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三菱自動車の新型「デリカミニ」について商品企画担当者に聞く デザインや4WDモデルのこだわりポイントとは?

5月25日に正式発売となる新型「デリカミニ」について、三菱自動車工業株式会社 商品戦略本部CPSチーム(Domestic Vehicle)商品企画の中村祥介氏にコンセプトやこだわりを聞いた。写真の新型デリカミニのグレードはT Premiumの4WD。ボディカラーはライトニングブルーマイカ(ディーラーオプション装着車)

 三菱自動車工業のクルマには、現行車、生産終了車含めて「熱烈な支持」を受けるモデルが多くある。その1つがタフなワゴンとして続く「デリカ」シリーズである。

 デリカの歴史は1968年に発売した「デリカトラック」から始まっている。そして1969年に「デリカ バン」を追加するとともに、その後に登場するキャブオーバーワゴン「デリカ」シリーズのルーツとなった「デリカ コーチ」が発売された。

1968年に登場した「デリカトラック」

 1979年には2代目「デリカ スターワゴン」が登場し、1986年に3代目へと進化。そして1994年の4代目は「デリカ スペースギア」となる。このモデルはパジェロ譲りの本格4WDシステムを採用したことで、悪路走破性に優れたワンボックスカーという独自のポジションを確立するものとなった。

 2007年に登場した5代目は「デリカ D:5」という名称になり、進化を続けながら「ライバル車不在」といえる強さを維持。そして2019年2月にビッグマイナーチェンジを行なって現行型のデリカ D:5となった。

1994年に登場した「デリカ スペースギア」。現在のデリカのイメージを固めたモデル
2007年に登場した「デリカ D:5」
2019年にビッグマイナーチェンジを行ない現行型となった

 このように歴史のある「デリカ」の名前を付けた新型車が、5月25日に正式発売される新型デリカミニだ。

 デリカミニは「Reliable & Active Super Height Wagon(頼れるアクティブな軽スーパーハイトワゴン)」をコンセプトにしたモデルで、エクステリアはデリカらしくアクティブさを感じさせるデザイン。タイヤもSUVイメージで大径としている。そして室内スペースは広さも高さもあって、快適さと便利さを兼ね備えたものになっている。

 エンジンは「T Premium」「T」グレードにはターボチャージャー付のハイブリッドを搭載。「G Premium」「G」グレードは自然吸気エンジン仕様のハイブリッドとなる。駆動方式は各グレードに2WDと4WDを設定。運転支援機能は「T Premium」と「G Premium」に高速道路同一車線運転支援機能「マイパイロット」を標準装備。同時に衝突被害軽減ブレーキ(FCM)や踏み間違い衝突防止アシスト(EAPM)といった8つの先進安全装備からなる先進安全装備「三菱 e-Assist」も装備される。

デリカミニ価格一覧

モデルエンジン変速機駆動方式価格
T Premium直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ(ハイブリッド)CVT2WD2,074,600円
T1,881,000円
G Premium直列3気筒DOHC 0.66リッター(ハイブリッド)1,985,500円
G1,804,000円
T Premium直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ(ハイブリッド)4WD2,238,500円
T2,092,200円
G Premium直列3気筒DOHC 0.66リッター(ハイブリッド)2,149,400円
G2,015,200円
新型デリカミニ T Premium。駆動方式は4WD。ボディカラーはナチュラルアイボリーメタリックで、ディーラーオプション装着車。ボディサイズは3395×1475×1830mm(全長×全幅×全高。2WDの全高は1800mm)

デリカミニだけに許されたリアデザイン

三菱自動車工業株式会社 商品戦略本部CPSチーム(Domestic Vehicle)商品企画の中村祥介氏

 三菱自動車にとって、そしてユーザーにとっても「デリカ」の名前は大きいものだ。その名前が付いた新型軽自動車ともなればコンセプトや作りについて大いに興味が出てくる。そこでデリカミニの撮影会で、三菱自動車工業 商品戦略本部CPSチーム(Domestic Vehicle)商品企画の中村祥介氏にデリカミニのこだわりについて聞いた。

 中村氏によると、デリカミニは2019年に登場した「eKクロス スペース」をベースとしたクルマだという。eKクロス スペースはアクティブミドル層をターゲットにしたクルマではあったが、実際はもっと幅広い層に選ばれたクルマとなっていた。

 それに対してデリカミニは「eKクロス スペースが持っている素性のよさを残したまま、アクティブに行動する人に向けてもう一度訴えるクルマ」として企画されたという。

eKクロス スペースのいいところを残したまま、よりアクティブ層に向けたクルマとしたのが新型デリカミニ

 そして車名に「デリカ」を入れたこと、これはぜひ聞きたかったことだ。この質問に対して中村氏は「デリカは三菱自動車の中でもブランドとして大きなものです。その名前を使うことによりアクティブな方々の目に留まるということが名前を使った理由の1つです。それにデリカといえば現在はデリカ D:5があり、おかげさまで発売以来好評をいただいていますが、一方で車両価格面で手を出しにくいという声も聞いています。また、アクティブに乗れるワゴンが欲しいけれどデリカ D:5では本格的すぎると感じられている方もいらっしゃいました。そういった方々に対して“身近に感じてもらえるデリカ”をご用意したいということで、デリカらしい作りを施した軽ハイトワゴンの名前を“デリカミニ”としました」と語ってくれた。

 続いてデザインについて。エクステリアはeKクロス スペースのテイストを生かしつつ、さらにSUVのイメージを強く出したデザインとすることになったという。

 そこで採用したのが三菱車のトレードマーク的な造形である「ダイナミックシールド」だが、他の車種に比べて立体感を出すことで力強さや安心感を醸し出した。また、半円形のLEDヘッドライトも顔つきを引き締めると同時に親しみやすさを感じさせるものとしている。

デリカミニの特徴であるフロントまわりのデザイン。ダイナミックシールドをより力強く感じるよう変更された
フェンダー部にはオーバーフェンダー風のデザインが施された。これもデリカミニらしいタフなイメージを狙ったもの
デリカミニのインテリアデザインは基本的にeKクロス スペースのものを引き継いでいるが、アウトドアでの使用を想定しているので、すべてのシートの生地に通気性に優れる撥水素材を採用。また、中央部に立体的なエンボス加工を施すことで蒸れにくくかつ座り心地を向上させているという

 デリカミニはフロントまわりのデザインの印象が強いが、三菱自動車の社内事情的には「リアのデザイン」にとても大きなポイントがあった。

 中村氏によると「社内のルールではエクステリアデザインを考えるとき、リアのセンター部に“スリーダイヤ”が入っていなければならないというのがあります。デリカ D:5ではDELICAのロゴがリアガーニッシュに入っていますが、ロゴの上にもスペースがあるのでそこにスリーダイヤを入れています。それに対してデリカミニはスペースの問題からロゴとスリーダイヤの双方を入れると、見た目がゴチャつく感じになったのです。そうなるとロゴの場所を変えるか小さくするかの選択になるのですが、デリカミニでは“デリカらしさ”を魅せることにこだわりました。そこで弊社の社長にスリーダイヤを外してでも“DELACA”ロゴを大きく入れることを掛け合い、会社として特例で了承してもらったのです。そうした経緯でリアに大きくDELICAと入るデザインが実現したのです」とのこと。なお、スリーダイヤのマークはテールゲート左下に入れられている。

 これはなかなかにアツい話である。会社のシンボルマークであるスリーダイヤをルールとは違う位置に入れることは例外なことであるし、それをフラグシップモデルや特別なスポーツモデルなどでなく、軽ハイトワゴンで実行したことも驚きだ。これが了承されたということは「デリカ」という名前が三菱自動車にとって大きなものだからに違いない。

リアガーニッシュに大きく入れられた「DELICA」のロゴは三菱自動車としては「特例」となるデザインだった。社長に掛け合ってまで実現したこのデザインにデリカシリーズであることのこだわりを感じる

パッケージオプションも充実

 さて、今回撮影したデリカミニにはパッケージオプション(ディーラーオプション)がされていたので、エクステリアの話の部分ではこの点についても触れておこう。

 まず、この記事の冒頭にあるライトニングブルーマイカ×ブラックメタリックの車両には複数のパッケージオプションがセットになった「ワイルドアドベンチャースタイル」(35万1250円)という組み合わせが装備される。

 内容はダイナミックシールドやグリル、ガーニッシュはシルバーで、各部に入るロゴ(エンブレム)色はブラックとなる「エクステリアパッケージB」および「エンブレムセットB」。そしてボディにはプロテクター風に見えるフロントアンダーデカール、サイドデカール、リアアンダーデカールの「デカールパッケージ」が付く。さらにタフさをアピールする大型のマッドフラップとアルミホイール用デカールがセットの「タフネスパッケージA」、さらにボディには過去のデリカで用いたロゴを使う「オマージュデカール(デリカスタイル)やルーフラックアタッチメント(ブラック)を含めて「ワイルドアドベンチャースタイル」とした。

 つぎにナチュラルアイボリーメタリックの車両だが、こちらは「アクティブトーンスタイル」という名称のパッケージオプションを採用する。

 内容はダイナミックシールドやグリル、テールゲートガーニッシュがブラックの「エクステリアパッケージA」とエンブレムが白となる「エンブレムセットA」。それにボディサイドには「サイドデカール」とステンシル風の書体で排気量やエンジンの特性(DOHC 12VALVE INTER COOLER TURBO)や、DELICAの文字を崩して型式風にアレンジしたデザインの「オマージュデカール(ステンシルタイプ)」。そしてブラックのマッドフラップを含めて「アクティブトーンスタイル」と呼んでいる。

 こうした個性的なパッケージオプションを用意した理由について、中村氏は「デリカ D:5のお客さまではクルマの購入後にカスタマイズを施される方がいらっしゃいます。そこでデリカミニのお客さまにもカスタマイズを安全、安心に楽しんでいただくためにオプションも充実させました」と説明した。

ワイルドアドベンチャースタイル。こちらはライトニングブルーマイカの車両が装着しているもの。大型のマッドフラップは印象的なレッドカラー
ナチュラルアイボリーメタリックの車両には「アクティブトーンスタイル」というパッケージオプションが付く。こちらのマッドフラップはブラックとなる

4WDモデルの足まわりにも「デリカ」らしいこだわりが

 デリカミニでは走りの面でもデリカらしさを求めた部分があった。

 まずはタイヤサイズの設定だ。ベースのeKクロス スペースでは165/55R15というサイズが装着されていたが、デリカミニの4WDモデルではタイヤ外径が大きくなる165/60R15が装着される(2WDは155/65R14、もしくは165/55R15)。これにより最低地上高が上がるので見た目的にデリカらしさが強まることになった。

4WDモデルは2WDモデルよりサイズアップした165/60R15サイズのタイヤを装着。これにより2WDモデルよりも最低地上高が上がった(2WDは155mm、4WDは160mm)。なお、デリカミニ全車にルーフレールが標準装備されるのでeKクロス スペースより全高は30mm高くなる

 また、4WDモデルではキャンプ場といったアウトドアレジャー施設に行く際に現れる未舗装路に対しても、走行安定性の向上と快適性を上げるためショックアブソーバーに専用チューニングを施している。

 ちなみにショックアブソーバーには伸びる側と縮む側の動きがあり、それぞれに減衰力という一種の抵抗が持たせてある。そしてこの減衰力によりスプリングが伸縮した際の車体の動きの速度をコントロールしている。

 そしてデリカミニの4WDモデルに採用するショックアブソーバーではどのような特性にしているかというと、縮む側をソフトな方向にして、伸びる側を硬めることで未舗装路での安定性を高めつつ、普段使いでの乗り味のよさを確保しているそうだ。

4WDモデルのリアサスペンション。ショックアブソーバーがデリカミニ専用チューニング仕様。スプリングはeKクロス スペースの4WDモデルから変更はない

 というのが中村氏から聞くことができたデリカミニの情報。eKクロス スペースを元としながらも、単なる名前替えではなく日常での使い勝手のよさを残しつつ、休日にキャンプや釣り場でも安心して使うことができるという、デリカを名乗るのにふさわしい作りであることが分かった。

 今後は試乗機会もあると思うので、デリカミニが気になる人は続報をお待ちいただきたい。

東京オートサロン2023でのお披露目以来、情報が少なかったにも関わらず、事前注文の多くがデリカミニらしさを多く取り入れている4WDモデルということも最後に教えていただいた