクノロジーについては「バッテリ」「e-パワートレーン」「プラットフォーム」が3本柱になるとし、バッテリでは従来に比べエネルギー密度が2倍、充電時間が3分の1になる全固体電池を2028年度に市場投入することを報告。また、e-パワートレーンについて「電気自動車とe-POWERの電動パワートレーンを共用化するなどコンパクトに多角化して、そしてインパクトのあるパワートレーンを実現します」と述べるとともに、プラットフォームについては「栃木工場にいらした方はご存じだと思いますが、同じラインでe-POWER搭載車も電気自動車も生産できるということです。そうすることによって市場のミックスに対応し、効率化を実現します」と説明した。

 プラットフォームについては現在「キャシュカイ」はCMF-CDプラットフォーム、「ジューク」はCMF-Bプラットフォーム、「リーフ」はEVプラットフォームを採用しているが、この3車種はCMF-EVプラットフォームに1本化して次期型の生産を行なうという。また、パワートレーンについてグプタCOOは「2020年度は元々全体で49機種のパワートレーンが存在しました。49機種のうち、4機種が電動パワートレーンで、45機種が内燃機関でした。これを45%削減して、2026年度には27機種(4機種が電動パワートレーン、23機種が内燃機関)に絞り込みます。2030年度になりますとさらにパワートレーンの種類を最適化して19機種(3機種が電動パワートレーン、16機種が内燃機関)まで絞り込みます」と発表。

 また、電動化への今後の投資については「研究開発と設備投資は売上高からして7~8%のレベルを維持したいと思っております。これはグローバルなベンチマークだからです。こうするためにどうするのか、これはもうすでに取り組みを進めていますが、スマートな再配分をリソースでやるということです。財務リソースだけではなく、スキルとコンフィデンスのリソースの再配分をしながら徐々に内燃機関から電動化にシフトしていきます。そして、そもそも当社が投資をするビークルエナジージャパンに出資すると決めた理由の1つは、そうすることによって300人以上のバッテリのエンジニアを使えるようになるからです」と述べるとともに、2010年のリーフ投入までに1兆円以上の投資をしてきたこと、新しい栃木工場に330億円、フォーアルエナジーに20億円、EV36ZEROに10億ポンド、米キャントン工場に5億ドル、米デカード工場に2.5億ドルの投資を行なっていることを報告。2030年に向けては米スマーナ工場にも投資することを明らかにした。

 なお、SDVについては2025年からOTA(Over the Air)の機能を拡張して運転支援技術、e-パワートレーン、Google Automotive Servicesなどの機能がアップデートできるようになるという。その更新頻度については、「品質保証」(バグの修正)などは必要に応じて、「車載インフォテイメント用のアプリ」「Nissan Cnnect」などは1~3か月ごと、「車両の機能」(自動運転/ナビ機能の更新など)は1年~とアナウンスされた。

 グプタCOOは「改めて私どもは人々の生活を豊かに、イノベーションをドライブ続けることが存在意義です。一方で既存の事業があります。既存の事業をドライブしてるのは商品と技術です。ただ、これは一過制の接点で、よりクリーンで安全でインクルーシブなクルマをご提案するということです。そうするためには電動化、運転、支援技術、そしてデジタルコネクテット化サービスなどがございます。当社は今後、お客さまの体験価値を創出したいと考えています。これはお客さまとも人生を通した寄り添う、繋がりを実現していくということで、そのためにはデジタルトランスフォメーションを推進します。そして、ソフトウェア定期型車両はそれを可能にするものです。車両とヒューマン、エコシステムとエネルギー、エコシステムを繋げるものです。つまり、売上高の観点から言うと共通した価値を最大化するということです」と説明している。